第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター17

運動器/脊椎

2015年6月7日(日) 09:40 〜 10:40 ポスター会場 (展示ホール)

[P3-A-0857] 大腿外側痛に対し腰椎側屈モビライゼーションと補高が有効であった一症例

野中一誠, 野中理絵, 西亮介, 吉田亮太, 松島知生, 西恒亮 (医療法人龍邦会東前橋整形外科リハビリテーションセンター)

キーワード:補高, モビライゼーション, 腰部脊柱管狭窄症

【目的】
徒手療法など他動的な治療のみでは,一時的な効果が出ても持続せず,再発を起こすといわれている。今回,神経根圧迫による大腿外側痛を疑う症例に対し,腰椎側屈モビライゼーションと補高を組合せる事で持続的な改善が得られた為,報告する。
【症例提示】
対象は75歳女性。診断名は腰部脊柱管狭窄症と両変形性股関節症。主訴は長時間歩行時の左大腿外側痛。介入初期は左股関節痛が強く歩行困難であった。股関節周囲筋リラクセーションと殿筋・体幹の筋力強化を行い約30分歩行可能となったが左大腿外側痛が残存した。
再評価にて左股関節に著明な制限や運動時痛はなかった。腰椎伸展+左側屈で左大腿外側痛が再現され,左膝蓋腱反射減弱,左大腿四頭筋筋力低下,左大腿外側感覚鈍麻を認め,神経系の関与が疑われた。脚長差は左が1.5cm短く,歩行は左立脚後期~遊脚前期(以下,Tst~Psw)に伸び上がりが出現し,Trendelenburg徴候,腰椎左側屈を認めた。また腰椎他動運動より左L3/4,L4/5低可動性を認めた。
これらより長時間歩行時の左大腿外側痛は,左Tst~Pswの腰椎左側屈による左L3神経根圧迫によるものと疑われ,左L3/4,L4/5に対する側屈モビライゼーションと左下肢補高を行った。
【経過と考察】
腰椎側屈モビライゼーション直後に左L3/4,L4/5可動性改善と左大腿外側感覚鈍麻の改善傾向を認めた。補高により脚長差は軽減し,左Tst~Pswでの伸び上がり軽減と左Trendelenburg徴候,腰椎左側屈の軽減を認め,長時間歩行時の左大腿外側痛は消失した。
本症例は脚長差から生じる伸び上がりでの接地面の減少を補高により補うことで,左立脚期の安定性が高まり,骨盤の水平位保持と腰椎左側屈軽減に繋がったと考えた。結果,左L3神経根圧迫が軽減し,長時間歩行時の左大腿外側痛が消失したと考えた。
神経根圧迫所見を認め,脚長差のある症例に腰椎側屈モビライゼーションと補高の組合せは有効である事が示唆された。