[P3-A-1102] 装具外来によるフォローアップにおいて見えてきた課題
キーワード:装具, 再作製, 修理
【はじめに,目的】
脳卒中ガイドラインにおいて歩行改善のために短下肢装具を用いることが進められている。当院でも脳卒中患者に対して,治療用及び更生用装具の処方が積極的に行われている。生活期において,更生用装具は生活を送るうえで重要な要素であると考える。平成25年6月よりリハビリテーション医,理学療法士,義肢装具士,メディカルソーシャルワーカー(以下MSW)が介入し,生活期における装具の相談・作製・修理などのフォローアップを目的とした装具外来を実施している。今回,当院で得た生活期における装具外来のフォローアップから見えてきた課題を報告する。
【対象と方法】
対象は平成25年6月~平成26年6月までの期間に当院装具外来を受診された40例(男性21名,女性19名,平均年齢64.7±11.1歳)を対象とした。装具予約表,診療記録より①装具の有無②装具外来での対応(新規作製,再作製,修理など)③装具作製年数④相談者⑤耐用年数の理解について後方視的調査を行った。
【結果】
装具の有無については,既存の装具を所有していたのは37例,新規作製が3例であった。対応としては,再作製が16例(両側支柱付短下肢装具への変更3例,継手の変更3例,プラスチック短下肢装具への変更10例),修理が21例(ベルクロ交換13例,ソール張替6例,継手修理4例,幅広げ3例,その他4例)であった。また再作製に至った理由として,装具劣化・破損2例,身体機能低下10例,身体機能向上1例,希望の形状への変更3例であった。また,再作製になった16例の前回処方からの平均経過は,1514±835日であり,三年未満が6例,三年以上が10例であった。修理においては作製からの平均使用期間1154±1167日であり,一年以内の修理が7例であった。相談依頼者では,本人が11例,家族が18例,医療従事者が11例であった。耐用年数に対する理解があった者は,2例であった。
【考察】
再作製・修理までの期間は,個人差が多いことがわかった。しかし,再作製では,耐用年数の三年以上の例が多く,一年以内の修理では少数ではあるが7例見られた。一年以内の修理の件数からも作製後から定期的なフォローアップが必要と考えられる。再作製の要因には,身体機能の低下によるものが多くの割合を占め,身体機能と既存の装具の不適合が生じ,再作製が必要であった。その要因は,浮腫や筋緊張亢進によるものが多かった。Sommerfeld DKらは,筋緊張は一年以内に亢進する割合が38%と示している。Lanceの定義においても,脳血管障害による片麻痺患者に痙縮が生じると考えられている。生活期に移行し筋緊張亢進,リハビリの時間減少,活動量低下により麻痺側下肢に浮腫が生じ,装具の不適合が負の連鎖を引き起こしていると考えられる。石神らは,プラスチック装具の構造から起きる問題点として,下腿での周囲性圧迫,足部プラスチックによる靴内圧の上昇で,浮腫が強くなり靴や装具内での圧を上昇させて,褥創を作りやすい状態になることを報告している。修理においては,ベルクロやソールなど消耗部の交換が多いが,幅広げやインソールなど浮腫,筋緊張に対応した修理もみられた。また相談依頼者は,本人,家族からが多かったが,耐用年数の理解は2例と乏しかった。大西らの調査においても耐用年数の理解は15%と低いことが示されている。再作製時の制度の利用について,MSWの介入が効果的であり,円滑な再作製へと繋がっていたと考える。また相談の医療従事者は,当院医師や関連老健施設からであり,法人外からの相談はなかった。そのため,ケアマネージャー(以下CM)への装具についての指導を実施,また装具外来の周知が必要である。また,大西らの調査によると装具装着による生活改善を認めた者83%,変化無し17%と,生活期において装具は非常に重要な役割を担っている。その装具を適切にかつ効果的に使用するためには,装具外来を中心とした連携の構築し,定期的なフォローアップが必要である。
【理学療法学研究としての意義】
今回の装具外来のフォローアップ時の調査により,生活期における装具の不適合が生じていることや,その対応のために装具外来での再作製・修理の必要性が示された。また,今後の課題として,CMなどを通じて生活期におけるフォローアップ・連携を進めてゆき,窓口の拡大が必要であることが挙げられた。
