[P2-C-0682] 通所リハビリテーションにおける自宅訪問を実施した利用者に対する追跡調査
~自宅訪問の質を向上させるための取り組み~
キーワード:通所リハビリテーション, 自宅訪問, アンケート
【はじめに,目的】
平成24年度の介護保険改定で新たな通所リハマネジメント加算の算定条件として,通所開始日から起算して一ヶ月以内に利用者の居宅を訪問することが追加された。自宅訪問に際し全国デイ・ケア協会は,リハビリテーション実施計画書の留意点を意識した情報収集が重要と述べている。当院では通所リハビリテーション(以下,デイケア)利用者に対してリハビリスタッフだけでなく看護師または介護士が同行し,多職種で訪問を実施してきた。今回,訪問後の調査を行い,理学療法士としてどのような視点を持って訪問を実施し,リハビリテーション計画の策定を行っていくとよいか検討を行った。
【方法】
H24年4月からH26年10月までに通所リハマネジメント加算による訪問を実施した当院のデイケア利用者62名中,利用を終了した16名を除く計46名および,訪問を実施したことがあるスタッフ14名(理学療法士7名,作業療法士4名,言語聴覚士1名,看護師1名,介護士1名)に対してアンケートを行った。利用者に対してのアンケートは,「自宅訪問が役立ったか否かとその理由」,「通所リハビリ訪問指導等加算を利用したいか」とした。スタッフに対しては,「自宅訪問で注目した点」,「自宅訪問が有効か否かとその理由」「利用者への関わり方の変化の有無とその理由」とした。アンケートは原則無記名とし,回答は4段階の選択及び自由記載とした。
【結果】
回収したアンケートは利用者40名(回収率87%),スタッフ14名(回収率100%)であった。自宅訪問が役立ったかについては,訪問があったことを忘れた4名を除くほとんどの利用者が,おおいに役立った,少し役立ったと答え,3割以上が福祉用具の選定,住環境の改善,介助方法の助言が役立ったと答えた。また,①リハビリで住環境に直結する内容を取り入れてもらった,②ケアマネジャーが同行したケースでは家庭での状況を分かってもらえ安心できたという意見もあった。しかし,訪問時の介助方法の助言があまり役立たなかったと答えた利用者も存在していた。今後,通所リハビリ訪問指導等加算用いた訪問を,利用したいと9名の方が考えていた。一方,スタッフは訪問に際し,福祉用具の選定,住環境の評価・改善,介助方法の助言,家族からの情報収集,ADL・IADL把握,利用者の自宅での様子・過ごし方など多岐にわたる項目に注目し訪問を実施していた。またほとんどのスタッフが訪問はおおいに有効,やや有効であったと考えており,その後の利用者への関わり方に変化があったと答えた。具体的な理由としてリハビリ職種は,①実際の生活を見ることで環境因子を詳細に評価でき在宅生活を意識したプログラムの策定・見直しのきっかけになった,②家族に直接介助方法の動作指導ができた,③回復期を経験したスタッフからは退院後の想定しきれなかった部分を実際に確認できたと答えがあった。看護師・介護士からは,①自宅での過ごし方がわかりデイケア内での対応に役立った,②送迎スタッフの介助方法の確認ができたとあった。調査結果より,利用者・スタッフともほとんどの方が訪問の有効性を感じており,事前にスタッフが意識した項目が訪問後に役立っていたことが分かった。また看護師・介護士は,送迎方法を評価し,デイケア内の過ごし方について訪問後に見直していることが分かった。
【考察】
当院デイケアでは,リハビリスタッフ間で週2回,介護・リハビリスタッフ間で月1回,デイケア利用者に関してのカンファレンスを行っており,転倒や状態の急変があった場合などに訪問の必要性の議論を行ってきた。その結果,本調査対象期間内に通所リハビリ訪問指導等加算を利用した訪問を6件実施してきたが,今回の調査では対象にならなかった利用者においても,訪問を利用したいと考えていたことが分かった。今後は個別リハの策定にとどまらず,デイケア内での過ごし方や送迎時の安全管理の方法も意識して訪問を行い,得られた情報を多職種と共有することが必要であると考える。また訪問後のADLや介護負担に変化があったかを定量的に評価し,効果判定を行っていく必要があると考える。そのためにも通所リハビリ訪問指導等加算を利用した継続的な訪問体制の構築と,リハビリ職種が訪問の制度や必要性を利用者やケアマネジャーに周知することが必要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
自宅訪問後に利用者がどのような点を役立ったと感じているか,また職種間での訪問時における視点の違いを確認することができた。今回の結果はリハビリテーション計画の策定の参考になるものと考える。さらに,訪問の効果を定量的に評価していこうと考えており,その基盤となる意義ある研究である。
