[P3-A-1138] 理学療法士における生涯学習の課題
―研修会と文献による考察から―
Keywords:生涯学習, Women’s Health, 管理運営
【目的】現在,日本の理学療法士(以下,PT)は10万人を超え,平均年齢は32.6歳,女性は4割を占めている。この背景のもと,急激な免許保持者の増加による医療の質の低下が懸念され,人材育成や生涯学習,管理運営が課題になっている(佐々木ら2010,石橋ら2009)。また一方で若年層が多く,妊娠や出産,介護などのライフイベントによる休職や離職に関する問題も明らかになっている(荒木ら2011,山野ら2013)。そこで我々は,Women’s Healthに特化した法人でキャリアデザイン,就業継続に関する託児付の研修会を開催し,参加者へ質問紙調査を行った。さらに客観的な視点を得るために文献研究を加え,PTにおける生涯学習の課題を抽出することを目的に検討した。
【方法】2013~2014年に開催された研修会のうち,キャリアデザイン,就業継続,ワークライフバランス,パートナーシップをテーマに扱った計3回において,参加者に対して質問紙調査を実施した。質問紙は無記名,選択・自由記載で受講動機,受講環境(テーマ,託児,開催日程)について聴取した。文献的考察は文献検索サイト「医学中央雑誌」を用いて,1999~2014年10月の15年間に刊行された文献を対象に「医師」,「看護師」,「理学療法士」,「就業継続」,「ワークライフバランス」,「職場環境」,「人材育成」,「キャリアデザイン」をキーワードに検索を行い,それぞれの検索件数と文献で取り上げられている話題について分析をした。
【結果】研修会の参加者は3回でのべ87名(男性19名,女性68名)でおおむね好評を得た。質問紙調査は69名(男性18名,女性51名)より回答を得た(回答率79.3%)。研修会では女性に関する他のテーマの講演も含まれており,Women’s Healthに関心を寄せた参加者が多かった(50名:72.4%)。受講環境に関しては,託児利用に関わらず,「託児がある方がよい」が多数をしめ(48名:69.5%),週末開催の希望が多かった。自由記載には,「出産だけの話だけでなく,自分のこれからのこと,家族のことを考えるきっかけになった。」「たくさんの役割を持って頑張りすぎては知らないうちに体を壊してしまう。」「早いうちにもう一人子供を産みたい。」「職場環境のシステム作りが必要だと思った。」といった率直な意見が聞かれた。文献検索では「PT×就業継続(5件)」「PT×ワークライフバランス(17件)」「PT×職場環境(22件)」「PT×人材育成(91件)」「PT×キャリアデザイン(20件)」であった。「医師」「看護師」に比して「理学療法士」の検索件数は少なかった。内容としては,「PT×就業継続」では管理職,介護,子育て,離職の報告がみられた。「PT×ワークライフバランス」ではワークライフバランス,職場管理,残業時間,部署での取り組みがみられた。「PT×職場環境」では復職支援,職場環境,就業状況,臨床能力などが報告されていた。「PT×人材育成」では人材育成の内容や方法論が多数を占め,リーダー育成や県士会の取り組み,キャリアデザイン,コーチングスキルも取り上げられていた。「PT×キャリアデザイン」では,各専門領域によるキャリアデザインについて報告されていた。
【考察】我々が開催した研修会での質問紙調査では託児や開催日程の条件が整うことで,自己研鑽の機会を増やせることが示唆された。また自由記載では,就業継続やワークライフバランスに関して,当事者もしくは管理職など周囲からの問題意識も把握できた。文献検索では多くの報告がみられたが,医師や看護師の報告よりも少なく,今後さらなる展開が期待される。研修会開催,その参加者からの反応,先行文献より,1)妊娠,出産,育児,介護などのライフステージに関する条件,2)管理職の視点,同僚の理解,本人の意識,職場でのシステムなどの職場環境に関する条件,3)卒前教育を含む教育システム,質の高い人材育成のための条件の3点が生涯学習に関する課題であると考えられ,その点に取り組むことにより,自己研鑽や生涯学習への参加機会を増加させることは可能になると考えた。研修会参加者からの回答と先行研究での課題は共通する部分が見受けられた。今後は個人の努力だけに頼るだけでなく,組織や地域を含めたより包括的な体制づくりが必要になると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】理学療法士の質の維持,向上は重要であり,就業継続の影響を受けると考えられる。そのため,就業継続にむけた生涯学習の体制整備はさらなる展開が期待される。
