[P3-A-1145] 当院の廃用症候群患者の傾向について
キーワード:廃用症候群, 転帰, リハビリテーション
【はじめに,目的】
廃用症候群とは身体の低・不活動状態の結果,精神を含めた全身諸臓器に続発する二次的障害の総称とされ,またその対象となる患者は「外科的手術又は肺炎等の治療後の安静による廃用症候群の患者であって,治療開始時においてFunctional Independence Measure(FIM)115点以下,またはBarthel Index(以下BI)85点以下の状態のものをいう」と定義されている。
当院においても廃用症候群患者に対するリハビリテーション(以下,リハビリ)に関わるケースが多くある。しかしその実態,データの分析は十分に行われていない。本調査の目的は,当院においてリハビリ介入した廃用症候群患者の転帰に影響する項目を検討すること,またその実態を明らかにすることである。
【方法】
2013年4月~2014年6月の期間で当科に紹介された患者1,948名のうち,廃用症候群と診断後,リハビリを実施,転帰を迎えた416名を対象とした。なお未成年者と転帰が死亡退院の場合は対象から除外した。これらを自宅退院群(211名),転院群(205名)の2群に分け比較検討を行った。検討項目は性別,年齢,在院日数,リハビリ開始までの期間,リハビリ実施期間,リハビリ開始時BIとし,項目の尺度に応じてカイ二乗検定,対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定を行なった。統計ソフトはJSTATを使用し,有意水準は5%未満とした。また対象患者の廃用症候群に至った原疾患をICD-10第10版,疾病コード表で疾患の分類を行った。
【結果】
自宅退院群と転院群2群間で有意差を認めた項目は,自宅退院群/転院群として表すと,リハビリ実施期間19.36日/24.53日,開始時BI48.57点/24.66点,および性別男性95名,女性116名/男性116名,女性89名であった(P<0.05)。年齢72.59歳/74.68歳(P=0.09),在院日数37.37日/40.39日(P=0.27),リハビリ開始までの期間14.72日/15.05日(P=0.84)おいては両群間で有意差を認めなかった。
ICD-10第10版,疾病コード表を用いて分類した原疾患は,自宅退院群,転院群とも新生物が最も多く,自宅退院66名(31%),転院48名(23%),次いで消化器疾患で自宅退院31名(15%),転院40名(20%)となった。なお新生物は原疾患全体の27%(114名),消化器疾患は17%(71名)を占めていた。以後は自宅退院では精神および行動の障害24名(11%),循環器系の疾患20名(9%),呼吸器系の疾患17名(8%)の順であったのに対し,転院群は内分泌,栄養および代謝疾患20名(10%),腎尿路生殖器系の疾患18名(9%),呼吸器系の疾患17名(8%)であった。いずれも原疾患は多岐にわたっていた。
【考察】
本研究の結果から,自宅退院可能であった廃用症候群患者は,転院に至った患者と比較し,リハビリ実施期間,リハビリ開始時BI,性別が転帰に影響を与えることが示唆された。これは年齢やリハビリ開始までの期間に有意差が無かったことを考えると,リハビリ開始時のBIが比較的高い患者が短期間のリハビリで自宅退院される傾向にあると考えられる。また性別に有意差が認められた結果については,今回の調査では検討項目が少なく明らかにできなかったが,環境的因子や原疾患が多岐にわたることなどが影響している可能性が考えられる。
廃用症候群患者の原疾患は新生物,次いで消化器疾患の順に多かった。新生物に対する外科的治療後や,抗がん剤治療後で廃用症候群に至ったケースや,消化器疾患で器官が十分機能していないため静脈栄養などが選択され,経口からの食事摂取が可能となるまで時間を要し,廃用症候群に至り転院となったケースなどが推察される。
近年,急性期リハビリの在り方も今まで以上に問われる時代となっている。当科としても多職種と協力し廃用症候群の予防や転帰の改善,在院日数の短縮に努める必要がある。さらには当院廃用症候群の患者は,新生物すなわちがん治療後の患者が全体の1/4を占めていることを考えると,がん患者に対するリハビリの専門性を高めて行くことも重要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
2014年診療報酬改定において,廃用症候群患者に対するリハビリ算定料は減点の対象となったが,当院では廃用症候群の対象となる患者は多く存在しており,疾患別リハビリの動向を確認するためにも継続した調査が必要と考える。
