[P3-A-1113] 回復期病棟入院患者の筋肉量の増減が栄養状態・ADL能力に与える影響は,疾患別に異なる
Keywords:筋肉量, ADL, 栄養状態
【はじめに,目的】理学療法治療ガイドラインにおいて,理学療法介入での筋力増強は高い推奨グレードとなっており,筋力の強化が下肢筋力の増強や歩行速度に影響すると言われている。しかし,筋肉量の増減による影響についての報告は少ない。そこで今回,当院回復期病棟入院患者の退院までの筋肉量の増減が,栄養状態,身体組成,ADL能力に影響を及ぼすか検討した。
【方法】対象は2013年5月~2014年2月までに当院回復期病棟に入院した体組成計(バイオスペース社InBody s10)測定対象(体内に金属を持つ者を除く)208名の内,調査項目の不備が確認された者,救急搬送者等を除いた運動器疾患30名,脳血管疾患105名を対象とした。対象者は入院時から退院時にかけて四肢筋肉量が増加した群(以下,増加群),減少した群(以下,減少群)に分けた。この2群の年齢,体重,BMI,体脂肪率,四肢筋肉量,Alb値,Hb値,CRP値,簡易栄養状態評価表(Mini Nutritional Assessment,以下,MNA),食事摂取カロリー,食事摂取率,運動強度(METs),リハビリ単位数,握力,Functional Balance Scale(以下,FBS),FIMについて入院時と退院時の値を用いて比較検討した。体重,体脂肪率,MNA合計点については,入退院時の変化量を算出して群間で検討した。統計学的分析は,対応のないt検定・Mann-WhitneyのU検定を用いて比較検討を行い,有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】運動器疾患30名の内,増加群(1.6±2.4kg)14名,減少群(-1.3±0.8kg)16名で,退院時体重(増加群51.7±5.9 kg,減少群45.7±8.1 kg),入院時体脂肪率(増加群42.6±6.1%,減少群36.2±10.0%),退院時四肢筋肉量(増加群13.0±3.7 kg,減少群10.5±2.5 kg),運動FIM利得(増加群33.7±15.3点,減少群18.3±12.1点),総合FIM利得(増加群36.0±14.9点,減少群20.1±14.0点)において増加群が有意に高かった。体脂肪率変化量(増加群-4.2±2.8%,減少群-2.3±1.9%)においては,増加群が有意に減少した。脳血管疾患では,105名の内,増加群(0.8±0.8kg)48名,減少群(-1.6±1.2kg)57名で,入院時MNA合計点(増加群6.7±2.0点,減少群7.6±2.4点),入院時四肢筋肉量(増加群15.1±4.8 kg,減少群17.3±4.3 kg)で減少群が有意に高かった。体重変化量(増加群0.1±3.5 kg,減少群-3.4±3.9 kg)においては,減少群が有意に減少した。MNA合計点変化量(増加群2.2±2.7点,減少群0.6±2.3点)では増加群が有意に高かった。その他の項目においては,有意差はみられなかった。
【考察】運動器疾患では,増加群において運動強度やリハビリ単位数で有意差はなかったが,体脂肪率は有意に減少し,筋肉量は増加したことより効率良く体脂肪が減少したと考える。又,年齢,体重,身長,BMI,血液データ,MNAなど背景因子に群間の差がないにも関わらず,退院時四肢筋肉量,運動FIM利得,総合FIM利得において増加群の方が有意に高いことから,筋肉量の増減は退院時のADL能力に大きな影響を与えることが示唆された。握力に関しては,全身の筋力の指標とされているが,有意差はなかった。今回,部位別で筋肉量の比較を行っていないため,今後検討していきたい。脳血管疾患では,増加群でMNA合計点変化量が高いことから,筋肉量の増加と栄養状態の改善には関係があると考える。しかし,FIMに有意差がないことから,筋肉量増加のADL能力への影響は不明である。脳血管疾患では,運動麻痺や高次脳機能障害があることから,機能的改善,能力的改善が寄与したと考えられる。だからこそ,代償手段や環境設定の工夫が必要となる。減少群では,入院時MNA合計点,入院時四肢筋肉量が有意に高いが,体重変化量において減少していることから,入院時に高い栄養状態と筋肉量でもそれを維持することは必ずしも容易ではない。両疾患においても,個々に応じた食事カロリーを提供できているか,それに見合った運動負荷が提供されているか,定期的な評価と修正が必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】本研究は,入院中の筋肉量増減が,栄養状態・身体組成・ADL能力にどのように影響を及ぼすか検討したものである。運動器疾患においては,筋肉量の増減が退院時のADL能力に大きく影響することが分かった。脳血管疾患では,筋肉量増加と栄養状態の改善に関係性は認めるが,機能的改善などADLの改善には他の要因も考えられ,代償手段や環境設定などの検討も重要である。又,両疾患においても筋肉量が減少する可能性があることから,食事カロリーと運動強度は適切か定期的な評価と修正が必要と考える。
