[P3-A-1079] 地域在住虚弱高齢者における二重課題下歩行トレーニングが身体機能・身体能力に及ぼす効果の検証
キーワード:地域在住高齢者, 二重課題, 理学療法
【はじめに,目的】
超高齢化社会に突入した我が国において,高齢者のQOL維持,増進,健康寿命の延長を目的とした効果的な介護予防プログラムの開発などが必要視されている。そんな中で,理学療法士が活躍する場は益々,増加傾向にある。理学療法士とは基本動作能力の改善を図る専門家であるが,高齢者の在宅復帰後の生活に向けた理学療法プログラムが施行されているケースは未だ多くはない。在宅復帰後は段差を確認する,会話をするといった二重した課題を遂行しての生活場面が多い。高齢者はこれらの二重課題遂行能力が低下することで,転倒リスクが増加するとされている。二重課題とは主課題と副課題からなり,二つの課題を同時にこなすというものである。そのため,対象者は日常生活の中で二つの課題への注意を適切に配分しながら課題を遂行することが求められる。近年,二重課題下での歩行分析に関して検証された研究は数多くみられるが,二重課題下歩行トレーニング(以下DT)が身体機能,身体能力に及ぼす長期的な介入効果の報告は少ない。本研究の目的は,虚弱高齢者に対するDT効果を身体機能,身体能力,ADLの6ヶ月間の変化から縦断的に検証することである。
【方法】
研究デザインは無作為化対照試験とし,研究セッティングは介護老人保健施設リハビリテーション室とした。調査期間は平成25年4月から平成26年10月とした。対象者は,通所リハビリテーション利用中の虚弱高齢者30名(男性11名,女性19名,平均年齢)であった。対象者の要介護度は,要支援1が1名,要支援2が5名,要介護1が13名,要介護2が10名,要介護3が1名であった。なお,本研究の除外対象は,認知症を有するもの者,明らかな運動麻痺を有する者,著明な有痛性関節疾患を有する者,数唱を順唱,逆唱できない者,本研究に同意が得られない者とした。測定指標は,Functional Independence Measure(FIM),老研式活動能力指標,長座位体前屈,上体起こし回数,握力,6分間歩行距離(6MWD),障害物歩行時間,大腿四頭筋力体重比(%QF),Time up go時間(TUG),Functional Reach距離(FR),最速歩行時間,片脚立位時間,過去6ヵ月間の転倒回数とした。研究のプロトコールは,「通常の理学療法」のみを実施した群を対照群(n=15),「通常の理学療法」に加え,DTを追加した群を介入群(n=15)とした。評価時期は,開始時と6か月後とした。「通常の理学療法」は,関節可動域トレーニング,筋力トレーニング,運動耐用能トレーニング,日常動作トレーニングを中心に実施した。DTの種目は,2週間ごとに課題を変更し実施した。更に,介入期間後(6か月後)に転倒回数を聴取した。統計学的分析方法は,対照群,介入群の6か月間の変化を分割プロットデザインによる共分散分析にて主効果の有無,交互作用の有無を解析した。その後の検定は,Bonferroni検定を用いて分析した。また,対照群と介入群の転倒回数の差異は,Levenの等分散性の検定後,Studentのt検定,または,Welchのt検定を用いて分析した。なお,統計学的有意水準は5%とし,統計解析ソフトはSPSS ver21.0を使用した。
【結果】
FIM(合計)(p=0.031),FIM(運動)(p=0.016),長座位体前屈(p<0.001),障害物歩行(p=0.014),最速歩行時間(p<0.001)は有意な期間の主効果は認めたものの,有意な交互作用は認めなかった。MMSE,FIM(認知),老研式活動能力指標,上体起こし回数,握力,6MWD,%QF,TUG,FR,片脚立位時間は有意な期間の主効果,交互作用共に認めなかった。対照群と介入群の転倒回数は,両群に有意な期間の差は認められなかった。
【考察】
FIM(合計),FIM(運動),長座位体前屈,障害物歩行,最速歩行時間は有意な期間の主効果を認めており,ADL,柔軟性,動的バランス,瞬発的歩行能力の改善にはPTプログラムは有効かもしれない。しかし,MMSE,FIM(認知),老研式活動能力指標,上体起こし回数,握力,6MWD,%QF,TUG,FR,片脚立位時間はPTプログラムが有効でない可能性が示唆された。転倒回数については6ヶ月間という短い期間であったため有意な差が認められなかったと推測される。
【理学療法学研究としての意義】
日常生活動作は複数の動作を同時に行うことで成立している。今回,DTは身体機能,身体能力の改善が期待できることが示唆された。また,同時に認知機能の改善を図ることも日常生活動作の改善に有用であることも示唆された。
