[P3-A-0898] 変形性膝関節症におけるPrefemoral Fat Padの形態変化
キーワード:超音波画像診断, 変形性膝関節症, 脂肪体
【目的】
膝関節には脂肪体が存在しており,大腿骨と膝蓋上嚢の間に位置するPrefemoral Fat Pad(以下,PFP)と呼ばれる脂肪体は,膝の屈曲・伸展運動や大腿四頭筋の収縮によって前後径が変化するとされているが,変形性膝関節症(以下,膝OA)でのPFPの変化や,膝OAの臨床症状との関連性は検討されていない。そこで本研究では,超音波診断装置を用いてPFPを観察し,健常な高齢者と比較することで膝OAの臨床症状との関連や特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は膝OA群(25名36肢,年齢73.6±9.4歳,BMI 26.6±4.6 kg/m2)および高齢群(18名31肢,年齢70.0±6.6歳,BMI 22.3±2.6 kg/m2)とした。高齢群は下肢に整形外科的疾患や神経筋疾患のない者を対象とした。膝OA群は市立秋田総合病院整形外科を受診し,K/L gradeII以上と診断された者を膝OAとした。
PFPの観察はデジタル超音波診断装置Noblus(日立アロカメディカル)を使用し,上前腸骨棘と膝蓋骨中央を結ぶ線上で膝蓋骨上縁近位部にて長軸像をモニター上に描出した。肢位は椅子座位で膝の屈曲角度を0°,30°,60°,90°に変えて行い,各膝屈曲角度で安静時と大腿四頭筋の最大等尺性収縮後のPFP前後径を計測した。
また,膝屈曲角度0°,30°,60°,90°で計測した安静時PFP前後径の最大値と最小値の差をPFP変化量とし,膝屈曲・伸展によってどの程度PFPが変化したかを求めた。
膝OA群ではこれらのPFPのパラメータと膝の100mmVAS法による痛みの程度や大腿骨顆間距離,膝ROMとの関係をピアソンの積率相関係数を用いて求めた。
【結果】
安静時PFP前後径は,膝OA群,高齢群で膝屈曲角度0°(6.2±1.9 vs. 6.7±3.3 mm),30°(6.9±2.4 vs. 12.0±3.6 mm,p<0.001),60°(6.5±2.0 vs. 9.7±2.5 mm,p<0.001),90°(4.8±1.8 vs. 4.8±2.0 mm)で膝屈曲角度30°と60°において膝OA群は高齢群と比較して有意に低値を示した。
収縮時PFP前後径は,膝OA群,高齢群で膝屈曲角度0°(6.7±2.3 vs. 8.8±3.7 mm,p=0.033),30°(7.9±2.6 vs. 12.9±3.7 mm,p<0.001),60°(7.1±2.5 vs. 13.5±2.6 mm,p<0.001),90°(5.0±1.8 vs. 6.5±2.5 mm,p=0.008)でいずれの膝屈曲角度においても膝OA群は高齢群と比較して有意に低値を示した。
PFP前後径の変化量は,膝OA群は高齢群と比較して有意に低値を示した(3.3±1.9 vs. 8.4±2.5,p<0.001)。
膝OA群において,PFP前後径の変化量と大腿骨顆間距離との間に有意な負の相関関係が認められた(r=-0.46,p=0.016)。痛みやROMとPFPのパラメータでは有意な相関は認められなかった。
【考察】
膝OA群では高齢群と比較して安静時のPFPの前後径の低下が認められ,大腿四頭筋の収縮による変化も少なかった。膝最大伸展位から屈曲90°までのPFP前後径の変化量も高齢群では膝の屈曲・伸展運動に準じて前後径の変化が見られるが,膝OA群では前後径の変化が低下していた。これらのことから一般的に言われているPFPは膝の屈曲・伸展運動や大腿四頭筋の収縮による前後径の変化が,膝OAでは低下していると考えられ,PFPの動きの変化と膝OAの発症との関連性が示唆された。
また,PFPの変化量は痛みのVASや膝ROMとは相関関係が見られなかったが,大腿骨顆間距離との相関関係が認められ,PFPの変化と膝OAにみられる内反変形との関連性が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
持ち上げ動作によるPFPの柔軟性向上が膝ROMの改善へ寄与するという報告もあり,近年PFPの評価が着目されている。膝疾患の代表的なものである膝OAのPFPを評価し,その特徴を捉えることで,PFPに着目したアプローチ方法の考案につながると考えられる。
