[P2-C-0752] 座位での足関節底屈運動前後の血行動態の変化
負荷量の違いによる比較
キーワード:血行動態, レジスタンス運動, 足関節底屈筋力
【はじめに,目的】
近年,高齢者や心疾患患者に対する運動療法として,有酸素運動に加えレジスタンストレーニングが注目されている。大宮は,最大等尺性随意収縮(MVC)による運動強度設定に対する運動生理学的検討が必要であるとしている。しかし,レジスタンス運動時の血行動態についての報告は少ない。本研究では,運動強度の異なる足関節底屈筋レジスタンス運動前後の血行動態の変化について検討した。
【方法】
足関節底屈筋力の測定には,ハンドヘルドダイナモメーター(HHD:アニマ社製等尺性筋力測定装置μTas F-1)を用いた。測定方法は,甲斐らの測定方法に準じ,昇降台上での端坐位とし,高さ10cmの足台に踵を載せ,股関節・膝関節90度屈曲位および足関節底背屈中間位とした。筋力測定は,HHDのセンサーパッドの下端を中足骨頭に合わせて設置した。足関節底屈最大筋力の測定は,右・左・右・左の順に行い,各最大筋力計測間隔は1分以上設けた。左右のMVCの筋力平均値を足関節底屈筋力とし,足関節底屈筋力の20%,50%,80%をそれぞれ負荷強度として算出した。運動前から運動終了5分までの血行動態の測定は,非侵襲心拍出量計フィジオフローLab-1型(フランス・マナテック社製)を用いた。電極は表面電極法を用い,左頸部の胸鎖乳突筋の後方,左鎖骨の上縁,第4肋間胸骨右縁,剣状突起,剣状突起の右下縁,第5肋間左中腋窩線上に装着した。測定肢位はMVCの測定時と同様の方法で,両下肢にHHDを設置した。測定は20%・50%・80%の各負荷強度で行った。足関節底屈運動時はメトロノームを使用し,4秒間収縮,4秒間休息のリズムで計10回行った。また,収縮強度は目標値をHHDの測定表示画面で被験者に目視させることで目標値を維持させた。測定項目は,心拍数(HR),平均血圧(MBP),心拍出量(CO),末梢血管抵抗(SVR),1回拍出量(SV)とした。統計解析は,運動前,運動中,運動後の各パラメーターの平均値に対し,一元配置分散分析後に,運動前と運動中・運動後,運動中と運動後の比較は多重比較検定Bonferroniの検定を,運動前・運動中・運動後の各強度間での比較は対応のないt検定を行った。有意水準は5%とし,解析のためのソフトウェアにはSPSS ver.20.0 J for Windows(IBM)を使用した。
【結果】
心拍数は,80%負荷強度で運動前に対して運動中に有意な増加,運動中に対し運動後に有意な低下が見られた。平均血圧は,80%負荷強度で運動前に対して運動中・運動後に有意な増加が見られた。運動中に対し運動後では増加傾向を示した。運動強度間の比較では,運動後の20%負荷強度と80%負荷強度で有意な増加が見られた。心拍出量,80%負荷強度で運動前に対して運動中に有意な増加,運動中に対し運動後に有意な低下が見られた。運動強度間の比較では,運動中に20%負荷強度,50%負荷強度のそれぞれに対して80%負荷強度で有意な増加が見られた。また,運動後も同様に20%負荷強度,50%負荷強度のそれぞれに対して80%負荷強度で有意な増加が見られた。1回拍出量は,運動前に対して運動後に各運動強度で有意な増加が見られた。また,50%負荷強度では,運動中に対し運動後に有意な増加が見られた。末梢血管抵抗は,80%負荷強度で運動前に対して運動中に有意な減少,運動中に対して運動後に有意な増加が見られた。運動強度間の比較では,運動中に80%負荷強度で20%負荷強度,50%負荷強度に対して有意な減少が見られた。
【考察】
各運動強度の足関節底屈運動による筋ポンプ作用により静脈還流量が増加した結果,Frank-staring機構により運動後にSVが増加したと考えられる。運動時にSVRが減少した理由は,高強度運動時,筋血流量を維持するために生じた代謝性産物による血管拡張であると考えられる。運動後のSVRの増加は,高強度の筋収縮後の骨格筋への血流回復を図るためであり,それに伴いMBPも増加させる必要があったと考えられる。80%負荷強度でSVRは運動中に減少し,運動後にMBP・SV・SVRが増加した。今回行ったレジスタンス運動は,4秒収縮,4秒弛緩を繰り返す運動であったことから,静的運動と動的運動で見られる運動生理学的変化を合わせ持つものであった。
【理学療法学研究としての意義】
経時的な1回拍出量や末梢血管抵抗の変化を知るには非侵襲心拍出量計によるモニタリングが必要であると考えられる。地域高齢者や心疾患などの内部障害患者に対するレジスタンス運動では,末梢血管抵抗や運動後の血圧・1回拍出量の変化に注目する必要があると示唆される。
