[P3-A-1073] 地域在住介護保険認定高齢者の転倒発生に対してステップ検査は予測因子となりうるか
Keywords:地域在住高齢者, 転倒, 運動機能
【はじめに,目的】
近年高齢者の増加が問題になっている。今後も増加が予想され,それに伴い医療費の増加も懸念されている。中でも転倒による医療介護費が全医療介護費用の5%に当たる。加齢による運動機能の低下と転倒との関連が報告されており,転倒防止が急務とされる。転倒の要因は多数報告されている。中でもステップ反応と転倒との関連が知られてはいるものの,研究は少なく,一定の見解は得られていない。また,ステップ反応の検査には高価な機械を要するため,臨床現場で用いるには容易ではない。現在,臨床現場で使用されているステップ検査にはFour Square Step Test(FSST)や,The Step Test,Rapid Step Test等が知られており,多少の見解は得られている。今回はFSSTを使用して,ステップ検査と転倒発生との関連を調べ,FSSTが転倒発生に対して予測能力を持つかいなかを検討する。
【方法】
対象は,平成26年2月~7月までの期間に当通所リハビリテーションを利用しており,屋内歩行自立している65歳以上の地域在住高齢者47名(男性23名,女性24名)。平均年齢は78.0±7.2歳(65-94),疾患の内訳は中枢神経疾患24名・整形疾患15名・内部障害8名,介護度は要支援者14名,要介護者33名(うち要介護1が21名)であった。除外基準は重度な認知症を持つもの,身体状況が不安定なものとした。調査はアンケートと理学療法評価を横断的に行い,その後1年間で転倒が発生するかどうかを追跡調査している。転倒は「自分の意志からではなく,地面またはより低い場所に膝や手が接触すること」とした。評価項目は,Body Mass Index(BMI),サルコペニア簡易評価(SMI)(真田ら,2012),握力,膝伸展筋力(Nm/kg),Four Square Step Test(FSST),5m歩行速度,開眼片脚立位保持時間,Timed Up and Go Test(TUG),Modified Gait Abnormality Ratig Scale(GARS-M),Dynamic Gait index(DGI),Trail Making Test-Aを評価した。GARS-MとDGIはビデオにて撮影し,PCにて視聴し評価を行った。アンケート調査は転倒歴,自己効力感(FES),虚弱指標(Fried基準),自己健康観,視力,5項目版老人性うつ尺度(GDS)を横断的に調査した。また,Four Square Step Test(FSST)の信頼性を確認するために,4名の被験者を対象に各々3回の施行にて検査者内再現性検討を行った。統計学的検定は,転倒者と非転倒者の差異,アンケート・各理学療法評価の関連を調べるために,統計ソフトSPSSver22.0を用いて,級内相関係数(ICC(1,1)),Spearmanの相関分析,Mann-Whitneyの検定,ROC曲線の作成を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
FSSTのICC(1,1)は0.983であった。FSSTはTUG,GARS-M,DGI,歩行速度と相関関係(p<0.01)を示した。平成26年10月末日までの時点で転倒者は8名であった。FSSTは転倒者と非転倒者で有意な差は見られなかった。感度・特異度を検出するROC曲線を求めたところ,GARS(p<0.05)であった。
【考察】
FSSTの信頼性は良好であった。FSSTはTUG,GARS-M,DGIと相関関係を示しており,バランス能力の評価としての能力を持つと同時に,歩行速度とも高い相関関係を持つことから,速度に依存した課題でもあることが考えられた。現段階では転倒者と非転倒者におけるFSSTの差異は検出されていない。一方,GARS-Mを指標とする識別が良好な結果を示しているが,今後も引き続き調査を行い,更なる分析を続ける。
【理学療法学研究としての意義】
地域在住で疾患を抱えた虚弱な高齢者の転倒リスクは高いと思われる。特に,何とか歩行は可能であるという状況下での転倒発生に関する報告は少ない。そのような高齢者の早期の転倒を予測する評価として,FSSTが有用であるのか,またどのような評価が早期の転倒を識別できるのかを知ることで,早期の転倒対策や予防において意義のあるマネジメントの一助となる可能性がある。
