[P2-C-0534] 電流知覚計測装置(ニューロメーター)の信頼性に関する研究
Keywords:疼痛評価, 神経学的評価, 痛覚閾値
【はじめに,目的】
疼痛の評価としてvisual analogue scale(VAS),numerical rating scale(NRS)などがあるが,それらは情動,個人の心理的側面などが影響し,主観的な側面が大きく反映される。疼痛にはAδ線維,C線維が関与し,その線維の活動電位を測定することで,客観的な疼痛閾値を計測できるNeurometer(ニューロトロン社製,Baltimore)があるが,その信頼性についての報告は渉猟する範囲においてなされていない。そこで本研究の目的はNeurometerの信頼性について級内相関係数(Intraclass correlation coefficient:以下,ICC)を用いて検討し,日間および日内での電流知覚閾値(Current Perception Threshold:以下,CPT)の値の変動について明らかにすることとした。
【方法】
被験者は,感覚障害を呈する疾患の既往がない大学生男性12名,女性12名,計24名(22.0歳±1.1)とした。Neurometer CPT/C(ニューロトロン社製,Baltimore)を用いて,CPTを計測した。CPTは皮膚に貼付した電極に微弱な電流を流し,刺激として認識できる閾値を,通電した電流量から換算した絶対値として表示したものである。Neurometer検査では刺激周波数を変えることでAβ線維,Aδ線維,C線維をそれぞれ選択的に興奮させ計測を行うことが出来る。2000Hzの刺激はAβ線維を,250Hzの刺激はAδ線維を,5Hzの刺激がC線維を主として刺激する。計測部位は,右中指,前腕橈側(橈骨茎状突起と上腕骨外側上顆を結んだ線の上の上腕骨外側上顆から2横指遠位),膝蓋靭帯部,下腿内側(脛骨内果上端から5横指近位)の4か所とし朝,昼,夕方の同時刻に1日3回を3日間連続で計測をした。1回の計測で2000Hz,250Hz,5Hzの順で電流知覚閾値を計測した。計測はそれぞれ2回行い平均値を代表値とした。計測した3日間のCPT値の日間および日内の信頼性についてはICCを算出した。日間変動の信頼性については,3日間の朝,昼,夕方に計測したCPT値,日内変動の信頼性については3日目の朝,昼,夕方に計測したCPT値より各周波数について部位別にICC(1.3)を算出した。
【結果】
CPTの信頼性は部位によって大きく異なる結果となった。前腕の2000Hzの日間ICCは朝0.79,昼0.77,夕方0.84,日内のICCは0.87であった。250Hzの日間ICCは朝0.00,昼0.00,夕方0.14,日内のICCは0.34であった。5Hzの日間ICCは朝0.41,昼0.18,夕方0.74,日内のICCは0.80であった。中指の2000Hzの日間ICCは朝0.67,昼0.26,夕方0.28,日内のICCは0.34であった。250Hzの日間ICCは朝0.63,昼0.81,夕方0.72で日内のICCは0.15であった。5Hzの日間ICCは朝0.52,昼0.38,夕方0.38日内のICCは0.42であった。膝蓋靭帯部の2000Hzの日間ICCは朝0.90,昼0.90,夕方0.85であり日内のICCは0.98であった。250Hzの日間ICCは朝0.96昼0.93夕方0.27,日内のICCは0.89であった。5Hzの日間ICCは朝0.89昼0.91夕方0.91であり日内のICCは0.93であった。下腿内側の2000Hzの日間ICCは朝0.75,昼0.00,夕方0.00であり日内のICCは0.87であった。250Hzの日間ICCは朝0.00昼0.00夕方0.26,日内のICCは0.73であった。5Hzの日間ICCは朝0.00,昼0.24,夕方0.00であり日内のICCは0.78であった。
【考察】
ICCの結果から前腕でCPTの計測を行う場合は,時間帯は夕方で計測を行うことが推奨される。250Hzと5Hzでは日間での変動が大きく,日を変えて介入効果の判定で使用する場合,変化が介入による変化か変動なのか判断が難しくなる。しかし2000Hzと5Hzの日内での信頼性は高い為,CPTの日内での変化を比較する為に用いることが推奨される。また中指で計測されたCPTは日内変動が大きく決まった計測時間で計測を行う必要があることが示された。さらに日間変動も2000Hz朝,250Hz以外では大きく,2000Hzと5Hzの計測の際は信頼性が低いことを考慮する必要がある。膝蓋靭帯部のICCからは日間,日内ともに被検者内の変動は少なくCPTの信頼性は高いことが明らかとなった。250Hzに限っては夕方での計測が日間での変動が大きい為,この時間帯での計測は避けることが推奨される。また下腿内側では日間の信頼性は低く,日を変えて介入効果の判定で使用する場合,変化が介入による変化なのか変動か判断が難しくなる。また,日内での信頼性は高くCPTの日内での変化を比較する為に用いることが推奨される。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では計測時間,計測部位及び計測周波数ごとにICCの値は異なり,本研究からNeurometerによる評価を行う際にはこれらの信頼性を検討しながら用いるべきであることが示唆された。
