[P3-A-1133] 臨床見学実習の新たな試み
長期臨床実習生をStudent Assistantとして参加させて
Keywords:見学実習, student assistant, アンケート調査
【はじめに,目的】
見学実習は早期に理学療法のイメージを具体的に把握することにより,学内教育に対して積極的に取り組ませることを目的としている。多くの養成校で入学初年度に設定されているこの実習は,全入時代となり多様化した学生にとっては「学びの転換」に繋がる重要な位置づけだと思われるが,具体的な取り組みや効果に関する報告は少ない。当院では2000年に示された文部省高等教育局報告「大学における学生生活の充実方策について(廣中レポート)」を参考とし,平成26年度より長期臨床実習生を見学実習生の支援に携わらせるStudent Assistant(SA)制度を取り入れている。今回は当院の見学実習における試みに関しアンケート調査をもとに報告する。
【方法】
対象は平成26年度に当院にて見学実習を終了した見学実習生(PTS)4名(実習期間3日:2名,5日:2名,18.3±0.5歳),長期臨床実習生(SA)4名(27.8±5.8歳),養成校2校とし,実習終了後にアンケート調査を実施した。アンケート内容は,PTSとSAには,①見学実習の人数について,②見学実習期間について,③PTSが立てた目標に関しSAと達成行動を行うことについて,④リハ室内の備品に関するレポート作成について,⑤SAとのランチディスカッションについて,⑥SA制度について,⑦今後の学生生活への影響について,養成校には,①SA制度について,②見学実習の目標達成について,③従来型見学実習との相違についてとし,5段階尺度(5点:非常に良い・4点:良い・3点:普通・2点:あまり良くない・1点:良くない)や各項目に関する自由記述にて調査した。長期臨床実習生にはSA制度について実習開始時のオリエンテーションにて説明し,さらに臨床実習教育者(CE)との事前オリエンテーションにて見学実習についての説明,打ち合わせをし,CEの監視下でPTSとCEとの仲介役としての機能を果たすよう指導した。
【結果】
自由記述の一部を含めたアンケート結果は以下の通りであった。PTS:①2名:緊張が減りお互いに高め合うことができる,3名以上だと緊張感や責任感が減る。②3日間:1日では緊張したまま終わる気がする,1週間は長すぎる。③4.75点:積極的に行動しやすい,反省点もわかりやすい。④5点:まとめるのは難しいが予習となる,見学時に理解しやすい。⑤4.75点:先輩と学生生活や臨床実習の話をする機会が少ないのでよかった,緊張をほぐしてもらえた。⑥5点:CEには何を質問していいのかわからない,SAには緊張せず質問できる。⑦先輩のようになれるのか不安である,授業の大切さがわかり目標が明確になった,先輩がかっこよく見えた,自分も後輩指導が出来るよう努力したい。SA:①2名:1人では心細い,2人で相談できる。②3日間:1日ではPTSの不安や緊張感が強く教えにくい,1週間は自分も実習中であり精神的に辛い。③4点:目標達成に向けて具体的に説明する練習となる。④4.25点:知識の確認や復習の機会となる。⑤4.5点:学生生活を振り返りながら助言できる,質問とはいえない内容も質問しやすい。⑥4点:自分に余裕がない時期だと負担となる,責任感が生まれ気が引き締まる。⑦医療面接の練習になる,将来CEとなった時の参考になる。養成校:①4.5点:SAの負担になることも考えられる,PTSは職場環境に適応しやすく能動的実習を推進するのに最適である,SAにとって教えることは学ぶことになる。②4.5点:SAの学生としての視点も入れてあり新鮮である,CEとSAが指導内容を統一することが必要である。③コメントが明確であり他者に話す内容が多い,SAを当面の目標としてイメージ出来ている。
【考察】
廣中レポートでは,「学生に対する教育・指導に学生自身を活用すること」の意義として「教育活動の活発化や充実」と「教える側の学生が主体的に学ぶ姿勢や責任感を身につけることができること」が挙げられており,立山(2013)は教育上の効果は,新入生の高校からの移行と大学への学問的・社会的統合を支援することを目的とした初年次セミナーにおいて顕著であると述べている。今回のアンケート結果より,入学初年度の見学実習にてSA制度を導入することは,PTSにおいては養成校の見学実習の目的を果たし,能動的に行動できる可能性が高く,SAにおいては時期や指導内容により負担となることも考えられるが,SA自身の学びや成長に繋がる可能性が示唆された。今後は心理的ストレスや自己効力感に関するテストを用い成果を検証する必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
