[P2-C-0707] 虚弱高齢者用10秒立ち上がりテスト(Frail CS-10)の有用性
当院通所リハビリテーション利用者を対象にして
キーワード:Frail CS-10, 障害老人の日常生活自立度, 生活範囲
【はじめに,目的】
高齢者において下肢の筋力低下は立位バランスの低下や歩行能力の低下を招き,要介護状態に陥る原因となることや転倒リスクの増大につながる。よって,以前より高齢者の下肢機能を評価することは重要とされている。虚弱高齢者用10秒椅子立ち上がりテスト(以下,Frail CS-10)は高齢者の下肢筋力を簡便に評価する方法として提唱され,諸家の報告でも歩行速度やTimed up & go test(以下TUG),機能的自立度評価表(以下,FIM)の運動項目といった歩行能力やバランス能力,日常生活動作能力と関連があることが言われている。今回は,当院通所リハビリテーション利用者を対象に,Frail CS-10の新たな有用性について歩行能力や日常生活動作能力などとの関連性から検討した。
【方法】
当院通所リハビリテーション利用者28名(男性8名,女性20名,平均年齢84.3±7.0歳)を対象にFrail CS-10を測定し,それと10m歩行速度,TUG,障害老人の日常生活自立度,FIM運動項目とその下位項目,介護度を調査,測定し検討した。また対象者は,全員が研究方法を理解できる者,Frail CS-10が1回以上可能な者とした。統計処理にはχ2検定,スピアマンの順位相関係数を用い,有意水準5%未満とした。なお,介護度の内訳は要支援1が3名,要支援2が7名,要介護1が12名,要介護2が6名であった。
【結果】
Frail CS-10は10m歩行速度(r=-0.46),TUG(r=-0.51),障害老人の日常生活自立度(r=0.79),FIM運動項目(r=0.69),またその下位項目である移乗の浴槽シャワー(r=0.49),階段(r=0.76)において,それぞれ相関を認めた。その他のFIM運動項目の下位項目および介護度においては相関を認めなかった。障害老人の日常生活自立度については,今回,対象者全員がランクJ(独力で外出可能)およびランクA(介助なしでは外出不可)に該当した。そして,ランクJの者(n=12)はFrail CS-10において立ち上がり回数1回と2回は0名,3回が8名,4回が2名,5回が2名であり,ランクAの者(n=16)は立ち上がり回数1回が5名,2回が8名,3回が3名,4回および5回は0名という結果であった。またこのランクごとの立ち上がり回数において有意差を認めた(p<0.01)。
【考察】
Frail CS-10と10m歩行速度,TUG,FIM運動項目に相関を認めたことについて,これらは諸家によりFrail CS-10との相関があることが以前より報告されており,今回の研究においても先行研究と同様の結果を得た。本研究においても,Frail CS-10は対象者の歩行能力やバランス能力,日常生活動作能力を反映したと考える。Frail CS-10とFIM運動項目の下位項目である移乗の浴槽シャワーに相関を認めたことについて,諸家によると,入浴が自立している者は日常生活動作能力が高いという報告がある。浴室など濡れた床面での動作はより高度な下肢筋力,バランス能力を必要とすることからも,その結果がFrail CS-10にも反映されやすかったのではないかと考える。同様に階段においても,階段昇降は応用歩行動作であり,歩行機能に関連する身体能力としてはより高度なものを必要とするため,Frail CS-10においても他の下位項目より反映されやすかったのではないかと考える。Frail CS-10と障害老人の日常生活自立度との相関については,障害老人の日常生活自立度もFIM同様,対象者の日常生活の評価基準であるため,今回の研究でも対象者の日常生活動作能力を反映したものと考える。また,ランクJの者は立ち上がり回数がランクAの者より多くなる傾向であった。屋外環境でより必要とされる段差昇降などの指標となるFIM運動項目の下位項目,階段に今回相関があったことからも,Frail CS-10の立ち上がり回数が多くなるほど,独力での屋外を含めた生活が可能となり,逆に立ち上がり回数が少なくなるほど生活範囲は屋内に留まる傾向があることが考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
立ち上がり動作は,日常生活動作の起点となるものであり,Frail CS-10により下肢筋力,歩行能力,バランス能力,日常生活動作能力を反映するものであることが示された。またFrail CS-10はその回数により,対象者の生活範囲を判断する指標にもなり得ることが示唆された。
