[P3-A-0962] 頚髄症患者の術後3ヶ月の下肢機能とQOLに影響を与える因子についての検討
Keywords:頚髄症, JOACMEQ, FTT
【はじめに,目的】
頚椎症性脊髄症(以下,頚髄症)は,中高年より発症し,上下肢に運動障害を引き起こす。頚髄症の治療法としては手術療法の有効性が示されており,治療の有効性の評価として患者立脚型評価スケールである日本整形外科学会頸部脊髄症評価質問票(Japanese Orthopedic Association Cervical Myelopathy Evaluation Questionnaire:JOACMEQ)が開発された。しかし,術前後の運動機能とJOACMEQの経過の報告はまだ不十分である。そこで本研究では術後3ヶ月までの頚髄症術前後の運動機能とJOACMEQの経過とその関連性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は当院整形外科にて頚髄症と診断され,手術を施行された33名とした(男性17名,女性16名,平均年齢69.2±8.4歳)。取り込み条件は頚椎症性脊髄症もしくは後縦靭帯骨化症にて頚椎拡大術を施行された患者でかつ術後3ヶ月以上経過しているもの,除外条件としては頚椎固定術を施行されたもの,脳血管疾患など運動に影響を及ぼす疾患の既往があるもの,認知症など質問紙法による評価が困難なものとした。
評価内容は,日本整形外科学会頸部脊髄症治療判定基準(以下,JOAスコア)合計値,JOACMEQ下肢運動機能スコア,10m歩行テスト,30m歩行テスト,Foot Tapping Test(以下FTT),下肢痛,下肢のしびれ,FIMとした。FTTは左右の最小値を採用した。また下肢痛,下肢のしびれはVisual Analog Scale(以下,VAS)を用いて評価した。評価は術前,術後3ヵ月時とした。各スコアの術前後の変化量も算出した。
統計学的解析は,術前後の差には対応のあるt検定を実施した。また,術後3ヶ月のJOACMEQ下肢運動機能スコアの変化量を従属変数,その他の項目を独立変数とした重回帰分析を行った。分析にはSPSS16.0Jを用い,有意水準は5%とした。
【結果】
差の検定ではJOAスコア合計値(術前10.4±2.5,術後13.3±2.4,p<0.05),JOACMEQ下肢運動機能スコア(術前67.7±29.2,術後72.2±25.3,p<0.05)とFTT(術前21.1±6.6,術後25.6±6.6,p<0.05)が術後有意に高値であった。術後3ヶ月のJOACMEQ下肢運動機能スコアを従属変数とした重回帰分析では,術前のJOACMEQ下肢運動機能スコア(B=0.848,95%信頼区間:0.616~0.864),術後の下肢痛(B=-0.226,95%信頼区間:-0.315~-0.069),FIMの術前後の差(B=0.177,95%信頼区間:0.179~1.49)が抽出された(p<0.05,R2=0.892)。
【考察】
当院では頚椎術後リハビリを入院外来合わせ3ヵ月ほど行っている。そのため,術後3ヶ月時点をアウトカムとし研究を行った。その結果,QOLの指標となるJOACMEQ下肢運動機能スコアと神経兆候の指標となるFTTが有意に改善していることが明らかとなった。これは頚椎の手術によって下肢の神経兆候の改善によりQOLが改善することが考えられる。また,重回帰分析により,術後のQOLを高くするためには,術前のQOLが低下していないこと,手術により下肢痛が改善すること,ADLが改善することが必要であると考えられた。このことから頚椎術後のQOL改善のために,手術による侵襲による影響を考慮しながらADLの改善させていくことを目標にリハビリを進めていく必要性があると考えられた。本研究の限界としては,下肢のみの検討となっていること,また,重症度の検討も不十分であることが挙げられる。そのため,今後は術前の重症度や上肢等も含めた機能,能力の検討を行っていく必要があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
頚髄症患者は手術によりQOLが改善し,それにはADLの改善が影響を及ぼしていることが明らかとなったと考えられる。そのため,患者QOL改善のためにもADL改善のための理学療法が重要であると考える。