【方法】2013~2014年に開催された研修会のうち,キャリアデザイン,就業継続,ワークライフバランス,パートナーシップをテーマに扱った計3回において,参加者に対して質問紙調査を実施した。質問紙は無記名,選択・自由記載で受講動機,受講環境(テーマ,託児,開催日程)について聴取した。文献的考察は文献検索サイト「医学中央雑誌」を用いて,1999~2014年10月の15年間に刊行された文献を対象に「医師」,「看護師」,「理学療法士」,「就業継続」,「ワークライフバランス」,「職場環境」,「人材育成」,「キャリアデザイン」をキーワードに検索を行い,それぞれの検索件数と文献で取り上げられている話題について分析をした。
【結果】研修会の参加者は3回でのべ87名(男性19名,女性68名)でおおむね好評を得た。質問紙調査は69名(男性18名,女性51名)より回答を得た(回答率79.3%)。研修会では女性に関する他のテーマの講演も含まれており,Women’s Healthに関心を寄せた参加者が多かった(50名:72.4%)。受講環境に関しては,託児利用に関わらず,「託児がある方がよい」が多数をしめ(48名:69.5%),週末開催の希望が多かった。自由記載には,「出産だけの話だけでなく,自分のこれからのこと,家族のことを考えるきっかけになった。」「たくさんの役割を持って頑張りすぎては知らないうちに体を壊してしまう。」「早いうちにもう一人子供を産みたい。」「職場環境のシステム作りが必要だと思った。」といった率直な意見が聞かれた。文献検索では「PT×就業継続(5件)」「PT×ワークライフバランス(17件)」「PT×職場環境(22件)」「PT×人材育成(91件)」「PT×キャリアデザイン(20件)」であった。「医師」「看護師」に比して「理学療法士」の検索件数は少なかった。内容としては,「PT×就業継続」では管理職,介護,子育て,離職の報告がみられた。「PT×ワークライフバランス」ではワークライフバランス,職場管理,残業時間,部署での取り組みがみられた。「PT×職場環境」では復職支援,職場環境,就業状況,臨床能力などが報告されていた。「PT×人材育成」では人材育成の内容や方法論が多数を占め,リーダー育成や県士会の取り組み,キャリアデザイン,コーチングスキルも取り上げられていた。「PT×キャリアデザイン」では,各専門領域によるキャリアデザインについて報告されていた。
【考察】我々が開催した研修会での質問紙調査では託児や開催日程の条件が整うことで,自己研鑽の機会を増やせることが示唆された。また自由記載では,就業継続やワークライフバランスに関して,当事者もしくは管理職など周囲からの問題意識も把握できた。文献検索では多くの報告がみられたが,医師や看護師の報告よりも少なく,今後さらなる展開が期待される。研修会開催,その参加者からの反応,先行文献より,1)妊娠,出産,育児,介護などのライフステージに関する条件,2)管理職の視点,同僚の理解,本人の意識,職場でのシステムなどの職場環境に関する条件,3)卒前教育を含む教育システム,質の高い人材育成のための条件の3点が生涯学習に関する課題であると考えられ,その点に取り組むことにより,自己研鑽や生涯学習への参加機会を増加させることは可能になると考えた。研修会参加者からの回答と先行研究での課題は共通する部分が見受けられた。今後は個人の努力だけに頼るだけでなく,組織や地域を含めたより包括的な体制づくりが必要になると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】理学療法士の質の維持,向上は重要であり,就業継続の影響を受けると考えられる。そのため,就業継続にむけた生涯学習の体制整備はさらなる展開が期待される。