[P3-A-0956] 腰部疾患手術後の遺残下肢症状に対する電気療法継続による効果
キーワード:腰部疾患手術後, 遺残下肢症状, 電気療法
【はじめに,目的】
腰椎疾患手術後は術前症状が大幅に改善するが,下肢の疼痛やしびれなどの遺残症状を呈する患者は少なくない。遺残下肢症状は術後愁訴,不満の一つであり,遺残率は26~66%(西村ら,2005)で,患者満足度に影響するとも報告されている。遺残下肢症状を認めた症例では入院期間が長期化するとの報告(西村ら,2005)もあり,クリニカルパスに沿った自宅退院を達成させるためには,遺残下肢症状に対するアプローチを後療法で最優先すべきである。この症状に対して宮城島ら(2014)は,10分間の電気療法にて66%に即時効果を認めている。しかし,電気療法継続による効果があるのかどうかは不明である。
本研究の目的は,腰部疾患手術後の遺残下肢症状に対する入院中の電気療法の継続効果を検討することである。
【方法】
対象は,当院で2011年10月1日~2012年12月31日に腰椎後方手術を実施した734例中,演者が担当した100例のうち,術後に殿部から末梢に症状が遺残した50例(年齢52.6±17.5歳,男性31例,女性19例)とした。使用機器はスーパーテクトロンHX606(テクノリンク社製)とし,安楽な臥位にて症状部位に10分間電気療法を実施した。強度は不快感,疼痛が出現しない最大限の強さとし,症状の強い順に導子を最大4つ装着した。入院中に1日1回電気療法を継続した例(電気継続群),数回の電気療法で効果が認められずに電気療法の継続を中止した例(電気中止群)の2群に分類し検討した。なお,電気中止群は,数回の治療後全てにおいて「変わらない」と訴えた場合とした。各群において,術前,初回電気療法前(術後5~7日目),退院時(術後2~3週)の下肢症状のVASを調査した。個々の症例に合わせて電気療法,体幹・下肢のストレッチングおよび筋力強化,ADL指導を退院時まで継続した。
統計的解析は,各群のVASの変化量についてはFriedman検定とShaffer法を使用し,Cohenの方法を用いて効果量(r)を算出した。また,従属変数を電気療法の継続の有無,独立変数を性別,年齢,BMI,術式(除圧・固定),腰椎手術の既往の有無,罹病期間,術後の投薬の有無,下肢筋力(MMT),術前・初回電気療法前・退院時の下肢症状のVASおよび足部の症状の有無とし,尤度比基準の変数増加法による多重ロジスティック回帰分析を適用した。有意水準は5%とした。
【結果】
電気継続群は39例,電気中止群は11例であり,電気中止群において拒否,症状悪化例は存在しなかった。電気継続群のVAS{中央値(四分位範囲)}は術前70(27)mm→初回電気療法前40(30)mm→退院時14(22)mmであり,どの時期においても有意差を認めた(p<0.05,r=0.66~0.86:大)。電気中止群のVASは術前63(47.5)mm→初回電気療法前45(27.5)mm→退院時41(61.5)mmであり,術前から初回電気療法前では有意差を認めたが(p<0.05,r=0.63:大),初回電気療法前から退院時では有意差を認めなかった(p=0.926,r=0.03:なし)。
多重ロジスティック回帰分析の結果,退院時のVAS(オッズ比1.04,95%信頼区間:1.02~1.07)が選択された(p<0.05,判別的中率84.0%)。
【考察】
電気継続群ではVASの改善度が大きかった。これは手術による自然回復,薬物療法の効果,運動療法の効果に加え,電気療法の継続効果が大きかったと推察できる。さらに,多重ロジスティック回帰分析の結果,退院時のVASのみ選択され,電気継続群が電気中止群と比較して退院時のVASが良好である結果であった。2群間において,他の因子よりも退院時のVASの影響度が強く,交絡因子を除いて結果を解釈できると考える。
以上より,電気療法の数回の効果を問わず,腰部疾患手術後の遺残下肢症状に対する入院中の継続的な電気療法により,退院時の症状を軽減できることを示唆した。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,腰部疾患手術後の理学療法の参考になり得る。遺残下肢症状に対する入院中の継続的な電気療法は有効である。
