第50回日本理学療法学術大会

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地域理学療法7

2015年6月6日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-C-0685] 特別支援学校卒業後の進路先と自立活動との関連についての調査研究

愛知県春日井市近隣の肢体不自由特別支援学校について

宮本靖義, 檀恋緒菜, 成瀬玲子, 松山美乃里, 加藤菜々絵, 大蔵華子, 加藤唯乃, 坂本汐里, 友清桃子, 村澤美帆 (中部大学生命健康科学部)

キーワード:社会参加, 就労・就学, 特別支援学校

【はじめに,目的】特別支援学校では「障がいによる学習上の又は生活上の困難を克服し,自立を図るために必要な知識技能を授ける」ことを目的として自立活動の時間が設けられている。自立活動は,学校生活及び地域生活を営むうえで障がい児にとって欠かせない時間となっている。在学中だけでなく卒業後も何等かの形で継続していくことはさらに重要なことであるが,自立活動と卒業後の地域生活との関連については明らかにされていない。今回,我々は春日井近隣の特別支援学校において,卒業後の進路先と自立活動との関連を調査し,内在している課題について検討する。
【方法】対象施設は愛知県瀬戸市の瀬戸特別支援学校と愛知県小牧市の小牧特別支援学校の2校とした。2校の自立活動を担当している教員のうち,2012年~2014年までの3年間で調査が可能であった6名(男性2名,女性4名)を対象とした。調査時間は30分~60分とし調査項目は特別支援学校の概要,自立活動の内容,卒業後の進路状況についての3項目とした。聞き取り調査はボイスレコーダーに録音し分析にはKJ法を用いた。
【結果】瀬戸特別養護学校:開校してから6年目で今までに5名の卒業生を輩出している。卒業後,大学進学者が1名,他4名は作業所に入職している。卒業後の自立活動継続について学校側は関与しておらず,基本的には保護者に一任しており,詳細については把握できていない。歴史の浅い学校であるため近隣の福祉施設等の連携が十分とは言えず,卒業生の現況を確認することはあるが,自立活動内容が卒業後に継続しているか,またはどう生かされているかなどの確認は出来ていない。学校と施設の連携よりも卒業生保護者と施設の連携が優先されているのが現状である。在学中は利用しているサービス等を把握していたが,卒業後に関しての情報はほとんどない状態である。卒業後のアセスメント方法については大きな課題として捕えている。有効な対策はなく保護者に委ねている。
小牧特別支援学校:開校してから30年以上が経過しており,多くの卒業生を輩出している。今回は過去3年間分について聞き取ることができた。過去3年間,30名が卒業しており,半数は就職を希望していた。就職希望者の1割は企業等に就職することができるが,残りの4割については作業所等に入職している。企業に就職した場合,自立活動内容は継続されておらず,身体ケア等は保護者に委ねている。作業所等については自立活動の内容をサポートブックに記入して施設に伝えている。作業所によっては自立活動内容が継続されているところもあるが,サポートブックを全く活用できていない施設があるのも現状である。
就職していない児童については,施設へ入所する者はなく在宅サービスを利用しているが,その場合も自立活動内容が反映されているかは不明である。
【考察】近年,バリアフリー法や障がい者基本法などの法改正により重度障がい者等の社会参加が推進されてきている。このことは教育機関にも影響しており,重度障がい児も特別支援学校等に通学できるようになった。このことを背景に,自立活動を担当する教員に高い医療技術・知識が求められるようになった。今回,調査した2校の特別支援学校教員は,重度障がい児に対応できる自立活動を実施するため,個々に研修や講習等に参加していた。
重度障がい児にとって在学中の自立活動は学生生活を営む上で非常に重要な時間であると考えるが,卒業後の地域生活と結び付けていくことがさらに重要であると考える。重度障がい児が企業等に就職できるのは卒業生全体の1割未満である。卒業生の殆どは地域生活を継続していくために在宅サービスを利用しているが,卒業後に自立活動で得た成果が地域生活に如何に反映されているかは把握できていない。
卒業後に自立活動を継続することは重要であると前述したが,教育機関,医療機関,地域福祉サービスの連携により自立活動の継続が可能となると考える。現在,愛知県の特別支援学校にはPTの常勤配置が義務付けられていないが地域との連携を担うスタッフとしてPTが果たす役割が大きいと考える。
【理学療法学研究としての意義】肢体不自由を中心とする特別支援学校における卒業後の進路先と自立活動との関連を調査し,そこに内在する問題の一端を明らかにすることができた。特別支援学校に対し,PTが実施する連携の在り方を検討する上で有効な情報と考える。