[P2-B-0758] より良い臨床実習指導体制を目指した実態調査報告
―指導で困ったことについて―
キーワード:臨床実習, 実態調査, サポート体制
【はじめに,目的】
臨床実習の成果に影響を与える要因は学生と臨床実習指導者(以下,指導者)の双方にある。我々は,過去の日本理学療法学術大会で,より良い臨床実習指導体制の構築の検討が必要と考え,指導者に対して臨床実習指導の現状把握を目的に質問紙を作成し実態調査結果を報告してきた。臨床実習指導を行う際,指導方法で分からないことや困ったことがあった場合に,適切な対応が出来ないと臨床実習の成果に悪影響を及ぼすことや,指導者の不安の要因になることが推測される。そこで今回は,臨床実習指導で困ったことの有無,困った理由及び相談相手についての把握と分析を目的とする。
【方法】
調査期間は平成25年8月から平成26年3月までの8か月間。42施設の理学療法士を対象として任意に回答要請し,質問紙調査を行った。回答方法は無記名で,選択回答もしくは自由記載とした。質問紙の回収後は,回答の信頼性保持の為の社会的望ましさ尺度で,不適切と判断されたものは除外した。
【結果】
790名の回答が得られ,有効回答数は689名であった。そのうち指導経験があると回答した484名(男性309名,女性175名,臨床経験年数8.5±6.1年)を分析対象とした。指導で困ったことの有無に対して,ある437名(90.5%),ない16名(3.3%),無回答31名(6.4%)であった。指導で困ったことがあると回答した者に対して,その理由は(選択肢,複数回答可),学生の資質の問題280名(64.1%),指導に自信がない248名(56.8%),学生の問題がつかみにくい221名(50.6%),指導方法が分からない171名(39.1%),学校側の背景が分かりにくい135名(30.9%),指導時間が少ない120名(27.5%),その他12名(2.7%)であった。これを具体的にみると,学生の資質の問題の場合の相談相手は(選択肢,複数回答可),職場の上司154名(55.0%),養成校の教員123名(43.9%),職場の先輩107名(38.2%),スーパーバイザー(以下,SV)(ケースバイザー:以下,CV)76名(27.1%),職場の同期57名(20.4%),相談なし7名(2.5%),指導者母校の教員5名(1.8%),その他3名(1.1%)であった。指導に自信がない場合の相談相手は,職場の上司156名(62.9%),職場の先輩154名(62.1%),SV(CV)72名(29.0%),職場の同期60名(24.2%),養成校の教員9名(3.6%),指導者母校の教員5名(2.0%),相談なし5名(2.0%),その他2名(0.8%)であった。学生の問題がつかみにくい場合の相談相手は,職場の上司117名(52.9%),職場の先輩116名(52.5%),SV(CV)84名(38.0%),職場の同期57名(25.8%),養成校の教員51名(23.1%),相談なし6名(2.7%),指導者母校の教員3名(1.4%),その他3名(1.4%)であった。
【考察】
指導者の9割が指導で困ったことがあるとの回答から,困った場合にいつでも相談・助言が受けられるサポート体制が必要と考える。また,結果より学生側と指導者側の要因があることから,指導者に対する要因ごとの対応策の教育や相談先の確保が必要であると思われた。また,学生の資質の問題,指導に自信がない,学生の問題がつかみにくいといった項目の相談相手は,職場の上司,職場の先輩の回答が多いことから,職場内での指導者に対する教育,サポート体制の構築が第一に必要であることが考えられた。次に,学生側に要因のある場合は,養成校と情報共有を行いながら,連携をとることも大切であることが示唆された。統合的に見ると,指導者が臨床実習指導を安心して受け入れ,対応できるために,職場内でいつでも相談が出来る環境の整備及び養成校と密に連携を取り,相談が出来る体制づくりが必要であり,少人数の職場の場合は,近隣の施設や相談が出来る他施設との連携も大切であることが分かった。
【理学療法学研究としての意義】
より良い理学療法士を育てるためには,臨床実習現場の実態を把握して,適切な臨床実習指導を行うための体制づくりが必要である。今回の調査より,指導者に対する教育方法やサポート体制の構築について検討できたことは大変意義深い。
