第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

ポスター3

予防理学療法6

2015年6月7日(日) 09:40 〜 10:40 ポスター会場 (展示ホール)

[P3-A-1088] 介護予防教室の効果検証について

宇都宮祐子, 西村浩幸, 古賀理恵, 佐々木健太郎 (介護老人保健施設アルテンハイムヨコクラ)

キーワード:介護予防, 特定高齢者, 二次予防

【はじめに,目的】
平成19年に当施設の所在するみやま市でも介護予防事業が導入され,当施設でも市の委託事業として介護予防教室:元気もりもり教室(以下,教室)が開始された。
今回,過去に開催した教室参加者について,教室開始時と終了時の身体機能に関する比較検討を行ったので報告する。3ヶ月間の教室での効果や弱点を把握し,内容の見直し・改善を行っていくことを目的とした。
【方法】
平成19年10月から平成26年3月までの7年間に当施設教室全参加者383名のうち,データとして成立する300名を対象とした。対象は62~94歳の男性85名,女性215名,平均年齢76.6±5.9歳である。
体力測定項目・測定方法が変化した平成24年度を境に平成19~23年度と平成24~25年度に分け,開始時と終了時の体力測定結果を比較した。また,終了時にアンケート調査を行い,生活面での変化等を分析した。
解析方法は,運動介入前後で各項目に対してStudentの対応のあるt検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
1,平成19~23年度
運動介入前後で,Functional Reach Test(以下,FR),長坐位体前屈,Timed Up & Go Test(以下,TUG)に有意差がみられた。改善人数は,FR 71%,長坐位体前屈68%,TUG 79%,開眼片足立ち53%,二分間足踏み66%と半数以上に改善がみられた。握力は46%と約半数に改善がみられた。改善値は全項目において0~5の変化が多くみられた。
2,平成24~25年度
運動介入前後で,FR,5m通常歩行,5m最大歩行,TUG,開眼片足立ちに有意差がみられた。改善人数は,FR 66%,長坐位体前屈60%,TUG 63%,開眼片足立ち55%,握力51%,5m最大歩行51%と半数以上に改善がみられた。5m通常歩行は47%と約半数に改善がみられた。
3,アンケート
体の動きが良くなった65%,歩きやすくなった36%,転び難くなった27%,歩いて息切れをしなくなった24%,便通が良くなった23%,痛みや痺れが減った22%,尿もれがなくなった12%,その他7%,実感なし4%。
【考察】
今回,3ヶ月間(12回)実施された教室の開始時と終了時における身体機能の比較検討を行い,平成19~23年度実施群では身体測定6項目中3項目,平成24~25年度実施群では7項目中5項目で有意に改善がみられた。男女の比較,年代別の比較,さらに特定高齢者チェックリストのうち運動の項目に3/5以上チェックがついた群と2/5以下の群との変化値の有意差は認められなかった。また,独自のアンケート結果から,主観的に生活動作の変化を感じる者や,反対に実感なしの者もおり,自覚的な感想には個人差が大きいと感じた。
歩行やバランス能力の改善が認められるのに対して,全身の筋力の指標である握力の改善は有意に認められなかった。今回の教室では,筋力の増強でなく,身体を動かす機会が増加したことや,不活動筋の活性化によるもの,反復運動により動作の改善が認められたのではないかと考える。軽い負荷(Borg Scale11)で行ったことにより,運動を無理なく継続することができ,身体機能の維持・改善を認めることができた。一方,18~37%の割合(人数)で減退を認める項目もあった。原因として,評価当日の体調や,測定者が複数であった為に測定方法が統一できていなかったことが考えられる。
先行研究ではより多くの項目で有意差を認められるものが多数あった。より効果的なプログラムを立案する為,教室の効果検証を行っていく必要がある。そして,本人へ結果のフィードバックや主観的な身体機能の変化を感じてもらうことにより,意欲の向上がみられ,運動の継続を行うことができると考える。その為にも,自主運動の指導や長期的に介入できるようなサービスの受け皿が必要であると考える。今後の取り組みとして,アンケートだけでなく,SF36によるQOL評価や,日常生活機能評価等を取り入れ,教室に参加することでの日常生活での変化をみていきたい。
【理学療法学研究としての意義】
健康寿命日本一を目指すみやま市において,身体機能低下による要介護者の発生をくい止めるのは喫緊の問題である。今回の介護予防教室の効果判定を行う事で,より精度の高い運動メニューの実施や教室の運営に効果があると確信する。