第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター2

代謝

Sat. Jun 6, 2015 1:50 PM - 2:50 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-B-0751] 創傷を有する重症下肢虚血・糖尿病患者における下肢筋力,歩行機能の推移に関する研究

久保和也1, 松本純一1, 村田健児2, 亀田光宏1, 榊聡子1, 寺部雄太3, 大平吉夫4, 安藤宏5 (1.IMS(イムス)グループ春日部中央総合病院リハビリテーション科, 2.埼玉県立大学保健医療福祉学研究科, 3.埼玉医科大学病院形成外科・美容外科, 4.日本フットケアサービス株式会社, 5.IMS(イムス)グループ春日部中央総合病院循環器科)

Keywords:重症下肢虚血, 下肢筋力, 創傷

【はじめに,目的】
重症下肢虚血(Critical Limb Ischemia:以下CLI),糖尿病(Diabetes Mellitus:以下DM)患者は足部潰瘍や壊疽が原因となり下肢切断に至ることがある。さらに,CLI患者は末梢動脈疾患の1~3%に認め,生命予後は不良といわれている。
一般にCLI・DMに伴う足部潰瘍・壊疽を有する患者では,創傷治療において創部の免荷は必須であるが,一方で治療における安静・免荷により廃用症候群が惹起され,歩行機能や日常生活活動における基本動作能力が低下する。しかし,当院では足部潰瘍・壊疽を有するCLI・DM患者に対し,創傷治療と平行して免荷装具を利用した積極的な理学療法の介入を実施し,歩行機能の再獲得を目指している。
下肢筋力の指標である体重支持指数(Weight Bearing Index:以下WBI)はADLとの相関があり,WBI60%以下がADL障害閾値と報告されている。我々の先行研究ではCLI患者において,入院時の時点でWBIが低値であると報告した。しかしながら,CLI・DM患者における理学療法介入効果,筋力や歩行機能を経時的に示した報告は未だに寡少である。
今回,創傷を有するCLI・DM患者に対して理学療法介入し,3ヶ月間の経時的調査が可能であった対象のWBIならびに歩行機能について良好な結果が得られたため報告する。
【方法】
調査期間は平成23年4月から平成26年5月とし,血管内治療・創傷治療目的にて当院循環器科に入院したCLI・DM患者を対象とした。対象のうち下腿切断・大腿切断,下肢筋力評価が困難,足部潰瘍・壊疽のない患者は除外し,59名(男性42名,女性17名,平均年齢66.0±13.1歳)を研究対象とした。
対象について年齢,性別,BMI,併存疾患(CLIの有無,DMの有無,維持透析の有無),Barthel Index歩行項目,WBI(入院時・1ヶ月後・3ヶ月後),下肢免荷期間(入院日-荷重開始許可日),切断部位,入院時血液検査(白血球,C反応性蛋白,血清アルブミン値,)をカルテより後方視的に抽出した。
WBIは等尺性膝関節伸展筋力(kg)÷体重(kg)×100(%)にて算出した。等尺性膝関節伸展筋力は健側下肢にてハンドヘルドダイナモメーター(アニマ社製)を使用し,測定した。下肢免荷期間は入院日から患側の荷重可能許可日(免荷装具使用も含む)となるまでの期間と定義した。
研究1.入院時筋力(WBI)の調査
入院時に調査可能であった59名の入院時WBIの平均値を調査し,ADL障害閾値と比較した。
研究2.理学療法介入後のWBI,歩行機能の推移
3ヶ月間継続的に調査可能であった17名において,入院時・1ヶ月後・3ヶ月後のWBI,Barthel Index歩行項目を調査した。統計処理はSPSS version19.0 for Windows(SPSS Japan Inc,Tokyo,Japan)を使用し,一元配置分散分析を実施後,多重比較検定を実施した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
研究1.
対象59名のうち併存疾患の有病率はCLI:78%,DM:83%,維持透析:35%であった。入院時のWBIの平均値は31.2±12.6%であり,ADL障害閾値より低値であった。
研究2.
入院時WBI31.6±9.9%,1ヶ月後WBI 33.7±11.7%,3ヶ月後WBI 40.6±13.0%であり,入院時WBIと3ヶ月後WBIに有意差を認めた(p<0.05)。入院時WBIと1ヶ月後WBIに有意差は認めなかった。対象の切断部位は,切断なし24%,足趾切断29%,中足骨切断41%,ショパール離断6%であった。下肢免荷期間の平均は42.0±32.0日であった。Barthel Index歩行項目が15点であった症例の割合は,入院時0%,1ヶ月後35%,3ヶ月後71%であった。
【考察】
入院時WBIはADL障害閾値より低く,創傷を有するCLI・DM患者の下肢筋力は入院前より低下している可能性が示唆され,創傷治療における下肢免荷により下肢筋力はさらに低下することが懸念される。今回,理学療法介入したCLI・DM患者は入院時より1ヶ月間は創傷治療における下肢免荷の状態であったが,理学療法の継続によりWBIの維持が可能であった。また,3ヶ月後はWBIの向上・ADLの改善を認めた。しかし,3ヶ月後のWBIにおいてもADL障害閾値より低値であり,創傷を有するCLI・DM患者の歩行再獲得,下肢機能の維持・向上には継続した理学療法介入は必要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
CLI・DM患者の救肢が増える中で,歩行再獲得,ADL,QOLの向上を図るため,理学療法士の需要は増加すると考える。本研究は,創傷を有するCLI・DMの機能予後を検討する為の基礎的データになると考える。