腰椎疾患手術後は術前症状が大幅に改善するが,下肢の疼痛やしびれなどの遺残症状を呈する患者は少なくない。遺残下肢症状は術後愁訴,不満の一つであり,遺残率は26~66%(西村ら,2005)で,患者満足度に影響するとも報告されている。遺残下肢症状を認めた症例では入院期間が長期化するとの報告(西村ら,2005)もあり,クリニカルパスに沿った自宅退院を達成させるためには,遺残下肢症状に対するアプローチを後療法で最優先すべきである。この症状に対して宮城島ら(2014)は,10分間の電気療法にて66%に即時効果を認めている。しかし,電気療法継続による効果があるのかどうかは不明である。
本研究の目的は,腰部疾患手術後の遺残下肢症状に対する入院中の電気療法の継続効果を検討することである。
【方法】
対象は,当院で2011年10月1日~2012年12月31日に腰椎後方手術を実施した734例中,演者が担当した100例のうち,術後に殿部から末梢に症状が遺残した50例(年齢52.6±17.5歳,男性31例,女性19例)とした。使用機器はスーパーテクトロンHX606(テクノリンク社製)とし,安楽な臥位にて症状部位に10分間電気療法を実施した。強度は不快感,疼痛が出現しない最大限の強さとし,症状の強い順に導子を最大4つ装着した。入院中に1日1回電気療法を継続した例(電気継続群),数回の電気療法で効果が認められずに電気療法の継続を中止した例(電気中止群)の2群に分類し検討した。なお,電気中止群は,数回の治療後全てにおいて「変わらない」と訴えた場合とした。各群において,術前,初回電気療法前(術後5~7日目),退院時(術後2~3週)の下肢症状のVASを調査した。個々の症例に合わせて電気療法,体幹・下肢のストレッチングおよび筋力強化,ADL指導を退院時まで継続した。
統計的解析は,各群のVASの変化量についてはFriedman検定とShaffer法を使用し,Cohenの方法を用いて効果量(r)を算出した。また,従属変数を電気療法の継続の有無,独立変数を性別,年齢,BMI,術式(除圧・固定),腰椎手術の既往の有無,罹病期間,術後の投薬の有無,下肢筋力(MMT),術前・初回電気療法前・退院時の下肢症状のVASおよび足部の症状の有無とし,尤度比基準の変数増加法による多重ロジスティック回帰分析を適用した。有意水準は5%とした。
【結果】
電気継続群は39例,電気中止群は11例であり,電気中止群において拒否,症状悪化例は存在しなかった。電気継続群のVAS{中央値(四分位範囲)}は術前70(27)mm→初回電気療法前40(30)mm→退院時14(22)mmであり,どの時期においても有意差を認めた(p<0.05,r=0.66~0.86:大)。電気中止群のVASは術前63(47.5)mm→初回電気療法前45(27.5)mm→退院時41(61.5)mmであり,術前から初回電気療法前では有意差を認めたが(p<0.05,r=0.63:大),初回電気療法前から退院時では有意差を認めなかった(p=0.926,r=0.03:なし)。
多重ロジスティック回帰分析の結果,退院時のVAS(オッズ比1.04,95%信頼区間:1.02~1.07)が選択された(p<0.05,判別的中率84.0%)。
【考察】
電気継続群ではVASの改善度が大きかった。これは手術による自然回復,薬物療法の効果,運動療法の効果に加え,電気療法の継続効果が大きかったと推察できる。さらに,多重ロジスティック回帰分析の結果,退院時のVASのみ選択され,電気継続群が電気中止群と比較して退院時のVASが良好である結果であった。2群間において,他の因子よりも退院時のVASの影響度が強く,交絡因子を除いて結果を解釈できると考える。
以上より,電気療法の数回の効果を問わず,腰部疾患手術後の遺残下肢症状に対する入院中の継続的な電気療法により,退院時の症状を軽減できることを示唆した。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,腰部疾患手術後の理学療法の参考になり得る。遺残下肢症状に対する入院中の継続的な電気療法は有効である。