臨床実習の成果に影響を与える要因は学生と臨床実習指導者(以下,指導者)の双方にある。我々は,過去の日本理学療法学術大会で,より良い臨床実習指導体制の構築の検討が必要と考え,指導者に対して臨床実習指導の現状把握を目的に質問紙を作成し実態調査結果を報告してきた。臨床実習指導を行う際,指導方法で分からないことや困ったことがあった場合に,適切な対応が出来ないと臨床実習の成果に悪影響を及ぼすことや,指導者の不安の要因になることが推測される。そこで今回は,臨床実習指導で困ったことの有無,困った理由及び相談相手についての把握と分析を目的とする。
【方法】
調査期間は平成25年8月から平成26年3月までの8か月間。42施設の理学療法士を対象として任意に回答要請し,質問紙調査を行った。回答方法は無記名で,選択回答もしくは自由記載とした。質問紙の回収後は,回答の信頼性保持の為の社会的望ましさ尺度で,不適切と判断されたものは除外した。
【結果】
790名の回答が得られ,有効回答数は689名であった。そのうち指導経験があると回答した484名(男性309名,女性175名,臨床経験年数8.5±6.1年)を分析対象とした。指導で困ったことの有無に対して,ある437名(90.5%),ない16名(3.3%),無回答31名(6.4%)であった。指導で困ったことがあると回答した者に対して,その理由は(選択肢,複数回答可),学生の資質の問題280名(64.1%),指導に自信がない248名(56.8%),学生の問題がつかみにくい221名(50.6%),指導方法が分からない171名(39.1%),学校側の背景が分かりにくい135名(30.9%),指導時間が少ない120名(27.5%),その他12名(2.7%)であった。これを具体的にみると,学生の資質の問題の場合の相談相手は(選択肢,複数回答可),職場の上司154名(55.0%),養成校の教員123名(43.9%),職場の先輩107名(38.2%),スーパーバイザー(以下,SV)(ケースバイザー:以下,CV)76名(27.1%),職場の同期57名(20.4%),相談なし7名(2.5%),指導者母校の教員5名(1.8%),その他3名(1.1%)であった。指導に自信がない場合の相談相手は,職場の上司156名(62.9%),職場の先輩154名(62.1%),SV(CV)72名(29.0%),職場の同期60名(24.2%),養成校の教員9名(3.6%),指導者母校の教員5名(2.0%),相談なし5名(2.0%),その他2名(0.8%)であった。学生の問題がつかみにくい場合の相談相手は,職場の上司117名(52.9%),職場の先輩116名(52.5%),SV(CV)84名(38.0%),職場の同期57名(25.8%),養成校の教員51名(23.1%),相談なし6名(2.7%),指導者母校の教員3名(1.4%),その他3名(1.4%)であった。
【考察】
指導者の9割が指導で困ったことがあるとの回答から,困った場合にいつでも相談・助言が受けられるサポート体制が必要と考える。また,結果より学生側と指導者側の要因があることから,指導者に対する要因ごとの対応策の教育や相談先の確保が必要であると思われた。また,学生の資質の問題,指導に自信がない,学生の問題がつかみにくいといった項目の相談相手は,職場の上司,職場の先輩の回答が多いことから,職場内での指導者に対する教育,サポート体制の構築が第一に必要であることが考えられた。次に,学生側に要因のある場合は,養成校と情報共有を行いながら,連携をとることも大切であることが示唆された。統合的に見ると,指導者が臨床実習指導を安心して受け入れ,対応できるために,職場内でいつでも相談が出来る環境の整備及び養成校と密に連携を取り,相談が出来る体制づくりが必要であり,少人数の職場の場合は,近隣の施設や相談が出来る他施設との連携も大切であることが分かった。
【理学療法学研究としての意義】
より良い理学療法士を育てるためには,臨床実習現場の実態を把握して,適切な臨床実習指導を行うための体制づくりが必要である。今回の調査より,指導者に対する教育方法やサポート体制の構築について検討できたことは大変意義深い。