[P3-A-1039] 急性期くも膜下出血症例の在宅復帰の特徴
キーワード:くも膜下出血, 在宅復帰, 重症度
【はじめに,目的】
今後,高齢化が更に加速すると言われており,在宅での医療・介護が推進されている。そのため,入院期間の短縮および早期自宅退院が求められる医療情勢となっており,発症早期より予後予測を行い,それに基づく治療計画をたてることが必要とされている。しかし,くも膜下出血(以下,SAH)においては,症状や経過が多彩なこともあり,日常診療において利用し得る実用的な予後予測の方法はほとんどみられない。宮越らが,急性期SAH症例における退院時の日常生活活動(以下,ADL)に関してCARTを用いて予測している。それにはSAHの重症度と遷延する意識障害,年齢が関与すると結論付けられている。当院でも,医師の指示の元,集中治療室(以下,ICU)や急性期病棟にてSAH症例に対するリハビリの取り組みはなされており,早期ADL獲得と在院日数短縮を目標としている。また,脳卒中急性期担当スタッフによるミーティングや退院支援カンファレンスなどの取り組みも行っている。しかし,遷延する意識障害などの影響でADL獲得が遅れ,回復期を含めた転帰先が早期には定まらない症例が多い。八幡らは,急性期SAHでリハ方針が定まらない症例は3割を越えると報告しているが,症状の多彩な急性期SAH症例の在宅復帰に関する研究は少ない。そこで今回,急性期SAH症例において転帰が在宅となる要因を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,平成24年4月1日から平成25年8月31日までの間にくも膜下出血の診断で入院され,リハビリテーションの行われた39症例(男性9名),Hunt & Kosnik分類(以下,H&K分類)の1が8例,2が19例,3が7例,4が5例であった。入院中に死亡した症例は除外した。カルテより,後方視的に,年齢,発症前modified Rankin Scale(mRS),脳血管攣縮の有無と神経所見のあった脳梗塞の有無,離床期間,退院時Barthel index(以下,BI),転帰先(在宅,在宅外)を抽出した。離床とは,車椅子乗車30分以上可能であることを基準とした。また,転帰先は,退院時の転帰とし,当院回復期を経由した場合は,回復期病棟退院時の転帰とした。統計解析は,在宅復帰群と在宅以外群に分け,H&K分類と脳血管攣縮の有無は,χ2検定を用い,それ以外の項目に対してウィルコクソンの検定を行った。有意水準はp<0.05とし,統計処理にはR2.8.1を使用した。
【結果】
在宅復帰群は,31例(男性=7名),在宅以外群は8例(男性=2名)であった。在宅復帰群と在宅以外群では,年齢(在宅59±11,在宅外75±9.0歳),退院時BI(在宅90±21.6,在宅外16±16.2点),在院日数(在宅72±59.0,在宅外157±56.6日)で有意な差がみとめられた(すべてp<0.01)。また,在宅復帰群と在宅以外群での,H&K分類と脳血管攣縮の有無は統計学的な有意差はみとめられなかった。
【考察】
在宅復帰群と在宅以外群では,年齢・退院時BI・在院日数で有意差がみとめられた。脳梗塞・脳出血を含む脳卒中症例に対する先行研究では,在宅復帰に関係する項目として,BIやFunctional Independence Measure(以下,FIM),バランス機能,認知機能などが挙げられている。本研究では,在宅復帰群は,退院時に高いADLを獲得していることが示され,他研究を追認する結果となった。また,SAHを対象とした宮越らの報告によると,退院時のADLが自立するには若い年齢であることが示されており,本研究も同様の傾向を示した。一方で,在宅復帰に関係する項目として,SAHの重症度や脳血管攣縮,脳梗塞が影響すると予測したが,H&K分類や脳血管攣縮の有無,脳梗塞の合併は有意差がみとめられなかった。重症度は生命予後に関わるとされているが,転帰先に関係する項目として,影響は小さいと考えられる。また,脳梗塞を合併している症例では,梗塞部位によって症状の程度が異なるため,脳梗塞の有無のみでは在宅復帰に関係する可能性は低いと考える。今後は,機能評価を含めた在宅復帰の特徴を検討していく必要がある。本研究では,在宅復帰に関係する項目として,退院時BIと年齢が挙げられ,重症度や脳血管攣縮の有無は関係ないと推察された。
【理学療法学研究としての意義】