脳卒中ガイドラインにおいて歩行改善のために短下肢装具を用いることが進められている。当院でも脳卒中患者に対して,治療用及び更生用装具の処方が積極的に行われている。生活期において,更生用装具は生活を送るうえで重要な要素であると考える。平成25年6月よりリハビリテーション医,理学療法士,義肢装具士,メディカルソーシャルワーカー(以下MSW)が介入し,生活期における装具の相談・作製・修理などのフォローアップを目的とした装具外来を実施している。今回,当院で得た生活期における装具外来のフォローアップから見えてきた課題を報告する。
【対象と方法】
対象は平成25年6月~平成26年6月までの期間に当院装具外来を受診された40例(男性21名,女性19名,平均年齢64.7±11.1歳)を対象とした。装具予約表,診療記録より①装具の有無②装具外来での対応(新規作製,再作製,修理など)③装具作製年数④相談者⑤耐用年数の理解について後方視的調査を行った。
【結果】
装具の有無については,既存の装具を所有していたのは37例,新規作製が3例であった。対応としては,再作製が16例(両側支柱付短下肢装具への変更3例,継手の変更3例,プラスチック短下肢装具への変更10例),修理が21例(ベルクロ交換13例,ソール張替6例,継手修理4例,幅広げ3例,その他4例)であった。また再作製に至った理由として,装具劣化・破損2例,身体機能低下10例,身体機能向上1例,希望の形状への変更3例であった。また,再作製になった16例の前回処方からの平均経過は,1514±835日であり,三年未満が6例,三年以上が10例であった。修理においては作製からの平均使用期間1154±1167日であり,一年以内の修理が7例であった。相談依頼者では,本人が11例,家族が18例,医療従事者が11例であった。耐用年数に対する理解があった者は,2例であった。
【考察】
再作製・修理までの期間は,個人差が多いことがわかった。しかし,再作製では,耐用年数の三年以上の例が多く,一年以内の修理では少数ではあるが7例見られた。一年以内の修理の件数からも作製後から定期的なフォローアップが必要と考えられる。再作製の要因には,身体機能の低下によるものが多くの割合を占め,身体機能と既存の装具の不適合が生じ,再作製が必要であった。その要因は,浮腫や筋緊張亢進によるものが多かった。Sommerfeld DKらは,筋緊張は一年以内に亢進する割合が38%と示している。Lanceの定義においても,脳血管障害による片麻痺患者に痙縮が生じると考えられている。生活期に移行し筋緊張亢進,リハビリの時間減少,活動量低下により麻痺側下肢に浮腫が生じ,装具の不適合が負の連鎖を引き起こしていると考えられる。石神らは,プラスチック装具の構造から起きる問題点として,下腿での周囲性圧迫,足部プラスチックによる靴内圧の上昇で,浮腫が強くなり靴や装具内での圧を上昇させて,褥創を作りやすい状態になることを報告している。修理においては,ベルクロやソールなど消耗部の交換が多いが,幅広げやインソールなど浮腫,筋緊張に対応した修理もみられた。また相談依頼者は,本人,家族からが多かったが,耐用年数の理解は2例と乏しかった。大西らの調査においても耐用年数の理解は15%と低いことが示されている。再作製時の制度の利用について,MSWの介入が効果的であり,円滑な再作製へと繋がっていたと考える。また相談の医療従事者は,当院医師や関連老健施設からであり,法人外からの相談はなかった。そのため,ケアマネージャー(以下CM)への装具についての指導を実施,また装具外来の周知が必要である。また,大西らの調査によると装具装着による生活改善を認めた者83%,変化無し17%と,生活期において装具は非常に重要な役割を担っている。その装具を適切にかつ効果的に使用するためには,装具外来を中心とした連携の構築し,定期的なフォローアップが必要である。
【理学療法学研究としての意義】
今回の装具外来のフォローアップ時の調査により,生活期における装具の不適合が生じていることや,その対応のために装具外来での再作製・修理の必要性が示された。また,今後の課題として,CMなどを通じて生活期におけるフォローアップ・連携を進めてゆき,窓口の拡大が必要であることが挙げられた。