近年高齢者の増加が問題になっている。今後も増加が予想され,それに伴い医療費の増加も懸念されている。中でも転倒による医療介護費が全医療介護費用の5%に当たる。加齢による運動機能の低下と転倒との関連が報告されており,転倒防止が急務とされる。転倒の要因は多数報告されている。中でもステップ反応と転倒との関連が知られてはいるものの,研究は少なく,一定の見解は得られていない。また,ステップ反応の検査には高価な機械を要するため,臨床現場で用いるには容易ではない。現在,臨床現場で使用されているステップ検査にはFour Square Step Test(FSST)や,The Step Test,Rapid Step Test等が知られており,多少の見解は得られている。今回はFSSTを使用して,ステップ検査と転倒発生との関連を調べ,FSSTが転倒発生に対して予測能力を持つかいなかを検討する。
【方法】
対象は,平成26年2月~7月までの期間に当通所リハビリテーションを利用しており,屋内歩行自立している65歳以上の地域在住高齢者47名(男性23名,女性24名)。平均年齢は78.0±7.2歳(65-94),疾患の内訳は中枢神経疾患24名・整形疾患15名・内部障害8名,介護度は要支援者14名,要介護者33名(うち要介護1が21名)であった。除外基準は重度な認知症を持つもの,身体状況が不安定なものとした。調査はアンケートと理学療法評価を横断的に行い,その後1年間で転倒が発生するかどうかを追跡調査している。転倒は「自分の意志からではなく,地面またはより低い場所に膝や手が接触すること」とした。評価項目は,Body Mass Index(BMI),サルコペニア簡易評価(SMI)(真田ら,2012),握力,膝伸展筋力(Nm/kg),Four Square Step Test(FSST),5m歩行速度,開眼片脚立位保持時間,Timed Up and Go Test(TUG),Modified Gait Abnormality Ratig Scale(GARS-M),Dynamic Gait index(DGI),Trail Making Test-Aを評価した。GARS-MとDGIはビデオにて撮影し,PCにて視聴し評価を行った。アンケート調査は転倒歴,自己効力感(FES),虚弱指標(Fried基準),自己健康観,視力,5項目版老人性うつ尺度(GDS)を横断的に調査した。また,Four Square Step Test(FSST)の信頼性を確認するために,4名の被験者を対象に各々3回の施行にて検査者内再現性検討を行った。統計学的検定は,転倒者と非転倒者の差異,アンケート・各理学療法評価の関連を調べるために,統計ソフトSPSSver22.0を用いて,級内相関係数(ICC(1,1)),Spearmanの相関分析,Mann-Whitneyの検定,ROC曲線の作成を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
FSSTのICC(1,1)は0.983であった。FSSTはTUG,GARS-M,DGI,歩行速度と相関関係(p<0.01)を示した。平成26年10月末日までの時点で転倒者は8名であった。FSSTは転倒者と非転倒者で有意な差は見られなかった。感度・特異度を検出するROC曲線を求めたところ,GARS(p<0.05)であった。
【考察】
FSSTの信頼性は良好であった。FSSTはTUG,GARS-M,DGIと相関関係を示しており,バランス能力の評価としての能力を持つと同時に,歩行速度とも高い相関関係を持つことから,速度に依存した課題でもあることが考えられた。現段階では転倒者と非転倒者におけるFSSTの差異は検出されていない。一方,GARS-Mを指標とする識別が良好な結果を示しているが,今後も引き続き調査を行い,更なる分析を続ける。
【理学療法学研究としての意義】
地域在住で疾患を抱えた虚弱な高齢者の転倒リスクは高いと思われる。特に,何とか歩行は可能であるという状況下での転倒発生に関する報告は少ない。そのような高齢者の早期の転倒を予測する評価として,FSSTが有用であるのか,またどのような評価が早期の転倒を識別できるのかを知ることで,早期の転倒対策や予防において意義のあるマネジメントの一助となる可能性がある。