平成24年度の介護保険改定で新たな通所リハマネジメント加算の算定条件として,通所開始日から起算して一ヶ月以内に利用者の居宅を訪問することが追加された。自宅訪問に際し全国デイ・ケア協会は,リハビリテーション実施計画書の留意点を意識した情報収集が重要と述べている。当院では通所リハビリテーション(以下,デイケア)利用者に対してリハビリスタッフだけでなく看護師または介護士が同行し,多職種で訪問を実施してきた。今回,訪問後の調査を行い,理学療法士としてどのような視点を持って訪問を実施し,リハビリテーション計画の策定を行っていくとよいか検討を行った。
【方法】
H24年4月からH26年10月までに通所リハマネジメント加算による訪問を実施した当院のデイケア利用者62名中,利用を終了した16名を除く計46名および,訪問を実施したことがあるスタッフ14名(理学療法士7名,作業療法士4名,言語聴覚士1名,看護師1名,介護士1名)に対してアンケートを行った。利用者に対してのアンケートは,「自宅訪問が役立ったか否かとその理由」,「通所リハビリ訪問指導等加算を利用したいか」とした。スタッフに対しては,「自宅訪問で注目した点」,「自宅訪問が有効か否かとその理由」「利用者への関わり方の変化の有無とその理由」とした。アンケートは原則無記名とし,回答は4段階の選択及び自由記載とした。
【結果】
回収したアンケートは利用者40名(回収率87%),スタッフ14名(回収率100%)であった。自宅訪問が役立ったかについては,訪問があったことを忘れた4名を除くほとんどの利用者が,おおいに役立った,少し役立ったと答え,3割以上が福祉用具の選定,住環境の改善,介助方法の助言が役立ったと答えた。また,①リハビリで住環境に直結する内容を取り入れてもらった,②ケアマネジャーが同行したケースでは家庭での状況を分かってもらえ安心できたという意見もあった。しかし,訪問時の介助方法の助言があまり役立たなかったと答えた利用者も存在していた。今後,通所リハビリ訪問指導等加算用いた訪問を,利用したいと9名の方が考えていた。一方,スタッフは訪問に際し,福祉用具の選定,住環境の評価・改善,介助方法の助言,家族からの情報収集,ADL・IADL把握,利用者の自宅での様子・過ごし方など多岐にわたる項目に注目し訪問を実施していた。またほとんどのスタッフが訪問はおおいに有効,やや有効であったと考えており,その後の利用者への関わり方に変化があったと答えた。具体的な理由としてリハビリ職種は,①実際の生活を見ることで環境因子を詳細に評価でき在宅生活を意識したプログラムの策定・見直しのきっかけになった,②家族に直接介助方法の動作指導ができた,③回復期を経験したスタッフからは退院後の想定しきれなかった部分を実際に確認できたと答えがあった。看護師・介護士からは,①自宅での過ごし方がわかりデイケア内での対応に役立った,②送迎スタッフの介助方法の確認ができたとあった。調査結果より,利用者・スタッフともほとんどの方が訪問の有効性を感じており,事前にスタッフが意識した項目が訪問後に役立っていたことが分かった。また看護師・介護士は,送迎方法を評価し,デイケア内の過ごし方について訪問後に見直していることが分かった。
【考察】
当院デイケアでは,リハビリスタッフ間で週2回,介護・リハビリスタッフ間で月1回,デイケア利用者に関してのカンファレンスを行っており,転倒や状態の急変があった場合などに訪問の必要性の議論を行ってきた。その結果,本調査対象期間内に通所リハビリ訪問指導等加算を利用した訪問を6件実施してきたが,今回の調査では対象にならなかった利用者においても,訪問を利用したいと考えていたことが分かった。今後は個別リハの策定にとどまらず,デイケア内での過ごし方や送迎時の安全管理の方法も意識して訪問を行い,得られた情報を多職種と共有することが必要であると考える。また訪問後のADLや介護負担に変化があったかを定量的に評価し,効果判定を行っていく必要があると考える。そのためにも通所リハビリ訪問指導等加算を利用した継続的な訪問体制の構築と,リハビリ職種が訪問の制度や必要性を利用者やケアマネジャーに周知することが必要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
自宅訪問後に利用者がどのような点を役立ったと感じているか,また職種間での訪問時における視点の違いを確認することができた。今回の結果はリハビリテーション計画の策定の参考になるものと考える。さらに,訪問の効果を定量的に評価していこうと考えており,その基盤となる意義ある研究である。