[P3-A-1070] Calf Raiseは簡易バランススケールツールになり得るか?
Calf RaiseとTUGの関連性についての検討
キーワード:Calf Raise, TUG, 地域高齢者
【はじめに,目的】
Timed Up & Goテスト(以下:TUG)は運動器不安定症の指標の一つであり,その指標としての信頼性が高く,下肢筋力,バランス,歩行能力,易転倒性といった日常生活機能との関連性が高いことが示されている。しかし,TUGは3mという歩行距離の設定や歩行時間測定が必要であることから,地域高齢者が自ら簡便に行えるテストではなく,生活場面では行われていないのが現状である。一方,Calf Raiseは特別な準備を必要としない簡便な動作であり,臨床場面においても多く行われている。しかし転倒高齢者においては,Calf Raiseが困難な例が多数であると感じられた。今回,地域高齢者49人を対象に,Calf RaiseとTUGの関連性を検証し,Calf Raiseがバランススケールツールとして有用か検討をした。
【方法】
対象は当院の転倒予防教室参加者のうち,既往歴に脳血管疾患,整形外科的手術の既往がないもの49例(男性16例,女性33例,平均年齢75.49±8.16歳)とした。本研究の評価項目は,Calf RaiseとTUGとした。Calf Raiseについては,Danielsらの徒手筋力検査法の足関節底屈テストに準じた方法にて,片脚にて完全底屈が可能であった群をCalf Raise可能群(以下:CR可群)・片脚にて完全底屈が不可能であった群をCalf Raise不可能群(以下:CR不可群)とし,2群に分類した。当院での臨床場面において,Calf Raiseは転倒高齢者に困難な例が多いことから,動作の可否に着目し,片脚での完全底屈が可能か不可能かを判定基準にした。TUGについては,Podsiadloらの方法に準じて行い,歩行スピードは『快適で安全な速さ』と指示とし時間計測を行った。CR可群とCR不可群でTUGの2群間比較を行った。統計処理は,Mann WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%未満とした。統計ソフトは,SPSS Ver20を用いた。
【結果】
CR可群は30例(平均年齢74.6±8.43歳),CR不可群は19例(平均年齢76.89±7.72歳)であった。TUGについてはCR可群(8.83±2.24秒)がCR不可群(10.68±2.8秒)に対し有意に短い値(P<0.01)を示した。
【考察】
今回の結果より片脚CR可群は,片脚CR不可群に比べTUGの値が有意に短いことが確認された。Calf Raiseとは,ウェイトをかけた状態で足関節を底屈させて爪先立ちになることであり,下腿三頭筋の筋機能評価の一つとしても利用される。このCalf Raiseは複数の機能によって構成される。Neumannによると,Calf Raiseは中足趾節間関節での過伸展による巻き上げ効果によって足底筋膜を引っ張り緊張させ,この活動は内在筋による内側縦アーチの支持と前足部の堅さ保持を助け,それによって足部が体重負荷を受け入れることを可能とするとしている。さらに長腓骨筋と後脛骨筋が横アーチや内側縦アーチを支持する機能的な「スリング」を形成し,Calf Raiseに寄与するとされる。これらの複雑な機能を有し,さらに第2のテコのという力学的有利性を得た筋骨格システムでCalf Raiseは構成される。Calf Raiseの破綻は,中足趾節関節の可動性低下,内在筋機能低下に伴う内側縦アーチの低下,クロスサポートメカニズムの破綻,下腿三頭筋の筋力低下などさまざまな機能低下が推測される。これに伴い,前足部重心移動が破綻し,後足部依存の重心偏移を招くことが考えられ,支持基底面内での重心移動距離も短くなることが考えられる。これがバランス機能低下を招き,移動能力低下の大きな要因となると考えられる。先行研究では,バランス機能との関連性を足趾機能やアーチ形成,下肢筋など焦点化した研究が行われているが,限局した問題点とはならず十分なエビデンスを確立するには至っていない。複雑な機能を有したCalf Raiseが可能な例はこれらの機能破綻が少ないと考え,TUGも良好な結果が得られるという仮説を立て今回の検証を行ったところ,Calf Raiseの可否が,TUGの結果に有意に反映することから,Calf Raiseがバランススケールの簡易ツールとして有用であることが示唆された。