廃用症候群とは身体の低・不活動状態の結果,精神を含めた全身諸臓器に続発する二次的障害の総称とされ,またその対象となる患者は「外科的手術又は肺炎等の治療後の安静による廃用症候群の患者であって,治療開始時においてFunctional Independence Measure(FIM)115点以下,またはBarthel Index(以下BI)85点以下の状態のものをいう」と定義されている。
当院においても廃用症候群患者に対するリハビリテーション(以下,リハビリ)に関わるケースが多くある。しかしその実態,データの分析は十分に行われていない。本調査の目的は,当院においてリハビリ介入した廃用症候群患者の転帰に影響する項目を検討すること,またその実態を明らかにすることである。
【方法】
2013年4月~2014年6月の期間で当科に紹介された患者1,948名のうち,廃用症候群と診断後,リハビリを実施,転帰を迎えた416名を対象とした。なお未成年者と転帰が死亡退院の場合は対象から除外した。これらを自宅退院群(211名),転院群(205名)の2群に分け比較検討を行った。検討項目は性別,年齢,在院日数,リハビリ開始までの期間,リハビリ実施期間,リハビリ開始時BIとし,項目の尺度に応じてカイ二乗検定,対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定を行なった。統計ソフトはJSTATを使用し,有意水準は5%未満とした。また対象患者の廃用症候群に至った原疾患をICD-10第10版,疾病コード表で疾患の分類を行った。
【結果】
自宅退院群と転院群2群間で有意差を認めた項目は,自宅退院群/転院群として表すと,リハビリ実施期間19.36日/24.53日,開始時BI48.57点/24.66点,および性別男性95名,女性116名/男性116名,女性89名であった(P<0.05)。年齢72.59歳/74.68歳(P=0.09),在院日数37.37日/40.39日(P=0.27),リハビリ開始までの期間14.72日/15.05日(P=0.84)おいては両群間で有意差を認めなかった。
ICD-10第10版,疾病コード表を用いて分類した原疾患は,自宅退院群,転院群とも新生物が最も多く,自宅退院66名(31%),転院48名(23%),次いで消化器疾患で自宅退院31名(15%),転院40名(20%)となった。なお新生物は原疾患全体の27%(114名),消化器疾患は17%(71名)を占めていた。以後は自宅退院では精神および行動の障害24名(11%),循環器系の疾患20名(9%),呼吸器系の疾患17名(8%)の順であったのに対し,転院群は内分泌,栄養および代謝疾患20名(10%),腎尿路生殖器系の疾患18名(9%),呼吸器系の疾患17名(8%)であった。いずれも原疾患は多岐にわたっていた。
【考察】
本研究の結果から,自宅退院可能であった廃用症候群患者は,転院に至った患者と比較し,リハビリ実施期間,リハビリ開始時BI,性別が転帰に影響を与えることが示唆された。これは年齢やリハビリ開始までの期間に有意差が無かったことを考えると,リハビリ開始時のBIが比較的高い患者が短期間のリハビリで自宅退院される傾向にあると考えられる。また性別に有意差が認められた結果については,今回の調査では検討項目が少なく明らかにできなかったが,環境的因子や原疾患が多岐にわたることなどが影響している可能性が考えられる。
廃用症候群患者の原疾患は新生物,次いで消化器疾患の順に多かった。新生物に対する外科的治療後や,抗がん剤治療後で廃用症候群に至ったケースや,消化器疾患で器官が十分機能していないため静脈栄養などが選択され,経口からの食事摂取が可能となるまで時間を要し,廃用症候群に至り転院となったケースなどが推察される。
近年,急性期リハビリの在り方も今まで以上に問われる時代となっている。当科としても多職種と協力し廃用症候群の予防や転帰の改善,在院日数の短縮に努める必要がある。さらには当院廃用症候群の患者は,新生物すなわちがん治療後の患者が全体の1/4を占めていることを考えると,がん患者に対するリハビリの専門性を高めて行くことも重要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
2014年診療報酬改定において,廃用症候群患者に対するリハビリ算定料は減点の対象となったが,当院では廃用症候群の対象となる患者は多く存在しており,疾患別リハビリの動向を確認するためにも継続した調査が必要と考える。