[P2-C-0577] 変形性膝関節症患者における歩行修正パターンの有用性について
~外部膝関節内転モーメントに着目して~
Keywords:変形性膝関節症, 外部膝関節内転モーメント, 歩行修正
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(以下OA)患者の歩行の特徴として病期による膝内側コンパートメントへのストレスの増大や患側立脚期の際の外部膝関節内転モーメント(以下KAM)の増加が挙げられており,これらの要因により限局して膝内側への負担が増大していくことが考えられる。
この膝内側へのストレスを軽減させる方法として,これまで歩行修正の報告がされており,特に臨床上簡便に行えるものとして,toe out歩行・下肢内転内旋歩行・内側荷重歩行が報告されている。我々は第49回日本理学療法士学術大会において,これら3つの歩行修正パターンに自然歩行を加え,4つの歩行修正パターンのKAM第一ピーク値と第二ピーク値を比較し,より有効な歩行修正パターンを検討した。しかし,膝関節負荷はKAMピーク値のみならず歩行立脚期中のKAMの総量にも影響することが推察されるが,各歩行周期におけるKAM積分値での検討はなされておらず,患側下肢立脚期での膝関節負荷量については不明な点が多い。
よって本研究の目的は,自然歩行,toe out歩行,下肢内転内旋歩行,内側荷重歩行の4つの歩行修正パターンにおける膝関節負荷量の違いについて検討し,膝OA患者におけるより有効な歩行修正方法について検討することである。
【方法】
対象は膝OA患者8名(男性1名,女性7名,平均年齢68.2±6.5歳)とした。膝OAの病期分類にはKellgren-Lawrence分類を使用し,対象者はいずれもII~IVの進行期から末期と診断された。除外因子は膝OA以外の整形疾患ならびに補助具を使用し歩行する者とした。
データ収集には赤外線カメラ8台からなる三次元動作解析装置(CORTEX2.5)と,床反力計3枚(AMTI)を用いて記録し,32個の赤外線反射マーカーをヘレンヘイズマーカセットに準じて貼付した。なお,KAMは2相性をとるため立脚初期のピークを第一ピーク,立脚後期のピークを第二ピークと定義し,この相での歩行時患側下肢のKAMを算出した。KAMの積分値は木藤らの方法を引用し,初期両脚支持期,単脚支持期および後期両脚支持期の3つの相に加え,立脚期全体の積分値について算出した。
各歩行修正を標準化するために,口頭指示を一定にした。Toe out歩行は「(角度計で15°toe outしたあとに)つま先をこのまま維持して歩いて下さい」,下肢内転内旋歩行は「両腿,両膝を近づけるように歩いて下さい」,内側荷重歩行は「足の外側に体重をかけないように歩いて下さい」とそれぞれ指示した。
統計学的分析は,各歩行修正パターンのKAM第一ピーク値,第二ピーク値,初期両脚支持期,単脚支持期,後期両脚支持期および立脚期全体の積分値の比較に一元配置分散分析を用いた。多重比較にはBonferroniを使用し,有意水準は5%とした
【結果】
下肢内転内旋歩行と内側荷重歩行は自然歩行と比較して有意にKAM第一ピーク値が低値を示した(p<0.05)。後期両脚支持期のKAM積分値は下肢内転内旋歩行がtoe out歩行と比較して有意に高値を示した(p<0.05)。第二ピーク値,初期両脚支持期,単脚支持期および立脚期全体のKAM積分値は歩行修正パターンによる有意な差を認めなった。
【考察】
本研究結果から,自然歩行と比較して下肢内旋歩行と内側荷重歩行がKAM第一ピーク値を有意に減弱させることが示され,膝OA患者への歩行修正の有用性が示唆された。また,後期両脚支持期では下肢内転内旋歩行がtoe out歩行と比較して有意に積分値が大きかったことを示した。Guoらはtoe out歩行が自然歩行と比較して立脚後期の積分値を減弱させることを報告しており,toe out歩行が立脚後期の膝関節への負荷を軽減させるのに有用である可能性が示唆された。
KAM第二ピーク値,単脚支持期,後期両脚支持期および立脚期全体の積分値では有意差を認めなかった。これは,被験者数が少ないことや体幹の傾斜角度などの影響を考慮していないなどの理由が考えられるため,今後より詳細な検討が必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
膝OA患者に対するリハビリテーションとして,病期の進行を防ぎ疼痛軽減を図るためにKAMを減少させることは重要であり,理学療法を行なう上で歩行修正は簡便かつ有効な治療手段の一つとなり得る。臨床において膝OA患者への歩行を指導するにあたり,本研究において観察された歩行修正パターンの効果の違いは臨床上有用な知見である。今後,より詳細な検討を進めていくためにも,被験者数を増やしていくことや各歩行修正における筋活動パターンや体幹の傾斜角度などの他因子の影響も考慮して,より有効な歩行修正を検討していきたい。
