[P3-A-0929] C2C12筋管細胞を用いた悪液質性筋萎縮に対するパルス超音波の予防効果と至適出力強度の検討
Keywords:悪液質, 筋萎縮, パルス超音波
【はじめに,目的】癌や慢性感染症,心臓病などの疾患では病期の進行に伴って悪液質を呈する。悪液質では全身性に炎症性サイトカインの増加がみられ,骨格筋ではユビキチンプロテアソーム系の活性化により骨格筋タンパク質の異化作用が促進され,同化作用が抑制される。一方,超音波療法の非温熱効果を目的としたパルス超音波は,機械的刺激により細胞増殖を促進することが明らかとなっているが,骨格筋タンパク質の同化作用を賦活することも報告されている。そこで,悪液質による筋萎縮に対し,パルス超音波を照射することで骨格筋タンパク質の同化作用を賦活し,筋萎縮を予防できるのではないかと考えられる。本研究ではマウス骨格筋細胞(C2C12細胞)に炎症反応を生じさせるリポポリサッカリド(LPS)を添加し,惹起される筋萎縮に対して,パルス超音波照射による萎縮予防効果と至適強度を検証した。
【方法】C2C12細胞を60 mmディッシュに播種し,増殖培地で培養した。90%コンフルエント時に培地を分化培地へ変更し,7~9日間の分化誘導の後にLPS添加及び超音波照射を行った。超音波照射は周波数3 MHz,照射時間率20%とし,BNRが3.2,ERAが6.0 cm2の超音波治療器(イトーUS-750,伊藤超短波)を使用した。LPS添加の直前に超音波出力強度がそれぞれ0.5 W/cm2,1.0 W/cm2,1.5 W/cm2のパルス超音波を30秒間照射し,LPS添加から24時間後の筋管細胞径と筋原線維タンパク質量を測定し,MTT assayにより細胞生存率・増殖能を測定した。また,至適出力強度の超音波照射がLPS非刺激下の筋管細胞に及ぼす影響も検証した。得られた結果の統計処理には一元配置分散分析とTukeyの多重比較検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】筋管細胞径はLPS添加により対照群と比較して有意に減少したが,各条件のパルス超音波照射によりLPS添加群に対して有意に高値を示し,0.5 W/cm2及び1.0 W/cm2の出力強度では対照群レベルに保持された。筋原線維タンパク質量はLPS添加により対照群と比較して有意に減少したが,0.5w/cm2の出力強度のパルス超音波照射によりLPS添加群に対して有意に高値を示し,対照群レベルに保持された。細胞生存率はLPS添加により有意に減少したが,各条件のパルス超音波照射によりLPS添加群に対して有意に高値を示し,対照群レベルに保持された。また,LPS非刺激下の筋管細胞に及ぼす影響の検討では,超音波照射により細胞増殖能は有意に増加し,筋管細胞径の変化は認められなかった。
【考察】0.5 W/cm2及び1.0 W/cm2のパルス超音波照射によりLPS添加による筋管細胞径及び細胞生存率・増殖能の減少が抑制され,0.5 W/cm2の出力強度では,LPS添加による筋原線維タンパク質量の減少も抑制された。パルス超音波照射による機械的刺激は,骨格筋タンパク質の同化作用を賦活することが報告されている(Nagata, 2013)。一方,本研究では筋管細胞にパルス超音波照射を行った場合,細胞径に変化がなかったことから,本実験での出力条件は骨格筋タンパク質の合成系を賦活させるものではなかったと考えられる。また,悪液質に特徴的な炎症性サイトカインの増加は細胞死を誘導する。パルス超音波による機械的刺激は細胞増殖を促進することに加えて,抗炎症作用を有すると報告(Wilkin, 2004)されていることから,本研究で使用した出力強度では炎症反応を抑制したことで細胞生存率を維持したものと考えられる。このことから,本研究の出力強度のパルス超音波は炎症反応を低減させ,筋タンパク質の異化作用を抑制したことにより筋管細胞径を維持したものと考えられる。本研究の結果からパルス超音波は悪液質性筋萎縮を予防するために有効であり,さらに細胞生存率を維持し,効果的に筋萎縮を抑制した低出力強度のパルス超音波が最も有効である可能性が示唆された。一方,本研究では炎症作用については検討していない。今後は炎症性サイトカインの発現や作用機序について検討を進める必要性があると考えている。
