第50回日本理学療法学術大会

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2015年6月6日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-C-0761] 患者満足度調査とCSポートフィリオを用いた業務分析について

山本晃大, 茶家康吉, 松井将, 井上真吾, 菊岡紗恵子 (市立大洲病院)

キーワード:患者満足度, CSポートフィリオ, 入院患者

【はじめに,目的】
患者満足度やQOL向上は医療に携わる者の課題となっており,様々な施設や各分野で客観的評価と併せて様々な患者立脚型評価が散見されるようになった。しかし,データの集積のみでは結果を課題へと帰結し難く,総合満足度に対して各項目は同程度の影響度ではないことに注意する必要があった。本研究の目的は,入院患者の満足度に関係する様々な調査項目について,満足度の影響度を考量し,CS(Customer Satisfaction)ポートフィリオによりサービス提供に必要な項目を抽出し,リハビリテーション室(以下,当科)が患者/家族視点で高く評価されている長所や,逆に低く評価されている短所を見つけることで,患者サービスへ還元すべき留意事項について考察することである。
【方法】
当院の自宅退院を転帰とした入院患者47名を対象に,基礎項目11項,総合項目4項の計15項目の選択式調査を1:最低から5:最高の5段階の評定尺度法で実施した。アンケートは事前に説明を行い,同意を得たものに配布した。基礎項目は1)言葉遣い,2)身だしなみ,3)治療計画の説明,4)希望の取り入れ,5)疼痛への配慮,6)体の動かし方,7)その時々の状態への適切性,8)病態への適切性,9)期待した結果か,10)時間への配慮,11)謝罪である。総合項目は12)全体的満足度,13)頼りがい,14)他者への紹介,15)信頼性である。まず,各基礎項目の総合項目の平均値への寄与度をSpearman順位相関係数検定により解析し,満足度と寄与度の関係ついてポートフィリオ図を作成した。作成された図より満足度が高く,寄与度も高い項目を当科の長所領域とし,満足度は低く,寄与度が高い項目を当科の短所領域として抽出した。図の縦軸と横軸の目盛の設定は満足度・寄与度の平均値とした。次に,目的変数を総合項目の平均値とし,説明変数を基礎項目としたステップワイズ重回帰分析(変数増減法)により抽出項目を検討した。統計解析にはR-commander ver.2.8.1を用い,全ての検定における有意水準は何れも5%未満とした。
【結果】
アンケートは全数の回収が可能であった。基礎項目の満足度平均値は4.6であった。ポートフィリオ図より,長所領域の項目は「体の動かし方」,「時間への配慮」,「その時々の状態への適切性」,「病態への適切性」であった。一方,短所領域の項目は「期待した結果か」,「治療計画の説明」,「希望の取り入れ」であった。選択要因は「体の動かし方(β=0.46,p<0.01)」,「その時々の状態への適切性(β=0.31,p<0.01)」,「治療計画の説明(β=0.22,p<0.05)」,「疼痛への配慮(β=-0.19,p<0.05)」,「期待した結果か(β=0.20,p<0.05)」であった(p<0.001,R2=0.89)。
【考察】
注目すべき項目の抽出は,ステップワイズ重回帰分析の選択要因の5つとポートフィリオ図で挙げられた長所領域と短所領域の重複項目が挙げられる。まず,「体の動かし方」,「その時々の状態への適切性」はポートフィリオ図の長所の領域に分類される。寄与度の高さから,当科が高い満足度を得るに当たり,直接的なサービス提供に関する運営上のあり方の中心に位置する項目とも解釈できる。つぎに,「治療計画の説明」,「期待した結果か」は短所の領域に分類される。満足度は低いが寄与度は高い項目のため,当科の質を高めるために優先して取り組むべき課題と考える。特に「治療計画の説明」は症状・検査・期間などをもとに,情報提供や治療内容の提案が適切に行えていたかを問われた内容であり,説明の序を欠いた事態が結果に関連があるとすれば,結果への評価は時系列上,事前の説明力不足が影響しているとも解釈できる。以上のことから当科の現状の課題は,説明力を高める取り組みの必要性が示唆され,具体的な対策が今後の課題である。
【理学療法学研究としての意義】
先行研究では,満足度調査は職員が施設の実情に応じた設問や解析方法を考える必要性を説いており,今研究は課題の一助になるものと考える。