変形性膝関節症(以下OA)患者の歩行の特徴として病期による膝内側コンパートメントへのストレスの増大や患側立脚期の際の外部膝関節内転モーメント(以下KAM)の増加が挙げられており,これらの要因により限局して膝内側への負担が増大していくことが考えられる。
この膝内側へのストレスを軽減させる方法として,これまで歩行修正の報告がされており,特に臨床上簡便に行えるものとして,toe out歩行・下肢内転内旋歩行・内側荷重歩行が報告されている。我々は第49回日本理学療法士学術大会において,これら3つの歩行修正パターンに自然歩行を加え,4つの歩行修正パターンのKAM第一ピーク値と第二ピーク値を比較し,より有効な歩行修正パターンを検討した。しかし,膝関節負荷はKAMピーク値のみならず歩行立脚期中のKAMの総量にも影響することが推察されるが,各歩行周期におけるKAM積分値での検討はなされておらず,患側下肢立脚期での膝関節負荷量については不明な点が多い。
よって本研究の目的は,自然歩行,toe out歩行,下肢内転内旋歩行,内側荷重歩行の4つの歩行修正パターンにおける膝関節負荷量の違いについて検討し,膝OA患者におけるより有効な歩行修正方法について検討することである。
【方法】
対象は膝OA患者8名(男性1名,女性7名,平均年齢68.2±6.5歳)とした。膝OAの病期分類にはKellgren-Lawrence分類を使用し,対象者はいずれもII~IVの進行期から末期と診断された。除外因子は膝OA以外の整形疾患ならびに補助具を使用し歩行する者とした。
データ収集には赤外線カメラ8台からなる三次元動作解析装置(CORTEX2.5)と,床反力計3枚(AMTI)を用いて記録し,32個の赤外線反射マーカーをヘレンヘイズマーカセットに準じて貼付した。なお,KAMは2相性をとるため立脚初期のピークを第一ピーク,立脚後期のピークを第二ピークと定義し,この相での歩行時患側下肢のKAMを算出した。KAMの積分値は木藤らの方法を引用し,初期両脚支持期,単脚支持期および後期両脚支持期の3つの相に加え,立脚期全体の積分値について算出した。
各歩行修正を標準化するために,口頭指示を一定にした。Toe out歩行は「(角度計で15°toe outしたあとに)つま先をこのまま維持して歩いて下さい」,下肢内転内旋歩行は「両腿,両膝を近づけるように歩いて下さい」,内側荷重歩行は「足の外側に体重をかけないように歩いて下さい」とそれぞれ指示した。
統計学的分析は,各歩行修正パターンのKAM第一ピーク値,第二ピーク値,初期両脚支持期,単脚支持期,後期両脚支持期および立脚期全体の積分値の比較に一元配置分散分析を用いた。多重比較にはBonferroniを使用し,有意水準は5%とした
【結果】
下肢内転内旋歩行と内側荷重歩行は自然歩行と比較して有意にKAM第一ピーク値が低値を示した(p<0.05)。後期両脚支持期のKAM積分値は下肢内転内旋歩行がtoe out歩行と比較して有意に高値を示した(p<0.05)。第二ピーク値,初期両脚支持期,単脚支持期および立脚期全体のKAM積分値は歩行修正パターンによる有意な差を認めなった。
【考察】
本研究結果から,自然歩行と比較して下肢内旋歩行と内側荷重歩行がKAM第一ピーク値を有意に減弱させることが示され,膝OA患者への歩行修正の有用性が示唆された。また,後期両脚支持期では下肢内転内旋歩行がtoe out歩行と比較して有意に積分値が大きかったことを示した。Guoらはtoe out歩行が自然歩行と比較して立脚後期の積分値を減弱させることを報告しており,toe out歩行が立脚後期の膝関節への負荷を軽減させるのに有用である可能性が示唆された。
KAM第二ピーク値,単脚支持期,後期両脚支持期および立脚期全体の積分値では有意差を認めなかった。これは,被験者数が少ないことや体幹の傾斜角度などの影響を考慮していないなどの理由が考えられるため,今後より詳細な検討が必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
膝OA患者に対するリハビリテーションとして,病期の進行を防ぎ疼痛軽減を図るためにKAMを減少させることは重要であり,理学療法を行なう上で歩行修正は簡便かつ有効な治療手段の一つとなり得る。臨床において膝OA患者への歩行を指導するにあたり,本研究において観察された歩行修正パターンの効果の違いは臨床上有用な知見である。今後,より詳細な検討を進めていくためにも,被験者数を増やしていくことや各歩行修正における筋活動パターンや体幹の傾斜角度などの他因子の影響も考慮して,より有効な歩行修正を検討していきたい。