SAHの在宅復帰において,年齢と退院時ADLが重要な項目であり,重症度や脳血管攣縮の有無にとらわれず,ADL向上を目指す。
今後,高齢化が更に加速すると言われており,在宅での医療・介護が推進されている。そのため,入院期間の短縮および早期自宅退院が求められる医療情勢となっており,発症早期より予後予測を行い,それに基づく治療計画をたてることが必要とされている。しかし,くも膜下出血(以下,SAH)においては,症状や経過が多彩なこともあり,日常診療において利用し得る実用的な予後予測の方法はほとんどみられない。宮越らが,急性期SAH症例における退院時の日常生活活動(以下,ADL)に関してCARTを用いて予測している。それにはSAHの重症度と遷延する意識障害,年齢が関与すると結論付けられている。当院でも,医師の指示の元,集中治療室(以下,ICU)や急性期病棟にてSAH症例に対するリハビリの取り組みはなされており,早期ADL獲得と在院日数短縮を目標としている。また,脳卒中急性期担当スタッフによるミーティングや退院支援カンファレンスなどの取り組みも行っている。しかし,遷延する意識障害などの影響でADL獲得が遅れ,回復期を含めた転帰先が早期には定まらない症例が多い。八幡らは,急性期SAHでリハ方針が定まらない症例は3割を越えると報告しているが,症状の多彩な急性期SAH症例の在宅復帰に関する研究は少ない。そこで今回,急性期SAH症例において転帰が在宅となる要因を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,平成24年4月1日から平成25年8月31日までの間にくも膜下出血の診断で入院され,リハビリテーションの行われた39症例(男性9名),Hunt & Kosnik分類(以下,H&K分類)の1が8例,2が19例,3が7例,4が5例であった。入院中に死亡した症例は除外した。カルテより,後方視的に,年齢,発症前modified Rankin Scale(mRS),脳血管攣縮の有無と神経所見のあった脳梗塞の有無,離床期間,退院時Barthel index(以下,BI),転帰先(在宅,在宅外)を抽出した。離床とは,車椅子乗車30分以上可能であることを基準とした。また,転帰先は,退院時の転帰とし,当院回復期を経由した場合は,回復期病棟退院時の転帰とした。統計解析は,在宅復帰群と在宅以外群に分け,H&K分類と脳血管攣縮の有無は,χ2検定を用い,それ以外の項目に対してウィルコクソンの検定を行った。有意水準はp<0.05とし,統計処理にはR2.8.1を使用した。
【結果】
在宅復帰群は,31例(男性=7名),在宅以外群は8例(男性=2名)であった。在宅復帰群と在宅以外群では,年齢(在宅59±11,在宅外75±9.0歳),退院時BI(在宅90±21.6,在宅外16±16.2点),在院日数(在宅72±59.0,在宅外157±56.6日)で有意な差がみとめられた(すべてp<0.01)。また,在宅復帰群と在宅以外群での,H&K分類と脳血管攣縮の有無は統計学的な有意差はみとめられなかった。
【考察】
在宅復帰群と在宅以外群では,年齢・退院時BI・在院日数で有意差がみとめられた。脳梗塞・脳出血を含む脳卒中症例に対する先行研究では,在宅復帰に関係する項目として,BIやFunctional Independence Measure(以下,FIM),バランス機能,認知機能などが挙げられている。本研究では,在宅復帰群は,退院時に高いADLを獲得していることが示され,他研究を追認する結果となった。また,SAHを対象とした宮越らの報告によると,退院時のADLが自立するには若い年齢であることが示されており,本研究も同様の傾向を示した。一方で,在宅復帰に関係する項目として,SAHの重症度や脳血管攣縮,脳梗塞が影響すると予測したが,H&K分類や脳血管攣縮の有無,脳梗塞の合併は有意差がみとめられなかった。重症度は生命予後に関わるとされているが,転帰先に関係する項目として,影響は小さいと考えられる。また,脳梗塞を合併している症例では,梗塞部位によって症状の程度が異なるため,脳梗塞の有無のみでは在宅復帰に関係する可能性は低いと考える。今後は,機能評価を含めた在宅復帰の特徴を検討していく必要がある。本研究では,在宅復帰に関係する項目として,退院時BIと年齢が挙げられ,重症度や脳血管攣縮の有無は関係ないと推察された。
【理学療法学研究としての意義】
SAHの在宅復帰において,年齢と退院時ADLが重要な項目であり,重症度や脳血管攣縮の有無にとらわれず,ADL向上を目指す。