[P3-A-0936] 背臥位での異なる運動強度に対する動的運動の血行動態
Keywords:血行動態, 運動強度, 背臥位
【はじめに,目的】
近年,循環・代謝系疾患に対する運動療法において,有酸素運動を用いた方法が確立されつつある。臥位運動は,活動筋の血流量が少なく早期にアシドーシスになり座位運動に比べAnaerobic Threshold(AT)が低いといわれている。しかし,背臥位での異なる運動強度に対する動的運動の血行動態についての報告は少ない。そこで今回,背臥位での異なる運動強度に対する動的運動の血行動態の基礎的研究として,健常人を対象に検証することを目的とした。
【方法】
対象は,運動習慣の無い健常男性11例(年齢:26.0±6.5歳,体重:67.3±8.7kg,身長:172.8±6.0cm)とした。運動負荷の設定については,Karvonenの式(目標心拍数={(220-年齢)-安静時心拍数}×運動強度+安静時心拍数)を用いて目標心拍数を決定した。運動強度は,毎分10Wずつ増すランプ負荷試験を実施し,目標心拍数に達した時点の負荷の80%と40%の2種類の負荷量(80%:83.6±10.4W,40%:41.8±5.2W)とした。実験プロトコールは,5分間の安静臥位後,20W5分間のwarm upを行い,各々20分の定常負荷を実施し,運動後5分間安静とした。最初に被験者を滑り止めマットの上に骨盤がのるように背臥位をとらせ,膝の角度を屈曲20°にあわせ,2,3回のペダリングで最適な位置にサドルを設置した。回転数は,メトロロームで50rpmに調節した。二つの運動の順番はランダムに行い,運動と運動の間隔を最低2日あけるようにした。自転車エルゴメーターは,AEROBIKE EX90(コンビ社)を用い,血行動態は,心機能測定装置タクスフォースモニターTFM-3040(オーストリアCNSystems社)を用いて測定した。測定は,空調の取れた部屋で,温度と湿度(23.9±1.4℃,65.2±8.9%)を測定し行った。測定項目は,心拍数(HR),収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),平均血圧(MBP),一回拍出量(SV),心拍出量(CO),末梢血管抵抗(TPR)とした。統計学的処理は,運動負荷80%,40%に対し,プロトコール開始から終了までの1分間の平均を取り,安静時の平均値と各平均値,warm upの平均値と各平均値,運動20分の平均値と運動後の各平均値について一元配置分散分析後,多重比較検定Bonferroniの検定を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
心拍数は,運動負荷40%・80%で運動開始から20分まで増加し続けた。また,運動後は,運動負荷40%・80%で運動20分に対して減少し続けた。
血圧は,運動負荷80%で運動開始から20分まで増加し続けた。運動後は,運動負荷80%で運動20分に対して運動後5分まで減少し続けた。
一回拍出量は,運動負荷80%でwarm up以降減少傾向を示し,warm upに対して運動20分で減少した。また,運動後は,運動負荷80%で運動20分に対して増加し続けた。
心拍出量は,運動負荷40%・80%で運動運動開始から20分まで増加し続けた。またwarm upに対して運動負荷80%で運動開始から5分まで増加したが,6分以降は減少した。さらに,運動後は,運動負荷40%・80%で運動20分に対して運動後5分まで減少し続けた。
末梢血管抵抗は,運動負荷40%でwarm upで減少,運動負荷80%でwarm upと運動1分で減少し,その後は増加傾向を示した。また,運動負荷40%でwarm upに対して運動後4・5分で増加した。さらに,運動後は,運動負荷40%で運動20分に対して運動後5分まで減少し続けた。運動負荷80%では運動20分に対して運動後1分で減少した。
【考察】
高強度負荷では,心拍数,血圧が上昇し続け,ATを超える運動強度であったと考えられる。また,運動中の一回拍出量の低下,末梢血管抵抗の上昇など有酸素運動では見られない反応が見られた。静的運動では,血圧上昇に伴い末梢血管抵抗が上昇するといわれ,高強度負荷でみられたこの反応は同様の反応であると考えられる。また,一回拍出量は動的運動中上昇後,プラトーになるとされているが,今回行った高強度負荷では,低下傾向を示した。このことから,高強度負荷では,運動開始5分以降,中心循環血液量の減少を末梢血管抵抗の上昇により血圧を維持しながら,運動を継続させていたと考えられる。心拍出量が,運動中5分まで上昇した後,低下傾向を示したことからも裏づけされる。
【理学療法学研究としての意義】
健常人における背臥位での高強度動的運動では,中心循環血液量の減少を末梢血管抵抗の上昇により,血圧を維持しながら運動を継続する反応が見られ,血行動態の指標として末梢血管抵抗の重要性が示唆された。