疼痛の評価としてvisual analogue scale(VAS),numerical rating scale(NRS)などがあるが,それらは情動,個人の心理的側面などが影響し,主観的な側面が大きく反映される。疼痛にはAδ線維,C線維が関与し,その線維の活動電位を測定することで,客観的な疼痛閾値を計測できるNeurometer(ニューロトロン社製,Baltimore)があるが,その信頼性についての報告は渉猟する範囲においてなされていない。そこで本研究の目的はNeurometerの信頼性について級内相関係数(Intraclass correlation coefficient:以下,ICC)を用いて検討し,日間および日内での電流知覚閾値(Current Perception Threshold:以下,CPT)の値の変動について明らかにすることとした。
【方法】
被験者は,感覚障害を呈する疾患の既往がない大学生男性12名,女性12名,計24名(22.0歳±1.1)とした。Neurometer CPT/C(ニューロトロン社製,Baltimore)を用いて,CPTを計測した。CPTは皮膚に貼付した電極に微弱な電流を流し,刺激として認識できる閾値を,通電した電流量から換算した絶対値として表示したものである。Neurometer検査では刺激周波数を変えることでAβ線維,Aδ線維,C線維をそれぞれ選択的に興奮させ計測を行うことが出来る。2000Hzの刺激はAβ線維を,250Hzの刺激はAδ線維を,5Hzの刺激がC線維を主として刺激する。計測部位は,右中指,前腕橈側(橈骨茎状突起と上腕骨外側上顆を結んだ線の上の上腕骨外側上顆から2横指遠位),膝蓋靭帯部,下腿内側(脛骨内果上端から5横指近位)の4か所とし朝,昼,夕方の同時刻に1日3回を3日間連続で計測をした。1回の計測で2000Hz,250Hz,5Hzの順で電流知覚閾値を計測した。計測はそれぞれ2回行い平均値を代表値とした。計測した3日間のCPT値の日間および日内の信頼性についてはICCを算出した。日間変動の信頼性については,3日間の朝,昼,夕方に計測したCPT値,日内変動の信頼性については3日目の朝,昼,夕方に計測したCPT値より各周波数について部位別にICC(1.3)を算出した。
【結果】
CPTの信頼性は部位によって大きく異なる結果となった。前腕の2000Hzの日間ICCは朝0.79,昼0.77,夕方0.84,日内のICCは0.87であった。250Hzの日間ICCは朝0.00,昼0.00,夕方0.14,日内のICCは0.34であった。5Hzの日間ICCは朝0.41,昼0.18,夕方0.74,日内のICCは0.80であった。中指の2000Hzの日間ICCは朝0.67,昼0.26,夕方0.28,日内のICCは0.34であった。250Hzの日間ICCは朝0.63,昼0.81,夕方0.72で日内のICCは0.15であった。5Hzの日間ICCは朝0.52,昼0.38,夕方0.38日内のICCは0.42であった。膝蓋靭帯部の2000Hzの日間ICCは朝0.90,昼0.90,夕方0.85であり日内のICCは0.98であった。250Hzの日間ICCは朝0.96昼0.93夕方0.27,日内のICCは0.89であった。5Hzの日間ICCは朝0.89昼0.91夕方0.91であり日内のICCは0.93であった。下腿内側の2000Hzの日間ICCは朝0.75,昼0.00,夕方0.00であり日内のICCは0.87であった。250Hzの日間ICCは朝0.00昼0.00夕方0.26,日内のICCは0.73であった。5Hzの日間ICCは朝0.00,昼0.24,夕方0.00であり日内のICCは0.78であった。
【考察】
ICCの結果から前腕でCPTの計測を行う場合は,時間帯は夕方で計測を行うことが推奨される。250Hzと5Hzでは日間での変動が大きく,日を変えて介入効果の判定で使用する場合,変化が介入による変化か変動なのか判断が難しくなる。しかし2000Hzと5Hzの日内での信頼性は高い為,CPTの日内での変化を比較する為に用いることが推奨される。また中指で計測されたCPTは日内変動が大きく決まった計測時間で計測を行う必要があることが示された。さらに日間変動も2000Hz朝,250Hz以外では大きく,2000Hzと5Hzの計測の際は信頼性が低いことを考慮する必要がある。膝蓋靭帯部のICCからは日間,日内ともに被検者内の変動は少なくCPTの信頼性は高いことが明らかとなった。250Hzに限っては夕方での計測が日間での変動が大きい為,この時間帯での計測は避けることが推奨される。また下腿内側では日間の信頼性は低く,日を変えて介入効果の判定で使用する場合,変化が介入による変化なのか変動か判断が難しくなる。また,日内での信頼性は高くCPTの日内での変化を比較する為に用いることが推奨される。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では計測時間,計測部位及び計測周波数ごとにICCの値は異なり,本研究からNeurometerによる評価を行う際にはこれらの信頼性を検討しながら用いるべきであることが示唆された。