[P2-C-0499] 慢性腰痛者の立位姿勢変化における筋活動パターン
Keywords:慢性腰痛, 姿勢制御, 表面筋電図
【はじめに,目的】
骨盤傾斜角度は脊柱アライメントに影響を与え,骨盤前傾位では腰椎前彎角は増加し,骨盤後傾位では逆に減少する。腰椎の過剰な前彎や後彎は腰痛の一因と考えられ,特に慢性腰痛患者では,腰部伸筋活動に異常をきたしていることや(Shirado O 1995),腸腰筋(以下ILIO)が腰痛発生に関与していることなどが報告されている(Diane Lee 2013)。また,体幹深層に位置するローカル筋の活動が腰痛予防に重要であることが最近の研究によって明らかにされてきている(Hodges 2009)。しかし,未だ詳細については不明な点も多く,特に,立位姿勢変化における健常者と慢性腰痛者の腰部伸展筋活動の違いついては,我々の知る限りでは全く報告されていない。
本研究では,立位姿勢変化における健常者と慢性腰痛者の腰部伸筋活動の違いを明らかにすることを目的として,腰部伸展に関与する体幹,股関節筋群が,腰部,骨盤アライメントの制御に如何に関与しているかを明らかにするために実験を行った。
【方法】
対象は慢性腰痛を要する成人11名(平均年齢23.5±4.0歳 以下腰痛群)と,比較群では下肢・体幹に整形外科的疾患の既往のない健常成人9名(平均年齢20.4±1.2歳 以下健常群)とした。腰痛群は①過去3ヶ月以上伴う疼痛,②神経根および馬尾に由来する下肢痛を伴わない,③解剖学的腰仙椎部に局在する疼痛,④現在は疼痛を伴わないものとした。測定筋は右のILIO,多裂筋(以下MF),腰部腸肋筋(IL),胸部腸肋筋(IT)の4筋とした。表面電極は皮膚処理を十分に行い,電極中心距離は20mm,各筋線維方向に並行に貼付した。筋電図測定には(Kissei Comtec社製MQ16)を用いた。筋電図データは,筋電解析ソフト(Kissei Comtec社製KineAnalyzer)を用いて,フィルタ処理後(バンドパス10~500Hz),二乗平方平滑化処理(RMS)を行い,MMTによるMVCを基に正規化した。
被験者は立位姿勢を維持したまま安静立位姿勢(以下安静立位),腰椎中間位姿勢(以下中間位姿勢),腰椎後彎強調姿勢(以下後彎姿勢),腰椎前彎強調姿勢(以下前彎姿勢)での筋活動を記録した。4つの姿勢の写真を被験者に提示し,口頭指示と手動誘導ともに姿勢維持を各10秒間行い筋活動を測定した。ランダムな順序で各姿勢を2回測定した。また,T1・T7・T12・L3・S2棘突起上,ASIS,PSIS,大転子,膝関節外側上顆の計11か所にマーカーを貼付し,デジタルカメラにて各姿勢を撮影し,それぞれの角度変化から胸椎部・腰椎部・骨盤部のアライメントを算出し姿勢定義をした。統計学的分析はSPSS12.0Jを用いて腰痛群と健常群間での各筋活動に対し,対応のないt検定を実施した。有意水準は5%とした。
【結果】
安静立位ではすべての筋で健常群,腰痛群の間に有意な差は認められなかった。中間位姿勢では,腰痛群が健常群に比べMF,ITの筋活動増加が認められた(P<0.05)。後彎姿勢では,腰痛群が健常群に比べITの筋活動増加が認められた(P<0.05)。前彎姿勢では,腰痛群が健常群に比べMFの筋活動増加が認められた(P<0.05)。
【考察】
慢性腰痛者では,グローバル筋の筋活動増大,ローカル筋の筋活動減少が言われていたが,直立姿勢や前彎姿勢での筋活動から見られたように,ローカル筋であるMFの過活動が腰椎前彎コントロールに関与している可能性が推察された。また,腰痛群では立位姿勢制御の中で腰椎伸筋群だけでなく,胸椎伸展に関与するITの過活動により脊柱の垂直安定性を得ていることが考えられる。
これらのことを踏まえ,慢性腰痛者に対する臨床的介入の際,筋活動特性を考慮することが効果的な治療につながる可能性が高いと推察される。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により,慢性腰痛者の姿勢制御パターンを明らかにすることで,慢性腰痛者のための新たな理学療法の考案に繋がる。