高齢者において下肢の筋力低下は立位バランスの低下や歩行能力の低下を招き,要介護状態に陥る原因となることや転倒リスクの増大につながる。よって,以前より高齢者の下肢機能を評価することは重要とされている。虚弱高齢者用10秒椅子立ち上がりテスト(以下,Frail CS-10)は高齢者の下肢筋力を簡便に評価する方法として提唱され,諸家の報告でも歩行速度やTimed up & go test(以下TUG),機能的自立度評価表(以下,FIM)の運動項目といった歩行能力やバランス能力,日常生活動作能力と関連があることが言われている。今回は,当院通所リハビリテーション利用者を対象に,Frail CS-10の新たな有用性について歩行能力や日常生活動作能力などとの関連性から検討した。
【方法】
当院通所リハビリテーション利用者28名(男性8名,女性20名,平均年齢84.3±7.0歳)を対象にFrail CS-10を測定し,それと10m歩行速度,TUG,障害老人の日常生活自立度,FIM運動項目とその下位項目,介護度を調査,測定し検討した。また対象者は,全員が研究方法を理解できる者,Frail CS-10が1回以上可能な者とした。統計処理にはχ2検定,スピアマンの順位相関係数を用い,有意水準5%未満とした。なお,介護度の内訳は要支援1が3名,要支援2が7名,要介護1が12名,要介護2が6名であった。
【結果】
Frail CS-10は10m歩行速度(r=-0.46),TUG(r=-0.51),障害老人の日常生活自立度(r=0.79),FIM運動項目(r=0.69),またその下位項目である移乗の浴槽シャワー(r=0.49),階段(r=0.76)において,それぞれ相関を認めた。その他のFIM運動項目の下位項目および介護度においては相関を認めなかった。障害老人の日常生活自立度については,今回,対象者全員がランクJ(独力で外出可能)およびランクA(介助なしでは外出不可)に該当した。そして,ランクJの者(n=12)はFrail CS-10において立ち上がり回数1回と2回は0名,3回が8名,4回が2名,5回が2名であり,ランクAの者(n=16)は立ち上がり回数1回が5名,2回が8名,3回が3名,4回および5回は0名という結果であった。またこのランクごとの立ち上がり回数において有意差を認めた(p<0.01)。
【考察】
Frail CS-10と10m歩行速度,TUG,FIM運動項目に相関を認めたことについて,これらは諸家によりFrail CS-10との相関があることが以前より報告されており,今回の研究においても先行研究と同様の結果を得た。本研究においても,Frail CS-10は対象者の歩行能力やバランス能力,日常生活動作能力を反映したと考える。Frail CS-10とFIM運動項目の下位項目である移乗の浴槽シャワーに相関を認めたことについて,諸家によると,入浴が自立している者は日常生活動作能力が高いという報告がある。浴室など濡れた床面での動作はより高度な下肢筋力,バランス能力を必要とすることからも,その結果がFrail CS-10にも反映されやすかったのではないかと考える。同様に階段においても,階段昇降は応用歩行動作であり,歩行機能に関連する身体能力としてはより高度なものを必要とするため,Frail CS-10においても他の下位項目より反映されやすかったのではないかと考える。Frail CS-10と障害老人の日常生活自立度との相関については,障害老人の日常生活自立度もFIM同様,対象者の日常生活の評価基準であるため,今回の研究でも対象者の日常生活動作能力を反映したものと考える。また,ランクJの者は立ち上がり回数がランクAの者より多くなる傾向であった。屋外環境でより必要とされる段差昇降などの指標となるFIM運動項目の下位項目,階段に今回相関があったことからも,Frail CS-10の立ち上がり回数が多くなるほど,独力での屋外を含めた生活が可能となり,逆に立ち上がり回数が少なくなるほど生活範囲は屋内に留まる傾向があることが考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
立ち上がり動作は,日常生活動作の起点となるものであり,Frail CS-10により下肢筋力,歩行能力,バランス能力,日常生活動作能力を反映するものであることが示された。またFrail CS-10はその回数により,対象者の生活範囲を判断する指標にもなり得ることが示唆された。