[P2-C-0673] ADL全介助者の介護負担感に関する多施設間調査
―排泄介助介護負担感の因子分析―
Keywords:寝たきり, 介護負担, 排泄
【はじめに,目的】リハビリテーションの効果判定の一つに日常生活動作(以下,ADL)の評価法がある。ADLの評価にはFunctional Independence Measure(FIM)やBarthel Indexが多用されており,「自立」や「部分介助」は介助量などで細分化されている。しかし,全介助を細分化した評価法は少ない。我々はADL全介助者の変化を詳細に評価できる評価法が必要と考え,介護負担感を知ることが評価法の作成過程において有効と考えた。そこでADL全介助者に対する評価法を作成するにあたり,排泄の介護負担感が増す要因を明らかにし,共通因子を抽出することを本研究の目的とした。
【方法】対象はADL全介助者の介護経験を有し,病院,介護老人保健施設(以下,老健),介護老人福祉施設(以下,特養)で勤務する介護職員とした。調査方法は我々が作成した質問紙を用い,自記式の5件法で回答を得た。なお質問紙の妥当性については先行研究で確認している。統計解析は各質問項目を「負担ない」を1点,「あまりない」を2点,「どちらでもない」を3点,「ややあり」を4点,「とても負担あり」を5点とした記述統計を行い,要因分析は因子分析を用いた。因子抽出法には最尤法を用い,回転法にはKaiserの正規化を伴うプロマックス法を行った。因子数の決定においては固有値1以上,1つの因子に質問が3項目以上関連すること,該当した質問の因子負荷量が0.4以上あることを条件とした。さらに各質問項目の信頼性についてはCronbach’s α係数を算出した。
【結果】回答を得た施設数は病院1件,老健3件,特養4件であった。回答者数は259名(病院23名,老健108名,特養128名)であり有効回答率は98.7%であった。平均年齢は33.6±12.5歳(男性83名,女性176名)であった。各質問の介護負担感の平均値は,「体重が重い,身体が大きい」4.1±0.9,「皮膚が傷つきやすい」3.9±0.9,「人手が少ない」3.9±1.1の順で高値を示した。またCronbach’s α係数は0.96であった。因子分析の結果4因子が妥当と判断した。第1因子は「不潔行為がある」,「暴言・暴力がある」「尿路カテーテル・人工肛門(ストマ)がある」などの13項目で「介護者の精神的な負担と環境設定」とした。第2因子は「身体を動かすと吐きやすい」,「触れることで感染する恐れがある」などの7項目で「リスク管理」とした。第3因子は「便の1回量が多い」,「便の回数が多い」などの6項目で「排泄状況」とした。第4因子は「皮膚のたるみでふきにくい場所がある」,「身体が固く,寝返りがしづらい」などの8項目で「身体状態」とした。なお累積寄与率は46.9%であった。
【考察】Nelson MMら(2008)は重症者ほど介護負担が多いことを示したが,どのような行為が負担かは明らかになっていない。そこでADL全介助者の排泄に対する介護負担感を一般化するために多施設間調査を行った。今回の調査から負担となる行為の詳細な順位を得た。その中で1位となった身体が大きいといった肉体的負担感だけでなく,2位の「皮膚が傷つきやすい」といったリスク管理や3位の「人手が少ない」といった環境因子など様々な要因が排泄介助の介護負担となり得ることが明らかとなった。これらの結果から,ADL全介助者の排泄介助における介護負担は,多岐にわたる視点で検討する必要があることが示唆された。また共通因子を4因子に分類することができた。排泄の介護負担感を細分化した研究はほぼ皆無であり,今後排泄の介護負担感を評価する上で有用であると考える。今後は調査結果をもとに,ADL全介助者の網羅的かつ簡便な評価法の作成へ繋げることが課題である。
【理学療法学研究としての意義】リハビリテーションの効果判定としてADL全介助を細分化した評価法は少ない。今回の結果は,排泄の介護負担感を評価する上で有用でありADL全介助者の網羅的かつ簡便な評価法の作成に繋がるものと考える。
【方法】対象はADL全介助者の介護経験を有し,病院,介護老人保健施設(以下,老健),介護老人福祉施設(以下,特養)で勤務する介護職員とした。調査方法は我々が作成した質問紙を用い,自記式の5件法で回答を得た。なお質問紙の妥当性については先行研究で確認している。統計解析は各質問項目を「負担ない」を1点,「あまりない」を2点,「どちらでもない」を3点,「ややあり」を4点,「とても負担あり」を5点とした記述統計を行い,要因分析は因子分析を用いた。因子抽出法には最尤法を用い,回転法にはKaiserの正規化を伴うプロマックス法を行った。因子数の決定においては固有値1以上,1つの因子に質問が3項目以上関連すること,該当した質問の因子負荷量が0.4以上あることを条件とした。さらに各質問項目の信頼性についてはCronbach’s α係数を算出した。
【結果】回答を得た施設数は病院1件,老健3件,特養4件であった。回答者数は259名(病院23名,老健108名,特養128名)であり有効回答率は98.7%であった。平均年齢は33.6±12.5歳(男性83名,女性176名)であった。各質問の介護負担感の平均値は,「体重が重い,身体が大きい」4.1±0.9,「皮膚が傷つきやすい」3.9±0.9,「人手が少ない」3.9±1.1の順で高値を示した。またCronbach’s α係数は0.96であった。因子分析の結果4因子が妥当と判断した。第1因子は「不潔行為がある」,「暴言・暴力がある」「尿路カテーテル・人工肛門(ストマ)がある」などの13項目で「介護者の精神的な負担と環境設定」とした。第2因子は「身体を動かすと吐きやすい」,「触れることで感染する恐れがある」などの7項目で「リスク管理」とした。第3因子は「便の1回量が多い」,「便の回数が多い」などの6項目で「排泄状況」とした。第4因子は「皮膚のたるみでふきにくい場所がある」,「身体が固く,寝返りがしづらい」などの8項目で「身体状態」とした。なお累積寄与率は46.9%であった。
【考察】Nelson MMら(2008)は重症者ほど介護負担が多いことを示したが,どのような行為が負担かは明らかになっていない。そこでADL全介助者の排泄に対する介護負担感を一般化するために多施設間調査を行った。今回の調査から負担となる行為の詳細な順位を得た。その中で1位となった身体が大きいといった肉体的負担感だけでなく,2位の「皮膚が傷つきやすい」といったリスク管理や3位の「人手が少ない」といった環境因子など様々な要因が排泄介助の介護負担となり得ることが明らかとなった。これらの結果から,ADL全介助者の排泄介助における介護負担は,多岐にわたる視点で検討する必要があることが示唆された。また共通因子を4因子に分類することができた。排泄の介護負担感を細分化した研究はほぼ皆無であり,今後排泄の介護負担感を評価する上で有用であると考える。今後は調査結果をもとに,ADL全介助者の網羅的かつ簡便な評価法の作成へ繋げることが課題である。
【理学療法学研究としての意義】リハビリテーションの効果判定としてADL全介助を細分化した評価法は少ない。今回の結果は,排泄の介護負担感を評価する上で有用でありADL全介助者の網羅的かつ簡便な評価法の作成に繋がるものと考える。