第50回日本理学療法学術大会

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予防理学療法4

2015年6月7日(日) 09:40 〜 10:40 ポスター会場 (展示ホール)

[P3-A-1064] 地域在住高齢者における体格指数と運動機能との関連

峯松亮1, 羽崎完2, 原納明博3, 岡本希4, 車谷典男4 (1.畿央大学健康科学部理学療法学科, 2.大阪電気通信大学医療福祉工学部理学療法学科, 3.阪奈中央病院整形外科, 4.奈良県立医科大学医学部地域健康医学教室)

キーワード:体格指数, 運動機能, 地域在住高齢者

【はじめに,目的】体格指数(BMI)は過体重,肥満を定義する指標の一つである。高齢者では,高BMI(過体重,肥満)は活動性の低下や制限を来す原因となることが示されており,生活習慣病とも深く関連しており,BMIが高くなると死亡率も高くなるとの報告もある。一方,低BMI(やせ)は骨折リスクや死亡率が高いとの報告があり,骨量や筋量が低下したいわゆる虚弱状態にあることが考えられる。このように,高齢者の死亡率,活動制限にはUカーブの関連が認められる。高齢者の健康を維持するためには,運動機能とともに健康的な体格を維持すること,またこれらの関連を把握することも重要と考えられる。そこで本研究では,BMIによる高齢者の運動機能の差を男女別に調査することを目的とした。
【方法】対象は藤原京スタディに参加した高齢者のうち,解析する運動機能測定データがすべてそろっている3549名(男性1754名,女性1795名,平均年齢72.5±5.2歳)とし,BMIを基準に3群(低BMI,<22;標準BMI,22≦,>25;高BMI,25≦)に分けた。運動機能測定項目は握力,膝伸展力,膝屈曲力,10m歩行時間(歩行時間),開眼片脚立位時間(OLST,最大60秒間),身長補正最大一歩幅(最大一歩幅)を測定した。男女別に検討し,BMI間の運動機能の差を一元配置分散分析および多重比較検定を用いて調べた。また,各運動機能とBMI,年齢との関連を重回帰分析にて調べた。P<0.05で有意差ありとした。
【結果】BMI間の運動機能の差を比較したところ,男性では標準BMI群と比して,低BMI群の握力,膝伸展力,膝屈曲力は有意に低かった。また,高BMI群の握力,膝伸展力,膝屈曲力は有意に高く,OLSTは有意に低かった。女性では標準BMI群と比して,低BMI群の握力,膝伸展力,膝屈曲力は有意に低く,OLSTは有意に高かった。また,高BMI群の歩行時間は有意に高く,OLST,最大一歩幅は有意に低かった。さらに標準BMI群と比して,低BMI群において男性では年齢は,女性では身長は有意に高かった。各運動機能と年齢,BMIとの関連をみたところ,男性,女性ともすべての運動機能は加齢により低下し,BMIが高くなると握力,膝伸展力,膝屈曲力は高くなり,歩行時間,OLST,最大一歩幅は低下する関連が認められた(男性,R2=0.161-0.208;女性,R2=0.114-0.242)。しかし,男性においてBMIは歩行時間と関連は認められなかった。
【考察】本研究では,男性,女性ともにBMIは身体機能と関連することが示された。また,加齢とともに身体能力は低下することが示された。BMI間の比較では男性,女性ともに握力,膝伸展力,膝屈曲力は標準BMIと比して,低BMI群は有意に低値を示しており,BMIは年齢調節後も低骨格筋量と強い関連があるとの報告もあり,低BMI群では骨格筋量が少ないことが推測される。また,筋厚と膝伸展筋力はBMIと相関するとの報告もあるが,男性,女性ともに高BMI群の3つの筋力は標準BMI群よりも高値を示したが,男性のみ有意であったため,標準BMI以上の高齢者の場合,男性の方がBIMと筋力との関連が強いと考えられた。一方,筋力以外の運動機能では,男性ではOLSTのみに,女性では歩行時間,OLST,一歩幅にBMI間に差が認められ,標準BMIと比して,高BMI群は有意に低下を示した。男女ともBMIが高い者は,両脚でも片脚でも重心動揺が大きい,足圧中心の速度は体重が増えると増加するとの報告もあり,高BMI群では片脚で体重を支持する,重心を移動する(最大一歩幅の動作)といった重心保持や移動を制御することが難しいことが考えられた。また,至適歩行では肥満者の立脚相時間は長くなるとの報告があるが,本研究では速歩での時間を測定したものの,歩行時間には立脚相の時間が関連している可能性が考えられた。以上のことから,BMIと身体機能とには,低BMI群では低筋力と,高BMI群では運動動作との関連が強く,特に後者は女性で著明であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】理学療法では理学療法現場でも体重のコントロールが必要な疾患は多く見受けられる。また,高齢者では低BMI,高BMIとも虚弱化や活動性低下につながると考えられるため,BMIと運動機能との関連を調査することにより,BMIの高低および運動機能項目の面からこれらの予防や改善を効率的に実施できると考えられる。