近年,循環・代謝系疾患に対する運動療法において,有酸素運動を用いた方法が確立されつつある。臥位運動は,活動筋の血流量が少なく早期にアシドーシスになり座位運動に比べAnaerobic Threshold(AT)が低いといわれている。しかし,背臥位での異なる運動強度に対する動的運動の血行動態についての報告は少ない。そこで今回,背臥位での異なる運動強度に対する動的運動の血行動態の基礎的研究として,健常人を対象に検証することを目的とした。
【方法】
対象は,運動習慣の無い健常男性11例(年齢:26.0±6.5歳,体重:67.3±8.7kg,身長:172.8±6.0cm)とした。運動負荷の設定については,Karvonenの式(目標心拍数={(220-年齢)-安静時心拍数}×運動強度+安静時心拍数)を用いて目標心拍数を決定した。運動強度は,毎分10Wずつ増すランプ負荷試験を実施し,目標心拍数に達した時点の負荷の80%と40%の2種類の負荷量(80%:83.6±10.4W,40%:41.8±5.2W)とした。実験プロトコールは,5分間の安静臥位後,20W5分間のwarm upを行い,各々20分の定常負荷を実施し,運動後5分間安静とした。最初に被験者を滑り止めマットの上に骨盤がのるように背臥位をとらせ,膝の角度を屈曲20°にあわせ,2,3回のペダリングで最適な位置にサドルを設置した。回転数は,メトロロームで50rpmに調節した。二つの運動の順番はランダムに行い,運動と運動の間隔を最低2日あけるようにした。自転車エルゴメーターは,AEROBIKE EX90(コンビ社)を用い,血行動態は,心機能測定装置タクスフォースモニターTFM-3040(オーストリアCNSystems社)を用いて測定した。測定は,空調の取れた部屋で,温度と湿度(23.9±1.4℃,65.2±8.9%)を測定し行った。測定項目は,心拍数(HR),収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),平均血圧(MBP),一回拍出量(SV),心拍出量(CO),末梢血管抵抗(TPR)とした。統計学的処理は,運動負荷80%,40%に対し,プロトコール開始から終了までの1分間の平均を取り,安静時の平均値と各平均値,warm upの平均値と各平均値,運動20分の平均値と運動後の各平均値について一元配置分散分析後,多重比較検定Bonferroniの検定を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
心拍数は,運動負荷40%・80%で運動開始から20分まで増加し続けた。また,運動後は,運動負荷40%・80%で運動20分に対して減少し続けた。
血圧は,運動負荷80%で運動開始から20分まで増加し続けた。運動後は,運動負荷80%で運動20分に対して運動後5分まで減少し続けた。
一回拍出量は,運動負荷80%でwarm up以降減少傾向を示し,warm upに対して運動20分で減少した。また,運動後は,運動負荷80%で運動20分に対して増加し続けた。
心拍出量は,運動負荷40%・80%で運動運動開始から20分まで増加し続けた。またwarm upに対して運動負荷80%で運動開始から5分まで増加したが,6分以降は減少した。さらに,運動後は,運動負荷40%・80%で運動20分に対して運動後5分まで減少し続けた。
末梢血管抵抗は,運動負荷40%でwarm upで減少,運動負荷80%でwarm upと運動1分で減少し,その後は増加傾向を示した。また,運動負荷40%でwarm upに対して運動後4・5分で増加した。さらに,運動後は,運動負荷40%で運動20分に対して運動後5分まで減少し続けた。運動負荷80%では運動20分に対して運動後1分で減少した。
【考察】
高強度負荷では,心拍数,血圧が上昇し続け,ATを超える運動強度であったと考えられる。また,運動中の一回拍出量の低下,末梢血管抵抗の上昇など有酸素運動では見られない反応が見られた。静的運動では,血圧上昇に伴い末梢血管抵抗が上昇するといわれ,高強度負荷でみられたこの反応は同様の反応であると考えられる。また,一回拍出量は動的運動中上昇後,プラトーになるとされているが,今回行った高強度負荷では,低下傾向を示した。このことから,高強度負荷では,運動開始5分以降,中心循環血液量の減少を末梢血管抵抗の上昇により血圧を維持しながら,運動を継続させていたと考えられる。心拍出量が,運動中5分まで上昇した後,低下傾向を示したことからも裏づけされる。
【理学療法学研究としての意義】
健常人における背臥位での高強度動的運動では,中心循環血液量の減少を末梢血管抵抗の上昇により,血圧を維持しながら運動を継続する反応が見られ,血行動態の指標として末梢血管抵抗の重要性が示唆された。