[P2-C-0716] 当院における女性骨盤底リハビリ介入の試み
Keywords:骨盤底, 尿失禁, ウィメンズヘルス
【はじめに,目的】
骨盤臓器脱や尿失禁は中高年女性に多く認められる疾患である。これまでに我々は骨盤臓器脱患者において約70%に何らかの下部尿路症状が認められること,約30%に骨盤臓器脱手術後あらたに腹圧性尿失禁が出現することを報告した。さらに骨盤臓器脱患者では同年代の健常者と比較して運動機能の低下がみられること,ロコモティブシンドロームの陽性率が高いことも報告した。したがって骨盤臓器脱や尿失禁患者のQOL向上のためには下部尿路症状に対する対策とともに運動機能の維持も必要であると推察される。しかしながら骨盤臓器脱および尿失禁に対する骨盤底リハビリは保険診療の適応ではないため,現在のところ積極的に行われていない。そこで今回我々は骨盤臓器脱および尿失禁患者に対して入院中に骨盤底リハビリ介入を行ったのでその現状について報告する。
【方法】
2014年4月1日から2014年9月30日までの間に当院ウロギネコロジーセンターに骨盤臓器脱および尿失禁等の手術目的に入院し,骨盤底リハビリを実施した235名を対象とした。後方視的に対象疾患,患者背景および骨盤底リハビリ内容を調査した。
【結果】
対象疾患の内訳は,骨盤臓器脱165名(70.2%),尿失禁45名(19.1%),間質性膀胱炎12名(5.1%),その他13名(5.5%)で,平均年齢68.6歳(SD9.7),BMIは平均23.6(SD3.4),平均出産回数2.31回(SD0.8)であった。平均在院日数は,6.3日(骨盤臓器脱手術7.3日,尿失禁手術3.8日),骨盤底リハビリ介入回数は1.3回(SD0.9),術前からの介入は17件,Bartel indexは中央値で入院時100点(35-100),退院時100点(35-100)であった。歩行補助具使用者は38名(16.1%),運動器系併存疾患のあるものは55名(23.4%),中枢神経系疾患は16名(6.8%)であった。骨盤底リハビリ介入内容は,骨盤底筋トレーニング219件(93.2%),生活指導187件(80%),姿勢調整33件(14%),筋力トレーニング22件(9.4%),骨盤底リラクゼーション20件(8.5%),ADL ex 9件(3.8%),膀胱トレーニング11件(4.7%),離床6件(2.6%)であった。またロコモティブシンドローム啓発のために作成したリーフレット配布は,144件(61%)であった。
【考察】
今回我々は手術目的で入院した骨盤臓器脱および尿失禁患者に対して,新たな試みとして入院中に患者背景の調査および骨盤底リハビリ介入を行った。今回の対象者の入院時におけるADLは,ほぼ自立レベルであったが,高度に低下している患者も認められた。また運動器系疾患および中枢神経系疾患を有する患者も約30%に認められた。したがって骨盤臓器脱および尿失禁患者に対しては,術後の下部尿路症状に対する骨盤底リハビリのみならず,患者の状態にあわせた運動指導および生活指導などの包括的なアプローチが必要であると考えられた。今回のような骨盤底リハビリ介入はロコモティブシンドロームの啓発と予防を促進し,介護予防に貢献できる可能性がある。今後は,骨盤底リハビリの患者理解度および満足度,さらに自宅継続などについても調査を行う予定である。
【理学療法学研究としての意義】
骨盤臓器脱および尿失禁手術対象患者に対して,新たな試みとして入院中の骨盤底リハビリを行った。中高年の女性に多くみられるこれらの疾患に理学療法士が介入することで,患者のQOLの向上とともに運動機能およびADLの維持をはかることが期待された。このような試みはウィメンズヘルス領域へ理学療法士が積極的にかかわる可能性を示すと考えられた。
骨盤臓器脱や尿失禁は中高年女性に多く認められる疾患である。これまでに我々は骨盤臓器脱患者において約70%に何らかの下部尿路症状が認められること,約30%に骨盤臓器脱手術後あらたに腹圧性尿失禁が出現することを報告した。さらに骨盤臓器脱患者では同年代の健常者と比較して運動機能の低下がみられること,ロコモティブシンドロームの陽性率が高いことも報告した。したがって骨盤臓器脱や尿失禁患者のQOL向上のためには下部尿路症状に対する対策とともに運動機能の維持も必要であると推察される。しかしながら骨盤臓器脱および尿失禁に対する骨盤底リハビリは保険診療の適応ではないため,現在のところ積極的に行われていない。そこで今回我々は骨盤臓器脱および尿失禁患者に対して入院中に骨盤底リハビリ介入を行ったのでその現状について報告する。
【方法】
2014年4月1日から2014年9月30日までの間に当院ウロギネコロジーセンターに骨盤臓器脱および尿失禁等の手術目的に入院し,骨盤底リハビリを実施した235名を対象とした。後方視的に対象疾患,患者背景および骨盤底リハビリ内容を調査した。
【結果】
対象疾患の内訳は,骨盤臓器脱165名(70.2%),尿失禁45名(19.1%),間質性膀胱炎12名(5.1%),その他13名(5.5%)で,平均年齢68.6歳(SD9.7),BMIは平均23.6(SD3.4),平均出産回数2.31回(SD0.8)であった。平均在院日数は,6.3日(骨盤臓器脱手術7.3日,尿失禁手術3.8日),骨盤底リハビリ介入回数は1.3回(SD0.9),術前からの介入は17件,Bartel indexは中央値で入院時100点(35-100),退院時100点(35-100)であった。歩行補助具使用者は38名(16.1%),運動器系併存疾患のあるものは55名(23.4%),中枢神経系疾患は16名(6.8%)であった。骨盤底リハビリ介入内容は,骨盤底筋トレーニング219件(93.2%),生活指導187件(80%),姿勢調整33件(14%),筋力トレーニング22件(9.4%),骨盤底リラクゼーション20件(8.5%),ADL ex 9件(3.8%),膀胱トレーニング11件(4.7%),離床6件(2.6%)であった。またロコモティブシンドローム啓発のために作成したリーフレット配布は,144件(61%)であった。
【考察】
今回我々は手術目的で入院した骨盤臓器脱および尿失禁患者に対して,新たな試みとして入院中に患者背景の調査および骨盤底リハビリ介入を行った。今回の対象者の入院時におけるADLは,ほぼ自立レベルであったが,高度に低下している患者も認められた。また運動器系疾患および中枢神経系疾患を有する患者も約30%に認められた。したがって骨盤臓器脱および尿失禁患者に対しては,術後の下部尿路症状に対する骨盤底リハビリのみならず,患者の状態にあわせた運動指導および生活指導などの包括的なアプローチが必要であると考えられた。今回のような骨盤底リハビリ介入はロコモティブシンドロームの啓発と予防を促進し,介護予防に貢献できる可能性がある。今後は,骨盤底リハビリの患者理解度および満足度,さらに自宅継続などについても調査を行う予定である。
【理学療法学研究としての意義】
骨盤臓器脱および尿失禁手術対象患者に対して,新たな試みとして入院中の骨盤底リハビリを行った。中高年の女性に多くみられるこれらの疾患に理学療法士が介入することで,患者のQOLの向上とともに運動機能およびADLの維持をはかることが期待された。このような試みはウィメンズヘルス領域へ理学療法士が積極的にかかわる可能性を示すと考えられた。