近年,高齢者や心疾患患者に対する運動療法として,有酸素運動に加えレジスタンストレーニングが注目されている。大宮は,最大等尺性随意収縮(MVC)による運動強度設定に対する運動生理学的検討が必要であるとしている。しかし,レジスタンス運動時の血行動態についての報告は少ない。本研究では,運動強度の異なる足関節底屈筋レジスタンス運動前後の血行動態の変化について検討した。
【方法】
足関節底屈筋力の測定には,ハンドヘルドダイナモメーター(HHD:アニマ社製等尺性筋力測定装置μTas F-1)を用いた。測定方法は,甲斐らの測定方法に準じ,昇降台上での端坐位とし,高さ10cmの足台に踵を載せ,股関節・膝関節90度屈曲位および足関節底背屈中間位とした。筋力測定は,HHDのセンサーパッドの下端を中足骨頭に合わせて設置した。足関節底屈最大筋力の測定は,右・左・右・左の順に行い,各最大筋力計測間隔は1分以上設けた。左右のMVCの筋力平均値を足関節底屈筋力とし,足関節底屈筋力の20%,50%,80%をそれぞれ負荷強度として算出した。運動前から運動終了5分までの血行動態の測定は,非侵襲心拍出量計フィジオフローLab-1型(フランス・マナテック社製)を用いた。電極は表面電極法を用い,左頸部の胸鎖乳突筋の後方,左鎖骨の上縁,第4肋間胸骨右縁,剣状突起,剣状突起の右下縁,第5肋間左中腋窩線上に装着した。測定肢位はMVCの測定時と同様の方法で,両下肢にHHDを設置した。測定は20%・50%・80%の各負荷強度で行った。足関節底屈運動時はメトロノームを使用し,4秒間収縮,4秒間休息のリズムで計10回行った。また,収縮強度は目標値をHHDの測定表示画面で被験者に目視させることで目標値を維持させた。測定項目は,心拍数(HR),平均血圧(MBP),心拍出量(CO),末梢血管抵抗(SVR),1回拍出量(SV)とした。統計解析は,運動前,運動中,運動後の各パラメーターの平均値に対し,一元配置分散分析後に,運動前と運動中・運動後,運動中と運動後の比較は多重比較検定Bonferroniの検定を,運動前・運動中・運動後の各強度間での比較は対応のないt検定を行った。有意水準は5%とし,解析のためのソフトウェアにはSPSS ver.20.0 J for Windows(IBM)を使用した。
【結果】
心拍数は,80%負荷強度で運動前に対して運動中に有意な増加,運動中に対し運動後に有意な低下が見られた。平均血圧は,80%負荷強度で運動前に対して運動中・運動後に有意な増加が見られた。運動中に対し運動後では増加傾向を示した。運動強度間の比較では,運動後の20%負荷強度と80%負荷強度で有意な増加が見られた。心拍出量,80%負荷強度で運動前に対して運動中に有意な増加,運動中に対し運動後に有意な低下が見られた。運動強度間の比較では,運動中に20%負荷強度,50%負荷強度のそれぞれに対して80%負荷強度で有意な増加が見られた。また,運動後も同様に20%負荷強度,50%負荷強度のそれぞれに対して80%負荷強度で有意な増加が見られた。1回拍出量は,運動前に対して運動後に各運動強度で有意な増加が見られた。また,50%負荷強度では,運動中に対し運動後に有意な増加が見られた。末梢血管抵抗は,80%負荷強度で運動前に対して運動中に有意な減少,運動中に対して運動後に有意な増加が見られた。運動強度間の比較では,運動中に80%負荷強度で20%負荷強度,50%負荷強度に対して有意な減少が見られた。
【考察】
各運動強度の足関節底屈運動による筋ポンプ作用により静脈還流量が増加した結果,Frank-staring機構により運動後にSVが増加したと考えられる。運動時にSVRが減少した理由は,高強度運動時,筋血流量を維持するために生じた代謝性産物による血管拡張であると考えられる。運動後のSVRの増加は,高強度の筋収縮後の骨格筋への血流回復を図るためであり,それに伴いMBPも増加させる必要があったと考えられる。80%負荷強度でSVRは運動中に減少し,運動後にMBP・SV・SVRが増加した。今回行ったレジスタンス運動は,4秒収縮,4秒弛緩を繰り返す運動であったことから,静的運動と動的運動で見られる運動生理学的変化を合わせ持つものであった。
【理学療法学研究としての意義】
経時的な1回拍出量や末梢血管抵抗の変化を知るには非侵襲心拍出量計によるモニタリングが必要であると考えられる。地域高齢者や心疾患などの内部障害患者に対するレジスタンス運動では,末梢血管抵抗や運動後の血圧・1回拍出量の変化に注目する必要があると示唆される。