膝関節には脂肪体が存在しており,大腿骨と膝蓋上嚢の間に位置するPrefemoral Fat Pad(以下,PFP)と呼ばれる脂肪体は,膝の屈曲・伸展運動や大腿四頭筋の収縮によって前後径が変化するとされているが,変形性膝関節症(以下,膝OA)でのPFPの変化や,膝OAの臨床症状との関連性は検討されていない。そこで本研究では,超音波診断装置を用いてPFPを観察し,健常な高齢者と比較することで膝OAの臨床症状との関連や特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は膝OA群(25名36肢,年齢73.6±9.4歳,BMI 26.6±4.6 kg/m2)および高齢群(18名31肢,年齢70.0±6.6歳,BMI 22.3±2.6 kg/m2)とした。高齢群は下肢に整形外科的疾患や神経筋疾患のない者を対象とした。膝OA群は市立秋田総合病院整形外科を受診し,K/L gradeII以上と診断された者を膝OAとした。
PFPの観察はデジタル超音波診断装置Noblus(日立アロカメディカル)を使用し,上前腸骨棘と膝蓋骨中央を結ぶ線上で膝蓋骨上縁近位部にて長軸像をモニター上に描出した。肢位は椅子座位で膝の屈曲角度を0°,30°,60°,90°に変えて行い,各膝屈曲角度で安静時と大腿四頭筋の最大等尺性収縮後のPFP前後径を計測した。
また,膝屈曲角度0°,30°,60°,90°で計測した安静時PFP前後径の最大値と最小値の差をPFP変化量とし,膝屈曲・伸展によってどの程度PFPが変化したかを求めた。
膝OA群ではこれらのPFPのパラメータと膝の100mmVAS法による痛みの程度や大腿骨顆間距離,膝ROMとの関係をピアソンの積率相関係数を用いて求めた。
【結果】
安静時PFP前後径は,膝OA群,高齢群で膝屈曲角度0°(6.2±1.9 vs. 6.7±3.3 mm),30°(6.9±2.4 vs. 12.0±3.6 mm,p<0.001),60°(6.5±2.0 vs. 9.7±2.5 mm,p<0.001),90°(4.8±1.8 vs. 4.8±2.0 mm)で膝屈曲角度30°と60°において膝OA群は高齢群と比較して有意に低値を示した。
収縮時PFP前後径は,膝OA群,高齢群で膝屈曲角度0°(6.7±2.3 vs. 8.8±3.7 mm,p=0.033),30°(7.9±2.6 vs. 12.9±3.7 mm,p<0.001),60°(7.1±2.5 vs. 13.5±2.6 mm,p<0.001),90°(5.0±1.8 vs. 6.5±2.5 mm,p=0.008)でいずれの膝屈曲角度においても膝OA群は高齢群と比較して有意に低値を示した。
PFP前後径の変化量は,膝OA群は高齢群と比較して有意に低値を示した(3.3±1.9 vs. 8.4±2.5,p<0.001)。
膝OA群において,PFP前後径の変化量と大腿骨顆間距離との間に有意な負の相関関係が認められた(r=-0.46,p=0.016)。痛みやROMとPFPのパラメータでは有意な相関は認められなかった。
【考察】
膝OA群では高齢群と比較して安静時のPFPの前後径の低下が認められ,大腿四頭筋の収縮による変化も少なかった。膝最大伸展位から屈曲90°までのPFP前後径の変化量も高齢群では膝の屈曲・伸展運動に準じて前後径の変化が見られるが,膝OA群では前後径の変化が低下していた。これらのことから一般的に言われているPFPは膝の屈曲・伸展運動や大腿四頭筋の収縮による前後径の変化が,膝OAでは低下していると考えられ,PFPの動きの変化と膝OAの発症との関連性が示唆された。
また,PFPの変化量は痛みのVASや膝ROMとは相関関係が見られなかったが,大腿骨顆間距離との相関関係が認められ,PFPの変化と膝OAにみられる内反変形との関連性が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
持ち上げ動作によるPFPの柔軟性向上が膝ROMの改善へ寄与するという報告もあり,近年PFPの評価が着目されている。膝疾患の代表的なものである膝OAのPFPを評価し,その特徴を捉えることで,PFPに着目したアプローチ方法の考案につながると考えられる。