入学初年度に行われる見学実習の位置づけは重要であり,理学療法士の養成過程において学生の視点を導入することは有効な教育手段の一つとなる可能性がある。
見学実習は早期に理学療法のイメージを具体的に把握することにより,学内教育に対して積極的に取り組ませることを目的としている。多くの養成校で入学初年度に設定されているこの実習は,全入時代となり多様化した学生にとっては「学びの転換」に繋がる重要な位置づけだと思われるが,具体的な取り組みや効果に関する報告は少ない。当院では2000年に示された文部省高等教育局報告「大学における学生生活の充実方策について(廣中レポート)」を参考とし,平成26年度より長期臨床実習生を見学実習生の支援に携わらせるStudent Assistant(SA)制度を取り入れている。今回は当院の見学実習における試みに関しアンケート調査をもとに報告する。
【方法】
対象は平成26年度に当院にて見学実習を終了した見学実習生(PTS)4名(実習期間3日:2名,5日:2名,18.3±0.5歳),長期臨床実習生(SA)4名(27.8±5.8歳),養成校2校とし,実習終了後にアンケート調査を実施した。アンケート内容は,PTSとSAには,①見学実習の人数について,②見学実習期間について,③PTSが立てた目標に関しSAと達成行動を行うことについて,④リハ室内の備品に関するレポート作成について,⑤SAとのランチディスカッションについて,⑥SA制度について,⑦今後の学生生活への影響について,養成校には,①SA制度について,②見学実習の目標達成について,③従来型見学実習との相違についてとし,5段階尺度(5点:非常に良い・4点:良い・3点:普通・2点:あまり良くない・1点:良くない)や各項目に関する自由記述にて調査した。長期臨床実習生にはSA制度について実習開始時のオリエンテーションにて説明し,さらに臨床実習教育者(CE)との事前オリエンテーションにて見学実習についての説明,打ち合わせをし,CEの監視下でPTSとCEとの仲介役としての機能を果たすよう指導した。
【結果】
自由記述の一部を含めたアンケート結果は以下の通りであった。PTS:①2名:緊張が減りお互いに高め合うことができる,3名以上だと緊張感や責任感が減る。②3日間:1日では緊張したまま終わる気がする,1週間は長すぎる。③4.75点:積極的に行動しやすい,反省点もわかりやすい。④5点:まとめるのは難しいが予習となる,見学時に理解しやすい。⑤4.75点:先輩と学生生活や臨床実習の話をする機会が少ないのでよかった,緊張をほぐしてもらえた。⑥5点:CEには何を質問していいのかわからない,SAには緊張せず質問できる。⑦先輩のようになれるのか不安である,授業の大切さがわかり目標が明確になった,先輩がかっこよく見えた,自分も後輩指導が出来るよう努力したい。SA:①2名:1人では心細い,2人で相談できる。②3日間:1日ではPTSの不安や緊張感が強く教えにくい,1週間は自分も実習中であり精神的に辛い。③4点:目標達成に向けて具体的に説明する練習となる。④4.25点:知識の確認や復習の機会となる。⑤4.5点:学生生活を振り返りながら助言できる,質問とはいえない内容も質問しやすい。⑥4点:自分に余裕がない時期だと負担となる,責任感が生まれ気が引き締まる。⑦医療面接の練習になる,将来CEとなった時の参考になる。養成校:①4.5点:SAの負担になることも考えられる,PTSは職場環境に適応しやすく能動的実習を推進するのに最適である,SAにとって教えることは学ぶことになる。②4.5点:SAの学生としての視点も入れてあり新鮮である,CEとSAが指導内容を統一することが必要である。③コメントが明確であり他者に話す内容が多い,SAを当面の目標としてイメージ出来ている。
【考察】
廣中レポートでは,「学生に対する教育・指導に学生自身を活用すること」の意義として「教育活動の活発化や充実」と「教える側の学生が主体的に学ぶ姿勢や責任感を身につけることができること」が挙げられており,立山(2013)は教育上の効果は,新入生の高校からの移行と大学への学問的・社会的統合を支援することを目的とした初年次セミナーにおいて顕著であると述べている。今回のアンケート結果より,入学初年度の見学実習にてSA制度を導入することは,PTSにおいては養成校の見学実習の目的を果たし,能動的に行動できる可能性が高く,SAにおいては時期や指導内容により負担となることも考えられるが,SA自身の学びや成長に繋がる可能性が示唆された。今後は心理的ストレスや自己効力感に関するテストを用い成果を検証する必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
入学初年度に行われる見学実習の位置づけは重要であり,理学療法士の養成過程において学生の視点を導入することは有効な教育手段の一つとなる可能性がある。