第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター12

生活環境支援/その他

2015年6月6日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-C-0430] 感染性偽関節の一症例

病院における理学療法士の役割の再考

大西史基1, 向井英司1, 藤井雄1, 中田将太1, 樋口奈央1, 伊藤郁江2, 落合直之3 (1.キッコーマン総合病院リハビリテーションセンター, 2.キッコーマン総合病院看護部, 3.キッコーマン総合病院整形外科)

キーワード:チーム医療, 不安, 感染性偽関節

【目的】
感染性偽関節と診断を受けた症例を通し,病院における理学療法士(PT)の役割を再考する機会を得たので,報告する。
【症例提示】
60歳代男性。2000年に交通事故で右脛骨開放骨折を受傷,治療が行われたが疼痛改善がなく,人工膝関節置換術となった。だが術後に感染し,膝関節固定が行われた。その後順調であったが2012年に感染再発し瘻孔からの排膿があり感染性偽関節と診断,感染部掻爬と創外固定術が行われ退院した。初回外来の7月19日に排膿があり,再入院となった。
【経過と考察】
入院後再度骨掻爬が追加され,処置を繰り返すが肉芽増生は不良であったため,9月に再掻爬が行われた。この間,歩行時膝痛(NRS6)を訴えたため車椅子移動であったが,初期接地~立脚中期での体幹前方シフトを修正することで疼痛が軽減(NRS2)し,歩行を再開できた。肉芽増生を待ち,10月23日に両腸骨,仙骨,右大腿骨大転子部より採骨し,掻爬した部位へ自家骨移植が行われた。
しかし10月25日,せん妄による看護師への暴言暴力などがみられた。翌日せん妄は消失したが「今後自分がどうなっていくのか,とても不安」とリハビリ時に打ち明けた。他の医療者と距離を置き,ベッド上で過ごすようになった。そこでDr・Ns・MSW・PTで本症例の現状や興味関心のある活動を共有する場を設定することで理解を深め,各医療者と本症例が適切な意思疎通を行える環境作りをした。その結果,会話が増え,散歩をするようになった。11月15日,右大腿部より全層植皮術を行い,tie-overした。術後,せん妄は認められなかった。上皮化がある程度良好となったため,12月20日退院となった。
本症例はせん妄後,他者との関わりを避け一時的にADLが低下したが,関係の再構築に伴い改善した。各医療者と患者間で適切な意思疎通を図ることで,患者の行動を誘発できたと考える。PTは機能的アプローチのみならず,関係構築を促す一助も担えることを改めて感じた。