超高齢化社会に突入した我が国において,高齢者のQOL維持,増進,健康寿命の延長を目的とした効果的な介護予防プログラムの開発などが必要視されている。そんな中で,理学療法士が活躍する場は益々,増加傾向にある。理学療法士とは基本動作能力の改善を図る専門家であるが,高齢者の在宅復帰後の生活に向けた理学療法プログラムが施行されているケースは未だ多くはない。在宅復帰後は段差を確認する,会話をするといった二重した課題を遂行しての生活場面が多い。高齢者はこれらの二重課題遂行能力が低下することで,転倒リスクが増加するとされている。二重課題とは主課題と副課題からなり,二つの課題を同時にこなすというものである。そのため,対象者は日常生活の中で二つの課題への注意を適切に配分しながら課題を遂行することが求められる。近年,二重課題下での歩行分析に関して検証された研究は数多くみられるが,二重課題下歩行トレーニング(以下DT)が身体機能,身体能力に及ぼす長期的な介入効果の報告は少ない。本研究の目的は,虚弱高齢者に対するDT効果を身体機能,身体能力,ADLの6ヶ月間の変化から縦断的に検証することである。
【方法】
研究デザインは無作為化対照試験とし,研究セッティングは介護老人保健施設リハビリテーション室とした。調査期間は平成25年4月から平成26年10月とした。対象者は,通所リハビリテーション利用中の虚弱高齢者30名(男性11名,女性19名,平均年齢)であった。対象者の要介護度は,要支援1が1名,要支援2が5名,要介護1が13名,要介護2が10名,要介護3が1名であった。なお,本研究の除外対象は,認知症を有するもの者,明らかな運動麻痺を有する者,著明な有痛性関節疾患を有する者,数唱を順唱,逆唱できない者,本研究に同意が得られない者とした。測定指標は,Functional Independence Measure(FIM),老研式活動能力指標,長座位体前屈,上体起こし回数,握力,6分間歩行距離(6MWD),障害物歩行時間,大腿四頭筋力体重比(%QF),Time up go時間(TUG),Functional Reach距離(FR),最速歩行時間,片脚立位時間,過去6ヵ月間の転倒回数とした。研究のプロトコールは,「通常の理学療法」のみを実施した群を対照群(n=15),「通常の理学療法」に加え,DTを追加した群を介入群(n=15)とした。評価時期は,開始時と6か月後とした。「通常の理学療法」は,関節可動域トレーニング,筋力トレーニング,運動耐用能トレーニング,日常動作トレーニングを中心に実施した。DTの種目は,2週間ごとに課題を変更し実施した。更に,介入期間後(6か月後)に転倒回数を聴取した。統計学的分析方法は,対照群,介入群の6か月間の変化を分割プロットデザインによる共分散分析にて主効果の有無,交互作用の有無を解析した。その後の検定は,Bonferroni検定を用いて分析した。また,対照群と介入群の転倒回数の差異は,Levenの等分散性の検定後,Studentのt検定,または,Welchのt検定を用いて分析した。なお,統計学的有意水準は5%とし,統計解析ソフトはSPSS ver21.0を使用した。
【結果】
FIM(合計)(p=0.031),FIM(運動)(p=0.016),長座位体前屈(p<0.001),障害物歩行(p=0.014),最速歩行時間(p<0.001)は有意な期間の主効果は認めたものの,有意な交互作用は認めなかった。MMSE,FIM(認知),老研式活動能力指標,上体起こし回数,握力,6MWD,%QF,TUG,FR,片脚立位時間は有意な期間の主効果,交互作用共に認めなかった。対照群と介入群の転倒回数は,両群に有意な期間の差は認められなかった。
【考察】
FIM(合計),FIM(運動),長座位体前屈,障害物歩行,最速歩行時間は有意な期間の主効果を認めており,ADL,柔軟性,動的バランス,瞬発的歩行能力の改善にはPTプログラムは有効かもしれない。しかし,MMSE,FIM(認知),老研式活動能力指標,上体起こし回数,握力,6MWD,%QF,TUG,FR,片脚立位時間はPTプログラムが有効でない可能性が示唆された。転倒回数については6ヶ月間という短い期間であったため有意な差が認められなかったと推測される。
【理学療法学研究としての意義】
日常生活動作は複数の動作を同時に行うことで成立している。今回,DTは身体機能,身体能力の改善が期待できることが示唆された。また,同時に認知機能の改善を図ることも日常生活動作の改善に有用であることも示唆された。