第50回日本理学療法学術大会

Presentation information

ポスター

ポスター2

卒前教育・臨床実習4

Sat. Jun 6, 2015 4:10 PM - 5:10 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-C-0756] 理学療法士の臨床経験の違いが目標設定に及ぼす影響

貞清香織1, 貞清秀成2, 久保晃1, 丸山仁司3 (1.国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科, 2.介護老人保健施設マロニエ苑リハビリテーション室, 3.国際医療福祉大学)

Keywords:目標設定, 臨床実習, 理学療法教育

【はじめに,目的】
理学療法士にとって対象者の状態を評価しながら,治療計画を立案することは重要である。中でも目標設定はプログラム実施の前提条件となり,適切に設定をすることで,対象者のモチベーションを高めると言われている。目標設定には,正確な能力評価,予後の知識,臨床経験が必要と言われているが,学生が学ぶ機会は少なく,臨床実習での経験や知識,先行研究などを参考に設定をしているのが現状である。目標設定の際,重要視する項目は臨床経験により異なる可能性があるが,どの情報や評価を重要視し設定しているかは明らかになっていない。
そこで本研究は,臨床実習学生と臨床現場の理学療法士が目標設定する際,何を最重要視しているかを調査し,臨床経験の違いが目標設定に影響を及ぼすかを検討する。
【方法】
対象は,本大学関連施設に勤める理学療法士(以下:PT)47名(経験年数3.7±2.1年)と本学学生42名とした。対象学生は,3年生24名(男性13名,女性11名)と4年生18名(男性10名,女性8名)とした。3年生は平成26年8月上旬から9月中旬にかけて実施される3週間の評価実習,4年生は平成26年度の総合臨床実習6週間を2期終了日後に実施した。
対象者には,自由記載のアンケートにより目標設定に最も重要視する評価及び情報について1項目挙げるように依頼した。学生の調査は,各実習の最終日または終了後に実施した。得られた結果は,ICFに基づき身体機能構造,活動,参加,個人因子,環境因子に分類しPTと学生で比較した。
【結果】
ICFにて分類し,分類不可能4名(PT1名,学生3名)を除く85名を有効回答とした。PTの結果は,身体機能6名,活動8名,参加0名,個人因子25名,環境因子7名であった。学生の結果は,身体機能5名,活動15名,参加0名,個人因子14名,環境因子5名であった。臨床経験の比較では,PT1~3年目26名と4年目以降20名に分類し,学生は学年ごとに比較した。経験年数の1~3年は,身体機能4名(15%),活動7名(27%),個人因子12名(46%),環境因子3名(12%)であった。4年目以降は,身体機能2名(10%),活動1名(5%),個人因子13名(65%),環境因子4名(20%)であった。また,3年次の結果は,身体機能構造4名(17%),活動8名(35%),個人因子10名(44%),環境因子1名(4%)であり,4年次は,身体機能構造1名(6%),活動7名(44%),個人因子4名(25%),環境因子4名(25%)であった。
【考察】
本研究では,臨床現場のPTと学生を対象に目標設定の際に,重要視する項目を調査し,異なる傾向が得られた。PTは「HOPE」や「病前の生活」を含む個人因子を重要視し,学生は「動作」や「現在のADL」等の活動を重視していた。学生は目の前にいる対象者の状態を重視するが,PTは対象者の現状だけではなく,過去・未来にも目を向けていることが明らかになった。
また,学生間の比較では,4年次は身体機能,個人因子の割合が少なくなり,活動,環境因子の割合が増える傾向があることが示唆された。
これより,現場のPTと学生の間には目標設定に重要視する項目に違いはあるが,臨床経験を重ねることで変化がみられることが明らかになった。
【理学療法学研究としての意義】
臨床現場と卒前教育の違いによる目標設定に重要視する項目を調査することで,理学療法士教育の一助となると考える。