[P2-C-0650] 維持期脊髄損傷者のHAL®福祉用を用いた理学療法介入の適応レベルについて
~5例による検討~
Keywords:ロボット, 脊髄損傷, 適応レベル
【はじめに,目的】
近年,ロボットスーツHAL®福祉用(以下HAL)の導入施設は増加し,様々な研究発表が行われている。HALの適応レベルについては,中島(2013)が歩行不安定症を引き起こす疾患全般であり,特に進行性疾患では定期的,間欠的,治療的に装着し適切に筋収縮が助けられることで疾患の進行が抑制される可能性を示唆している。また,宇野ら(2013)は入院患者の内,よりADLの低い群で運動量増加によるADL向上を示唆している。しかし,適応レベルについての報告はまだまだ少ない。今回,我々は必要性が認められた維持期脊髄不全損傷者5名に対して,HALを用いた1ヶ月の入院介入を行い,更にその内3名については1年後に2回目のHALを用いた1ヵ月の入院介入を行った。その結果,HALによる有効となる介入の適応レベルについて若干の知見を得たので報告する。
【方法】
対象:歩行可能な頚髄不全損傷者(以下頚損不全)で改良FrankelC2以上,受傷後1年以上でHAL装着適応基準を満たした新規入院者5名および再入院者3名。
方法:外来初期評価にて電位取得,HAL装着の可否を確認後,入院し4週間,週5日,通常の理学療法を20-30分/日,HAL装着下で30-40分/日を実施した。更に必要性を認めた3名については約1年後再入院し2回目のHAL装着下での介入を実施した。評価は10m歩行・満足度などについて,初期・最終および退院後1・6ヶ月に実施した。また,Poonamら(2010)の先行研究を参考に歩行速度0.35m/sをカットオフ値に入院者をHigh speed群とLow speed群に分類した。
【結果】
新規入院者5名の歩行については,平均歩行速度(初期/最終/退院6ヵ月)が0.4/0.53/0.56m/sでケイデンスは52.4/63.2/66.1歩/分と改善した。5名中2名はHigh speed群に,3名はLow speed群に分類された。Low speed群は退院から約1年後に必要性を認め,再入院することとなった。Low speed群は,再入院時,歩行速度が低下し,再入院から退院後にかけ再び向上した(①0.24/0.29/0.40m/s,②0.26/0.34/0.36m/s,③0.28/0.24/0.28m/s)。再入院した1名は上肢手術,1名は褥瘡と身体変化が著しく歩行量が減少していた。
【考察】
新規入院者はHALによる介入で歩行速度向上を認め,長期的にも維持改善すると考えられた。High speed群(非再入院者)は,屋外歩行自立レベルで歩行量もある程度確保されており更なる介入を必要(希望)としなかったと考えられた。Low speed群(再入院者)は,身体状態が変化しやすくその変化が歩行能低下に結びつくため,定期的,間欠的介入・評価が必要だと考えられた。また,このレベルはHALによる介入の適応になると考えられた。肥塚(2009)は頚損不全者は,受傷から長期間が経過しても,歩行能力の回復が期待できるが,従来通りの動作様式を継続すると回復した機能が廃用性低下を来すこともあると述べている。Low speed群は,HALによるアシスト下での介入により残存機能を生かした動作を練習でき,歩行能向上に結びついたと考えた。本研究の限界としては,対象人数が少なく傾向を示すに過ぎないことが上げられる。今後より多くの対象者で実施し統計学的分析が必要となる。
【理学療法学研究としての意義】
現在,HALを始めとしたロボット技術を用いた介入が実施されている。今後も急速にこのような流れは進むことが予想され,各ロボット技術が有効となる適応症や適応レベルを明らかにすることは,効果的に介入を進める上で重要であり,本研究はその基礎となる。
近年,ロボットスーツHAL®福祉用(以下HAL)の導入施設は増加し,様々な研究発表が行われている。HALの適応レベルについては,中島(2013)が歩行不安定症を引き起こす疾患全般であり,特に進行性疾患では定期的,間欠的,治療的に装着し適切に筋収縮が助けられることで疾患の進行が抑制される可能性を示唆している。また,宇野ら(2013)は入院患者の内,よりADLの低い群で運動量増加によるADL向上を示唆している。しかし,適応レベルについての報告はまだまだ少ない。今回,我々は必要性が認められた維持期脊髄不全損傷者5名に対して,HALを用いた1ヶ月の入院介入を行い,更にその内3名については1年後に2回目のHALを用いた1ヵ月の入院介入を行った。その結果,HALによる有効となる介入の適応レベルについて若干の知見を得たので報告する。
【方法】
対象:歩行可能な頚髄不全損傷者(以下頚損不全)で改良FrankelC2以上,受傷後1年以上でHAL装着適応基準を満たした新規入院者5名および再入院者3名。
方法:外来初期評価にて電位取得,HAL装着の可否を確認後,入院し4週間,週5日,通常の理学療法を20-30分/日,HAL装着下で30-40分/日を実施した。更に必要性を認めた3名については約1年後再入院し2回目のHAL装着下での介入を実施した。評価は10m歩行・満足度などについて,初期・最終および退院後1・6ヶ月に実施した。また,Poonamら(2010)の先行研究を参考に歩行速度0.35m/sをカットオフ値に入院者をHigh speed群とLow speed群に分類した。
【結果】
新規入院者5名の歩行については,平均歩行速度(初期/最終/退院6ヵ月)が0.4/0.53/0.56m/sでケイデンスは52.4/63.2/66.1歩/分と改善した。5名中2名はHigh speed群に,3名はLow speed群に分類された。Low speed群は退院から約1年後に必要性を認め,再入院することとなった。Low speed群は,再入院時,歩行速度が低下し,再入院から退院後にかけ再び向上した(①0.24/0.29/0.40m/s,②0.26/0.34/0.36m/s,③0.28/0.24/0.28m/s)。再入院した1名は上肢手術,1名は褥瘡と身体変化が著しく歩行量が減少していた。
【考察】
新規入院者はHALによる介入で歩行速度向上を認め,長期的にも維持改善すると考えられた。High speed群(非再入院者)は,屋外歩行自立レベルで歩行量もある程度確保されており更なる介入を必要(希望)としなかったと考えられた。Low speed群(再入院者)は,身体状態が変化しやすくその変化が歩行能低下に結びつくため,定期的,間欠的介入・評価が必要だと考えられた。また,このレベルはHALによる介入の適応になると考えられた。肥塚(2009)は頚損不全者は,受傷から長期間が経過しても,歩行能力の回復が期待できるが,従来通りの動作様式を継続すると回復した機能が廃用性低下を来すこともあると述べている。Low speed群は,HALによるアシスト下での介入により残存機能を生かした動作を練習でき,歩行能向上に結びついたと考えた。本研究の限界としては,対象人数が少なく傾向を示すに過ぎないことが上げられる。今後より多くの対象者で実施し統計学的分析が必要となる。
【理学療法学研究としての意義】
現在,HALを始めとしたロボット技術を用いた介入が実施されている。今後も急速にこのような流れは進むことが予想され,各ロボット技術が有効となる適応症や適応レベルを明らかにすることは,効果的に介入を進める上で重要であり,本研究はその基礎となる。