第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター16

運動器/足関節・足部

2015年6月7日(日) 09:40 〜 10:40 ポスター会場 (展示ホール)

[P3-A-0850] 右ピロン骨折術後前脛骨筋腱の癒着を生じた一例

菅原亮太, 小野寺智亮, 瀬戸川美香, 村田聡, 谷口達也 (医療法人徳洲会札幌徳洲会病院整形外科外傷センター)

キーワード:ROM制限, 癒着, ピロン骨折

【目的】
ピロン骨折は軟部組織合併症が生じやすくそれが理学療法の妨げになることも多い。今回ピロン骨折後前脛骨筋腱の癒着を生じた症例を経験した。癒着に至った経緯と前脛骨筋腱癒着の問題について報告する。
【症例提示】
50代男性。屋根から転落し右開放性ピロン骨折を受傷した。腫脹の影響で内固定術は受傷後23日に行った。前内側アプローチで伸筋支帯,関節包を切開後,plateとscrew固定を行ったが,腫脹により一部閉創ができなかった。術後は非荷重でROM運動は許可されたが創治癒促進のため底屈運動は愛護的に進めた。
【経過と考察】
術後3日。ROMは足関節背屈自動-20°他動-10°,底屈他動25°であった。長母趾屈筋等の下腿後面筋の伸張性低下,足趾伸筋と前脛骨筋腱の滑走障害が著明であった。
まず背屈ROM改善を重視し,長母趾屈筋滑走練習,Kager’s fat pad徒手操作等を行った。術後10日で創治癒を認め積極的底屈運動が許可され,前脛骨筋や足趾伸筋の滑走練習,超音波療法,伸筋支帯持ち上げ操作を行った。術後14週で全荷重となり荷重位トレーニングを追加した。
術後5ヵ月。ROMは足関節背屈自動-10°他動15°,底屈他動35°である。エコーでは前脛骨筋腱の癒着を認めた。独歩可能だが歩行継続により足関節前面痛や下腿前面のだるさが出現し長時間の歩行に消極的である。階段昇降は1足1段可能である。JSSF scaleは72/100点である。
前脛骨筋腱の癒着は術後早期に十分な遠位滑走を引き出せなかったことで生じたと考える。歩行時のだるさ等の症状は,癒着により筋収縮時の張力が遠位に伝わらず筋腹部に過度な張力が加わり続けることが原因と推察する。歩行や階段降段動作において背屈ROMを優先することが多いが,今回前脛骨筋腱の癒着に伴う症状によりADL制限を招く結果となった。前脛骨筋腱癒着の影響について言及している報告は見当たらないが,癒着によって起きる障害を周知することは重要である。