頚椎症性脊髄症(以下,頚髄症)は,中高年より発症し,上下肢に運動障害を引き起こす。頚髄症の治療法としては手術療法の有効性が示されており,治療の有効性の評価として患者立脚型評価スケールである日本整形外科学会頸部脊髄症評価質問票(Japanese Orthopedic Association Cervical Myelopathy Evaluation Questionnaire:JOACMEQ)が開発された。しかし,術前後の運動機能とJOACMEQの経過の報告はまだ不十分である。そこで本研究では術後3ヶ月までの頚髄症術前後の運動機能とJOACMEQの経過とその関連性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は当院整形外科にて頚髄症と診断され,手術を施行された33名とした(男性17名,女性16名,平均年齢69.2±8.4歳)。取り込み条件は頚椎症性脊髄症もしくは後縦靭帯骨化症にて頚椎拡大術を施行された患者でかつ術後3ヶ月以上経過しているもの,除外条件としては頚椎固定術を施行されたもの,脳血管疾患など運動に影響を及ぼす疾患の既往があるもの,認知症など質問紙法による評価が困難なものとした。
評価内容は,日本整形外科学会頸部脊髄症治療判定基準(以下,JOAスコア)合計値,JOACMEQ下肢運動機能スコア,10m歩行テスト,30m歩行テスト,Foot Tapping Test(以下FTT),下肢痛,下肢のしびれ,FIMとした。FTTは左右の最小値を採用した。また下肢痛,下肢のしびれはVisual Analog Scale(以下,VAS)を用いて評価した。評価は術前,術後3ヵ月時とした。各スコアの術前後の変化量も算出した。
統計学的解析は,術前後の差には対応のあるt検定を実施した。また,術後3ヶ月のJOACMEQ下肢運動機能スコアの変化量を従属変数,その他の項目を独立変数とした重回帰分析を行った。分析にはSPSS16.0Jを用い,有意水準は5%とした。
【結果】
差の検定ではJOAスコア合計値(術前10.4±2.5,術後13.3±2.4,p<0.05),JOACMEQ下肢運動機能スコア(術前67.7±29.2,術後72.2±25.3,p<0.05)とFTT(術前21.1±6.6,術後25.6±6.6,p<0.05)が術後有意に高値であった。術後3ヶ月のJOACMEQ下肢運動機能スコアを従属変数とした重回帰分析では,術前のJOACMEQ下肢運動機能スコア(B=0.848,95%信頼区間:0.616~0.864),術後の下肢痛(B=-0.226,95%信頼区間:-0.315~-0.069),FIMの術前後の差(B=0.177,95%信頼区間:0.179~1.49)が抽出された(p<0.05,R2=0.892)。
【考察】
当院では頚椎術後リハビリを入院外来合わせ3ヵ月ほど行っている。そのため,術後3ヶ月時点をアウトカムとし研究を行った。その結果,QOLの指標となるJOACMEQ下肢運動機能スコアと神経兆候の指標となるFTTが有意に改善していることが明らかとなった。これは頚椎の手術によって下肢の神経兆候の改善によりQOLが改善することが考えられる。また,重回帰分析により,術後のQOLを高くするためには,術前のQOLが低下していないこと,手術により下肢痛が改善すること,ADLが改善することが必要であると考えられた。このことから頚椎術後のQOL改善のために,手術による侵襲による影響を考慮しながらADLの改善させていくことを目標にリハビリを進めていく必要性があると考えられた。本研究の限界としては,下肢のみの検討となっていること,また,重症度の検討も不十分であることが挙げられる。そのため,今後は術前の重症度や上肢等も含めた機能,能力の検討を行っていく必要があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
頚髄症患者は手術によりQOLが改善し,それにはADLの改善が影響を及ぼしていることが明らかとなったと考えられる。そのため,患者QOL改善のためにもADL改善のための理学療法が重要であると考える。