[P2-C-0689] 後期高齢者における変形性膝関節症に関連する要因について
キーワード:後期高齢者, 変形性膝関節症, 包括的評価
【はじめに,目的】要介護度別にみた介護が必要となった主な原因の構成割合は,要介護者では脳血管疾患や認知症が一位であるが,要支援者では関節疾患が一位であり(国民生活基礎調査2013),地域在住の健常な高齢者の介護予防のために,着目すべき問題であるといえる。関節疾患のうち,変形性膝関節症(以下,膝OA)は加齢に伴い有病率が高くなり,我が国の調査においては80歳以上になると男性で約50%,女性では80%となり(吉村2012),女性においては特に有病率が高いことが特徴である。また,高齢者の“Frailty(虚弱)”に影響を与える要因としても示唆されている(Cacciatore et al. 2014)。膝OAは疼痛が主訴となることが多く,そのコントロールをすることが必要であるが(Rubin. 2005),画像所見で確認される重症度と疼痛は相関がなく(Walsh et al. 2009),大腿部の筋力の低下と疼痛に関連があることが示されている(Ruhdorfer et al. 2014)。これらのことから,膝OAをもつ者が虚弱に陥らないためには,下肢筋力を向上させることが必要であることが分かる。ただしFriedが示す虚弱のサイクルで示されるように筋力低下の誘因として活動量低下や低栄養状態がある場合,トレーニングのみでは虚弱を断ち切ることは困難である。そこで本研究において膝OAと筋力,活動量,栄養状態の関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】2008年に東京都板橋区にて高齢者健診を受診した75歳以上84歳以下の地域在住高齢者1288名(平均年齢78.4±2.7歳)を対象とした。膝OAの有無については看護師が聴取した。下肢筋力は膝伸展筋力を採用し,マスキュレーターを用いて利き足の等尺性(股90°,膝90°屈曲位)最大筋力を測定した。活動状況については1ヵ月の外出歴について聴取し,町内・町外の外出の有無を確認した。栄養状態は,Body Mass Index(以下,BMI),下腿周囲長の計測を行った。膝OAの有無とそれぞれの変数の関係についてはχ2検定,student-t検定を行った。その後,膝OA者を対象にそれぞれの変数において,年齢階級(75~79歳,80~84歳)ごとの比較も行った。危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】膝OA者は298名(23.1%)であった。膝OAの有無における比較については,BMIと下腿周囲長において有意差が認められBMIは膝OAあり23.9±3.2,なし22.4±3.3,下腿周囲長は膝OAあり33.9±2.8cm,なし32.9±2.9cmであり,膝OAのある者の方が体格指数高く,下腿周囲長が長かった。その他の変数については有意差は認められなかった。一方で膝OAのある者に限定して,年齢階級ごとの比較をした結果,膝伸展筋力,BMI,下腿周囲長に有意差が認められた。膝伸展筋力においては75~79歳で59.5±14.3Nm,80~84歳で53.1±15.0Nm,BMIにおいては75~79歳で24.2±3.2,80~84歳で23.5±3.1,下腿周囲長においては75~79歳で34.3±2.8cm,であり,80~84歳で33.4±2.8cmであり,80~84歳の方が低値であった。なお町内外の外出状況については有意差が認められなかった。
【考察】膝OAの主訴となる疼痛をコントロールするためには筋力が重要であるが,筋力低下の誘因として考えられる活動量,栄養状態についても確認をおこなった。膝OAの有無における比較においては,筋力に有意差は認められなかったものの,BMIと下腿周囲長に有意差が認められた。ただし,膝OAのある者の値の方が高かった。肥満とは判定されない値ではあったものの,膝OAの発症には,体格との関連性があることが先行研究と同様に確認された。膝OAのある者において年齢階級での比較をすると,高齢である方が筋力,BMI,下腿周囲長が低値であった。低栄養,虚弱とは判定されない値ではあったものの,筋力とともに栄養状態の確認を行う必要性があることが明らかになった。なお町内外の外出ついては有意差は認められなかったが,本研究は会場健診であったため,膝OAの症状がより重度である方は外出を控えたことが想定される。今後は受診ができなかった方の調査が必要となる。
【理学療法学研究としての意義】膝OA保有者が虚弱に陥らないためには,筋力を向上させることが必要であることが明らかになっているものの,後期高齢者においては虚弱のリスクを複数保有していることが想定される。膝OAの症状改善のための介入を検討する際には,膝OAに関連する機能評価のみではなく包括的な評価の必要性を示唆できた点において,本研究の意義は高いと考えられる。
【方法】2008年に東京都板橋区にて高齢者健診を受診した75歳以上84歳以下の地域在住高齢者1288名(平均年齢78.4±2.7歳)を対象とした。膝OAの有無については看護師が聴取した。下肢筋力は膝伸展筋力を採用し,マスキュレーターを用いて利き足の等尺性(股90°,膝90°屈曲位)最大筋力を測定した。活動状況については1ヵ月の外出歴について聴取し,町内・町外の外出の有無を確認した。栄養状態は,Body Mass Index(以下,BMI),下腿周囲長の計測を行った。膝OAの有無とそれぞれの変数の関係についてはχ2検定,student-t検定を行った。その後,膝OA者を対象にそれぞれの変数において,年齢階級(75~79歳,80~84歳)ごとの比較も行った。危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】膝OA者は298名(23.1%)であった。膝OAの有無における比較については,BMIと下腿周囲長において有意差が認められBMIは膝OAあり23.9±3.2,なし22.4±3.3,下腿周囲長は膝OAあり33.9±2.8cm,なし32.9±2.9cmであり,膝OAのある者の方が体格指数高く,下腿周囲長が長かった。その他の変数については有意差は認められなかった。一方で膝OAのある者に限定して,年齢階級ごとの比較をした結果,膝伸展筋力,BMI,下腿周囲長に有意差が認められた。膝伸展筋力においては75~79歳で59.5±14.3Nm,80~84歳で53.1±15.0Nm,BMIにおいては75~79歳で24.2±3.2,80~84歳で23.5±3.1,下腿周囲長においては75~79歳で34.3±2.8cm,であり,80~84歳で33.4±2.8cmであり,80~84歳の方が低値であった。なお町内外の外出状況については有意差が認められなかった。
【考察】膝OAの主訴となる疼痛をコントロールするためには筋力が重要であるが,筋力低下の誘因として考えられる活動量,栄養状態についても確認をおこなった。膝OAの有無における比較においては,筋力に有意差は認められなかったものの,BMIと下腿周囲長に有意差が認められた。ただし,膝OAのある者の値の方が高かった。肥満とは判定されない値ではあったものの,膝OAの発症には,体格との関連性があることが先行研究と同様に確認された。膝OAのある者において年齢階級での比較をすると,高齢である方が筋力,BMI,下腿周囲長が低値であった。低栄養,虚弱とは判定されない値ではあったものの,筋力とともに栄養状態の確認を行う必要性があることが明らかになった。なお町内外の外出ついては有意差は認められなかったが,本研究は会場健診であったため,膝OAの症状がより重度である方は外出を控えたことが想定される。今後は受診ができなかった方の調査が必要となる。
【理学療法学研究としての意義】膝OA保有者が虚弱に陥らないためには,筋力を向上させることが必要であることが明らかになっているものの,後期高齢者においては虚弱のリスクを複数保有していることが想定される。膝OAの症状改善のための介入を検討する際には,膝OAに関連する機能評価のみではなく包括的な評価の必要性を示唆できた点において,本研究の意義は高いと考えられる。