[P2-B-0709] 特別養護老人ホームの入所者におけるADL能力に関連する要因の検討
キーワード:特別養護老人ホーム, ADL, スクリーニング
【はじめに,目的】特別養護老人ホームは要介護者が入所する施設であり,入所者の能力に応じて自立した日常生活を送れるように支援している。自立した生活を送るためには,在宅でも生活できる能力を維持していく必要があると考えられる。理学療法士は日常生活動作(Activities of daily living:ADL)能力やその能力に関与する要因をスクリーニングし,ADL能力の低下を予防していかなければならないが,特別養護老人ホームにおけるスクリーニング指標は不明のままである。そこで本研究の目的は,特別養護老人ホームの入所者を対象に,筋力,体組成,身体機能,認知機能,栄養状態,周径の中で,自宅復帰に必要なADL能力に関連する要因を明らかにすることとした。
【方法】対象は,特別養護老人ホームに入所されている要介護高齢者118名(平均年齢:85.9±9.2歳,平均介護度:3.7±1.2)とした。ADLは機能的自立度評価表(Functional Independence Measure:FIM)を使用した。筋力はスメドレー式握力計を用いて握力を,体組成はBody Mass Index(BMI)を測定した。身体機能はShort Physical Performance Battery(SPPB),認知機能はMini Mental State Examination(MMSE),栄養状態は,Mini Nutritional Assessment(MNA),上腕と下腿の最大膨隆部から測定した上腕最大周径,下腿最大周径を使用した。解析は病院から在宅に転帰可能なFIMのカットオフ値を検討した先行研究をもとに,FIMの運動項目で39点以下をADL低下群,40点以上をADL維持群に群分けし,各指標を対応のないt検定を用いて検討した。また,ADLに関連する要因を明らかにするために,ADLの運動項目の点数を従属変数とし,群間で差を認めた握力,BMI,SPPB,MMSE,MNA,最大下腿周径を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を実施した。事前に多重共線性を考慮したがr>0.9もしくはr<-0.9となるような変数は存在しなかった。なお,統計学的検討はSPSSを用いて行い,有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】ADL低下群は81名,ADL維持群は37名に群分けされた。ADL低下群はADL維持群に比べて,BMI(ADL低下群;18.6±2.6kg/m2,ADL維持群;19.8±2.5kg/m2),握力(ADL低下群;3.1±5.1kg,ADL維持群;8.0±5.1kg),SPPB(ADL低下群;0.3±1.3点,ADL維持群;2.5±3.1点),MMSE(ADL低下群;7.2±7.7点,ADL維持群;14.7±7.7点),最大下腿周径(ADL低下群;26.0±3.5cm±ADL維持群;28.4±2.9cm),MNA(ADL低下群;16.7±3.3点,ADL維持群;20.3±3.8点)において有意に低い値を示した(p<0.05)。しかし,年齢(ADL低下群;85.6±9.6歳,ADL維持群;86.4±8.5歳),最大上腕周径(ADL低下群;20.4±2.5cm,ADL維持群;21.3±2.9cm)には有意差を認めなかった。また,重回帰分析の結果,ADLの運動項目には,SPPB(β=0.303),MMSE(β=0.359),MNA(β=0.216),最大下腿周径(β=0.158)が有意な影響を与えた(p<0.05)。
【考察】結果より,ADL能力に関連する要因は身体機能,認知機能,栄養状態であることが明らかとなった。この結果は,地域在住高齢者のADL低下のリスク要因と重複しており,施設入所でも同様の要因がADL低下に影響すると考えられる。また,身体機能,認知機能,栄養状態といった様々な要因がADL低下に関与するため,身体機能のみに着目するだけでなく,他の職種と連携したアプローチが重要であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】本研究の結果より,特別養護老人ホームでスクリーニングとして実施すべき評価指標が明らかとなった。特別養護老人ホームに勤務する理学療法士はSPPB,MMSE,MNA,最大下腿周径を用いて,入所者に対する介入効果の検証やADL低下の危険性の察知につなげていく必要があると考えられる。
【方法】対象は,特別養護老人ホームに入所されている要介護高齢者118名(平均年齢:85.9±9.2歳,平均介護度:3.7±1.2)とした。ADLは機能的自立度評価表(Functional Independence Measure:FIM)を使用した。筋力はスメドレー式握力計を用いて握力を,体組成はBody Mass Index(BMI)を測定した。身体機能はShort Physical Performance Battery(SPPB),認知機能はMini Mental State Examination(MMSE),栄養状態は,Mini Nutritional Assessment(MNA),上腕と下腿の最大膨隆部から測定した上腕最大周径,下腿最大周径を使用した。解析は病院から在宅に転帰可能なFIMのカットオフ値を検討した先行研究をもとに,FIMの運動項目で39点以下をADL低下群,40点以上をADL維持群に群分けし,各指標を対応のないt検定を用いて検討した。また,ADLに関連する要因を明らかにするために,ADLの運動項目の点数を従属変数とし,群間で差を認めた握力,BMI,SPPB,MMSE,MNA,最大下腿周径を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を実施した。事前に多重共線性を考慮したがr>0.9もしくはr<-0.9となるような変数は存在しなかった。なお,統計学的検討はSPSSを用いて行い,有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】ADL低下群は81名,ADL維持群は37名に群分けされた。ADL低下群はADL維持群に比べて,BMI(ADL低下群;18.6±2.6kg/m2,ADL維持群;19.8±2.5kg/m2),握力(ADL低下群;3.1±5.1kg,ADL維持群;8.0±5.1kg),SPPB(ADL低下群;0.3±1.3点,ADL維持群;2.5±3.1点),MMSE(ADL低下群;7.2±7.7点,ADL維持群;14.7±7.7点),最大下腿周径(ADL低下群;26.0±3.5cm±ADL維持群;28.4±2.9cm),MNA(ADL低下群;16.7±3.3点,ADL維持群;20.3±3.8点)において有意に低い値を示した(p<0.05)。しかし,年齢(ADL低下群;85.6±9.6歳,ADL維持群;86.4±8.5歳),最大上腕周径(ADL低下群;20.4±2.5cm,ADL維持群;21.3±2.9cm)には有意差を認めなかった。また,重回帰分析の結果,ADLの運動項目には,SPPB(β=0.303),MMSE(β=0.359),MNA(β=0.216),最大下腿周径(β=0.158)が有意な影響を与えた(p<0.05)。
【考察】結果より,ADL能力に関連する要因は身体機能,認知機能,栄養状態であることが明らかとなった。この結果は,地域在住高齢者のADL低下のリスク要因と重複しており,施設入所でも同様の要因がADL低下に影響すると考えられる。また,身体機能,認知機能,栄養状態といった様々な要因がADL低下に関与するため,身体機能のみに着目するだけでなく,他の職種と連携したアプローチが重要であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】本研究の結果より,特別養護老人ホームでスクリーニングとして実施すべき評価指標が明らかとなった。特別養護老人ホームに勤務する理学療法士はSPPB,MMSE,MNA,最大下腿周径を用いて,入所者に対する介入効果の検証やADL低下の危険性の察知につなげていく必要があると考えられる。