【方法】対象は2013年5月~2014年2月までに当院回復期病棟に入院した体組成計(バイオスペース社InBody s10)測定対象(体内に金属を持つ者を除く)208名の内,調査項目の不備が確認された者,救急搬送者等を除いた運動器疾患30名,脳血管疾患105名を対象とした。対象者は入院時から退院時にかけて四肢筋肉量が増加した群(以下,増加群),減少した群(以下,減少群)に分けた。この2群の年齢,体重,BMI,体脂肪率,四肢筋肉量,Alb値,Hb値,CRP値,簡易栄養状態評価表(Mini Nutritional Assessment,以下,MNA),食事摂取カロリー,食事摂取率,運動強度(METs),リハビリ単位数,握力,Functional Balance Scale(以下,FBS),FIMについて入院時と退院時の値を用いて比較検討した。体重,体脂肪率,MNA合計点については,入退院時の変化量を算出して群間で検討した。統計学的分析は,対応のないt検定・Mann-WhitneyのU検定を用いて比較検討を行い,有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】運動器疾患30名の内,増加群(1.6±2.4kg)14名,減少群(-1.3±0.8kg)16名で,退院時体重(増加群51.7±5.9 kg,減少群45.7±8.1 kg),入院時体脂肪率(増加群42.6±6.1%,減少群36.2±10.0%),退院時四肢筋肉量(増加群13.0±3.7 kg,減少群10.5±2.5 kg),運動FIM利得(増加群33.7±15.3点,減少群18.3±12.1点),総合FIM利得(増加群36.0±14.9点,減少群20.1±14.0点)において増加群が有意に高かった。体脂肪率変化量(増加群-4.2±2.8%,減少群-2.3±1.9%)においては,増加群が有意に減少した。脳血管疾患では,105名の内,増加群(0.8±0.8kg)48名,減少群(-1.6±1.2kg)57名で,入院時MNA合計点(増加群6.7±2.0点,減少群7.6±2.4点),入院時四肢筋肉量(増加群15.1±4.8 kg,減少群17.3±4.3 kg)で減少群が有意に高かった。体重変化量(増加群0.1±3.5 kg,減少群-3.4±3.9 kg)においては,減少群が有意に減少した。MNA合計点変化量(増加群2.2±2.7点,減少群0.6±2.3点)では増加群が有意に高かった。その他の項目においては,有意差はみられなかった。
【考察】運動器疾患では,増加群において運動強度やリハビリ単位数で有意差はなかったが,体脂肪率は有意に減少し,筋肉量は増加したことより効率良く体脂肪が減少したと考える。又,年齢,体重,身長,BMI,血液データ,MNAなど背景因子に群間の差がないにも関わらず,退院時四肢筋肉量,運動FIM利得,総合FIM利得において増加群の方が有意に高いことから,筋肉量の増減は退院時のADL能力に大きな影響を与えることが示唆された。握力に関しては,全身の筋力の指標とされているが,有意差はなかった。今回,部位別で筋肉量の比較を行っていないため,今後検討していきたい。脳血管疾患では,増加群でMNA合計点変化量が高いことから,筋肉量の増加と栄養状態の改善には関係があると考える。しかし,FIMに有意差がないことから,筋肉量増加のADL能力への影響は不明である。脳血管疾患では,運動麻痺や高次脳機能障害があることから,機能的改善,能力的改善が寄与したと考えられる。だからこそ,代償手段や環境設定の工夫が必要となる。減少群では,入院時MNA合計点,入院時四肢筋肉量が有意に高いが,体重変化量において減少していることから,入院時に高い栄養状態と筋肉量でもそれを維持することは必ずしも容易ではない。両疾患においても,個々に応じた食事カロリーを提供できているか,それに見合った運動負荷が提供されているか,定期的な評価と修正が必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】本研究は,入院中の筋肉量増減が,栄養状態・身体組成・ADL能力にどのように影響を及ぼすか検討したものである。運動器疾患においては,筋肉量の増減が退院時のADL能力に大きく影響することが分かった。脳血管疾患では,筋肉量増加と栄養状態の改善に関係性は認めるが,機能的改善などADLの改善には他の要因も考えられ,代償手段や環境設定などの検討も重要である。又,両疾患においても筋肉量が減少する可能性があることから,食事カロリーと運動強度は適切か定期的な評価と修正が必要と考える。