Timed Up & Goテスト(以下:TUG)は運動器不安定症の指標の一つであり,その指標としての信頼性が高く,下肢筋力,バランス,歩行能力,易転倒性といった日常生活機能との関連性が高いことが示されている。しかし,TUGは3mという歩行距離の設定や歩行時間測定が必要であることから,地域高齢者が自ら簡便に行えるテストではなく,生活場面では行われていないのが現状である。一方,Calf Raiseは特別な準備を必要としない簡便な動作であり,臨床場面においても多く行われている。しかし転倒高齢者においては,Calf Raiseが困難な例が多数であると感じられた。今回,地域高齢者49人を対象に,Calf RaiseとTUGの関連性を検証し,Calf Raiseがバランススケールツールとして有用か検討をした。
【方法】
対象は当院の転倒予防教室参加者のうち,既往歴に脳血管疾患,整形外科的手術の既往がないもの49例(男性16例,女性33例,平均年齢75.49±8.16歳)とした。本研究の評価項目は,Calf RaiseとTUGとした。Calf Raiseについては,Danielsらの徒手筋力検査法の足関節底屈テストに準じた方法にて,片脚にて完全底屈が可能であった群をCalf Raise可能群(以下:CR可群)・片脚にて完全底屈が不可能であった群をCalf Raise不可能群(以下:CR不可群)とし,2群に分類した。当院での臨床場面において,Calf Raiseは転倒高齢者に困難な例が多いことから,動作の可否に着目し,片脚での完全底屈が可能か不可能かを判定基準にした。TUGについては,Podsiadloらの方法に準じて行い,歩行スピードは『快適で安全な速さ』と指示とし時間計測を行った。CR可群とCR不可群でTUGの2群間比較を行った。統計処理は,Mann WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%未満とした。統計ソフトは,SPSS Ver20を用いた。
【結果】
CR可群は30例(平均年齢74.6±8.43歳),CR不可群は19例(平均年齢76.89±7.72歳)であった。TUGについてはCR可群(8.83±2.24秒)がCR不可群(10.68±2.8秒)に対し有意に短い値(P<0.01)を示した。
【考察】
今回の結果より片脚CR可群は,片脚CR不可群に比べTUGの値が有意に短いことが確認された。Calf Raiseとは,ウェイトをかけた状態で足関節を底屈させて爪先立ちになることであり,下腿三頭筋の筋機能評価の一つとしても利用される。このCalf Raiseは複数の機能によって構成される。Neumannによると,Calf Raiseは中足趾節間関節での過伸展による巻き上げ効果によって足底筋膜を引っ張り緊張させ,この活動は内在筋による内側縦アーチの支持と前足部の堅さ保持を助け,それによって足部が体重負荷を受け入れることを可能とするとしている。さらに長腓骨筋と後脛骨筋が横アーチや内側縦アーチを支持する機能的な「スリング」を形成し,Calf Raiseに寄与するとされる。これらの複雑な機能を有し,さらに第2のテコのという力学的有利性を得た筋骨格システムでCalf Raiseは構成される。Calf Raiseの破綻は,中足趾節関節の可動性低下,内在筋機能低下に伴う内側縦アーチの低下,クロスサポートメカニズムの破綻,下腿三頭筋の筋力低下などさまざまな機能低下が推測される。これに伴い,前足部重心移動が破綻し,後足部依存の重心偏移を招くことが考えられ,支持基底面内での重心移動距離も短くなることが考えられる。これがバランス機能低下を招き,移動能力低下の大きな要因となると考えられる。先行研究では,バランス機能との関連性を足趾機能やアーチ形成,下肢筋など焦点化した研究が行われているが,限局した問題点とはならず十分なエビデンスを確立するには至っていない。複雑な機能を有したCalf Raiseが可能な例はこれらの機能破綻が少ないと考え,TUGも良好な結果が得られるという仮説を立て今回の検証を行ったところ,Calf Raiseの可否が,TUGの結果に有意に反映することから,Calf Raiseがバランススケールの簡易ツールとして有用であることが示唆された。