骨盤傾斜角度は脊柱アライメントに影響を与え,骨盤前傾位では腰椎前彎角は増加し,骨盤後傾位では逆に減少する。腰椎の過剰な前彎や後彎は腰痛の一因と考えられ,特に慢性腰痛患者では,腰部伸筋活動に異常をきたしていることや(Shirado O 1995),腸腰筋(以下ILIO)が腰痛発生に関与していることなどが報告されている(Diane Lee 2013)。また,体幹深層に位置するローカル筋の活動が腰痛予防に重要であることが最近の研究によって明らかにされてきている(Hodges 2009)。しかし,未だ詳細については不明な点も多く,特に,立位姿勢変化における健常者と慢性腰痛者の腰部伸展筋活動の違いついては,我々の知る限りでは全く報告されていない。
本研究では,立位姿勢変化における健常者と慢性腰痛者の腰部伸筋活動の違いを明らかにすることを目的として,腰部伸展に関与する体幹,股関節筋群が,腰部,骨盤アライメントの制御に如何に関与しているかを明らかにするために実験を行った。
【方法】
対象は慢性腰痛を要する成人11名(平均年齢23.5±4.0歳 以下腰痛群)と,比較群では下肢・体幹に整形外科的疾患の既往のない健常成人9名(平均年齢20.4±1.2歳 以下健常群)とした。腰痛群は①過去3ヶ月以上伴う疼痛,②神経根および馬尾に由来する下肢痛を伴わない,③解剖学的腰仙椎部に局在する疼痛,④現在は疼痛を伴わないものとした。測定筋は右のILIO,多裂筋(以下MF),腰部腸肋筋(IL),胸部腸肋筋(IT)の4筋とした。表面電極は皮膚処理を十分に行い,電極中心距離は20mm,各筋線維方向に並行に貼付した。筋電図測定には(Kissei Comtec社製MQ16)を用いた。筋電図データは,筋電解析ソフト(Kissei Comtec社製KineAnalyzer)を用いて,フィルタ処理後(バンドパス10~500Hz),二乗平方平滑化処理(RMS)を行い,MMTによるMVCを基に正規化した。
被験者は立位姿勢を維持したまま安静立位姿勢(以下安静立位),腰椎中間位姿勢(以下中間位姿勢),腰椎後彎強調姿勢(以下後彎姿勢),腰椎前彎強調姿勢(以下前彎姿勢)での筋活動を記録した。4つの姿勢の写真を被験者に提示し,口頭指示と手動誘導ともに姿勢維持を各10秒間行い筋活動を測定した。ランダムな順序で各姿勢を2回測定した。また,T1・T7・T12・L3・S2棘突起上,ASIS,PSIS,大転子,膝関節外側上顆の計11か所にマーカーを貼付し,デジタルカメラにて各姿勢を撮影し,それぞれの角度変化から胸椎部・腰椎部・骨盤部のアライメントを算出し姿勢定義をした。統計学的分析はSPSS12.0Jを用いて腰痛群と健常群間での各筋活動に対し,対応のないt検定を実施した。有意水準は5%とした。
【結果】
安静立位ではすべての筋で健常群,腰痛群の間に有意な差は認められなかった。中間位姿勢では,腰痛群が健常群に比べMF,ITの筋活動増加が認められた(P<0.05)。後彎姿勢では,腰痛群が健常群に比べITの筋活動増加が認められた(P<0.05)。前彎姿勢では,腰痛群が健常群に比べMFの筋活動増加が認められた(P<0.05)。
【考察】
慢性腰痛者では,グローバル筋の筋活動増大,ローカル筋の筋活動減少が言われていたが,直立姿勢や前彎姿勢での筋活動から見られたように,ローカル筋であるMFの過活動が腰椎前彎コントロールに関与している可能性が推察された。また,腰痛群では立位姿勢制御の中で腰椎伸筋群だけでなく,胸椎伸展に関与するITの過活動により脊柱の垂直安定性を得ていることが考えられる。
これらのことを踏まえ,慢性腰痛者に対する臨床的介入の際,筋活動特性を考慮することが効果的な治療につながる可能性が高いと推察される。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により,慢性腰痛者の姿勢制御パターンを明らかにすることで,慢性腰痛者のための新たな理学療法の考案に繋がる。