【理学療法学研究としての意義】パルス超音波照射により炎症下の筋萎縮を抑制できるという成果は,悪液質を生じる疾患に罹患した患者の筋萎縮を予防する手段として有効であることを示唆している。本研究の結果から超音波療法は悪液質に対する効果的な理学療法として活用できることを示唆したものであり,理学療法学研究としての意義あるものと考えられる。
【方法】C2C12細胞を60 mmディッシュに播種し,増殖培地で培養した。90%コンフルエント時に培地を分化培地へ変更し,7~9日間の分化誘導の後にLPS添加及び超音波照射を行った。超音波照射は周波数3 MHz,照射時間率20%とし,BNRが3.2,ERAが6.0 cm2の超音波治療器(イトーUS-750,伊藤超短波)を使用した。LPS添加の直前に超音波出力強度がそれぞれ0.5 W/cm2,1.0 W/cm2,1.5 W/cm2のパルス超音波を30秒間照射し,LPS添加から24時間後の筋管細胞径と筋原線維タンパク質量を測定し,MTT assayにより細胞生存率・増殖能を測定した。また,至適出力強度の超音波照射がLPS非刺激下の筋管細胞に及ぼす影響も検証した。得られた結果の統計処理には一元配置分散分析とTukeyの多重比較検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】筋管細胞径はLPS添加により対照群と比較して有意に減少したが,各条件のパルス超音波照射によりLPS添加群に対して有意に高値を示し,0.5 W/cm2及び1.0 W/cm2の出力強度では対照群レベルに保持された。筋原線維タンパク質量はLPS添加により対照群と比較して有意に減少したが,0.5w/cm2の出力強度のパルス超音波照射によりLPS添加群に対して有意に高値を示し,対照群レベルに保持された。細胞生存率はLPS添加により有意に減少したが,各条件のパルス超音波照射によりLPS添加群に対して有意に高値を示し,対照群レベルに保持された。また,LPS非刺激下の筋管細胞に及ぼす影響の検討では,超音波照射により細胞増殖能は有意に増加し,筋管細胞径の変化は認められなかった。
【考察】0.5 W/cm2及び1.0 W/cm2のパルス超音波照射によりLPS添加による筋管細胞径及び細胞生存率・増殖能の減少が抑制され,0.5 W/cm2の出力強度では,LPS添加による筋原線維タンパク質量の減少も抑制された。パルス超音波照射による機械的刺激は,骨格筋タンパク質の同化作用を賦活することが報告されている(Nagata, 2013)。一方,本研究では筋管細胞にパルス超音波照射を行った場合,細胞径に変化がなかったことから,本実験での出力条件は骨格筋タンパク質の合成系を賦活させるものではなかったと考えられる。また,悪液質に特徴的な炎症性サイトカインの増加は細胞死を誘導する。パルス超音波による機械的刺激は細胞増殖を促進することに加えて,抗炎症作用を有すると報告(Wilkin, 2004)されていることから,本研究で使用した出力強度では炎症反応を抑制したことで細胞生存率を維持したものと考えられる。このことから,本研究の出力強度のパルス超音波は炎症反応を低減させ,筋タンパク質の異化作用を抑制したことにより筋管細胞径を維持したものと考えられる。本研究の結果からパルス超音波は悪液質性筋萎縮を予防するために有効であり,さらに細胞生存率を維持し,効果的に筋萎縮を抑制した低出力強度のパルス超音波が最も有効である可能性が示唆された。一方,本研究では炎症作用については検討していない。今後は炎症性サイトカインの発現や作用機序について検討を進める必要性があると考えている。
【理学療法学研究としての意義】パルス超音波照射により炎症下の筋萎縮を抑制できるという成果は,悪液質を生じる疾患に罹患した患者の筋萎縮を予防する手段として有効であることを示唆している。本研究の結果から超音波療法は悪液質に対する効果的な理学療法として活用できることを示唆したものであり,理学療法学研究としての意義あるものと考えられる。