第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター15

運動器/膝関節

2015年6月7日(日) 09:40 〜 10:40 ポスター会場 (展示ホール)

[P3-A-0837] 人工膝関節置換術後に外側広筋による膝窩部痛を呈した一症例

三宅崇史1, 水池千尋1, 水島健太郎1, 稲葉将史1, 久須美雄矢1, 石原康成1, 堀江翔太1, 立原久義2, 山本昌樹1 (1.大久保病院明石スポーツ整形・関節外科センターリハビリテーション科, 2.大久保病院明石スポーツ整形・関節外科センター整形外科)

キーワード:人工膝関節置換術, 膝窩部痛, 外側広筋

【目的】人工膝関節置換術(TKA)後に,大腿後面及び膝窩部の疼痛を訴える症例を経験する。その場合,半膜様筋や膝窩筋などを含む下肢後面の軟部組織が影響していることが多い。今回,膝窩部痛を示す症例において,外側広筋(VL)の疼痛を示す症例を経験したので報告する。

【症例提示】70歳代男性,右変形性膝関節症(OA)にて内側傍膝蓋アプローチによるTKAが施行された。術前の膝外側角(FTA)は186°で,ROMが屈曲125°,伸展-5°であった。

【経過と考察】術後のFTAが176°であり,術後2週でのROMが屈曲130°,伸展-5°であった。病棟でのADLおよびT字杖歩行は自立しているものの,洗面時での立位前屈動作や歩行立脚初期において膝窩部の疼痛を訴えていた。理学所見として,大腿外側部の過緊張とOber test陽性,圧痛がVL起始部の大腿骨粗線外側唇に認め,同部の膝関節伸展運動における収縮時痛が再現できた。これらの所見から,動作時痛の原因は,VLの過緊張によるものと判断した。運動療法は,大腿外側部の伸張性と可動性改善を目的に,大腿筋膜張筋(TFL)とともにVLへのアプローチを行った。結果,術後3週でのROMが屈曲135°,伸展0°となり,Ober testが陰性化し,膝窩部の圧痛と動作時痛が消失した。本症例は,内側広筋(VM)を中心とした膝内側機構の筋収縮機能不全と,VLおよびTFLを含む膝外側機構のtightnessを有し,VLの過緊張に陥りやすい状態であった。これらは,術前のFTAや膝関節伸展制限からもうかがわれ,更には内側傍膝蓋アプローチによるVM切開からVLへの依存度が増した事で,過緊張を招いたものと考えられた。今回,VLにより膝窩部痛を生じることが示唆され,詳細な解剖学的知識とともに確実な触診と評価が必要であると考えられる。