[P3-A-1151] JCI(国際版医療機能評価)認定病院におけるリハビリテーション科の取り組みについて(第2報)
~身体機能評価の対応~
キーワード:JCI, 国際基準, 身体機能評価
【はじめに,目的】
当院はNTT東日本の病院として高度の先進医療を提供し,地域の医療連携の中核を担う病院として日々の診療に努めている。当院の基本方針のひとつに「世界的視野に立った最新の技術に基づき最高の医療の提供」が掲げられ,2011年3月にJOINT COMMISSION INTERNATIONAL(国際版医療機能評価,以下JCI)の認定を取得し,国内で2番目,東京都内では初めての認定施設となった。3年ごとの認定更新にはPDCAサイクルに基づき,更なる改変をおこない高い基準を維持していることが求められる。JCI基準には「患者中心の基準」の一つである「入院時のスクリーニングおよび詳細な評価」を行うように定められている。ここでは,入院した患者は栄養・転倒リスク・身体機能をスクリーニングにより早急に状態を把握し,低下等が認められた場合は専門家による詳細な評価と適切なサービス(ケア)を行うよう提示されている。2014年における当院の認定更新の際,身体機能ついてリハビリテーション科が詳細な評価を行う事で体制を整え全病棟で対応し,無事に基準をクリアした。国内におけるJCI認定病院(病院基準)は2014年10月時点で8施設であり,JCI基準でのリハビリテーション領域の対応についての報告は少ない。今回,JCI基準に則った入院時の身体機能評価におけるリハビリテーション科(以下当科)の対応および役割について報告する。
【方法】
(1)院内におけるJCI委員会・医療安全委員会・看護部・当科にて協議し,入院時に全患者に行う身体機能スクリーニング(以下スクリーニング)と詳細評価(以下評価)の役割と実施内容について制定し運用した。
(2)運用後の実績について調査した。対象は2014年6月~9月に内科病棟に入院した778名から詳細評価を実施した患者数と割合,リハビリ介入に至った人数と割合を算出し,リハビリ介入数は前年同月と比較した。
【結果】
(1)身体機能のスクリーニングから評価までの流れは以下のように制定・運用した。入院時のスクリーニングは看護師が行い,評価を当科にて行う。看護師によるスクリーニングは,「食事・排泄・清潔・洗面・更衣整容・移動」の活動6項目で,段階付けは「自立・セッティング以外自立・見守り・中介助・全介助」の5段階とし,「見守り」以下が1項目以上あれば当科にて評価をおこなう事とした。また,転倒スクリーニングのMorse Scoreにおいて中等度~高リスクに該当した場合も低機能の可能性があり評価の対象とした。入院から48時間以内に対応することが基準であるため,当科への評価依頼はFAXを用い昼夜問わずに送受信できるようにした。当科での評価はBarthel indexを用いて10項目の動作を確認し,85点以上を自立,25点以下を全介助,中間の26~84点を一定の介助が必要なレベルとし,中間のスコアになった場合はリハビリ介入必要とし医師に進言する事とした。全介助レベルは病状やリスクを考慮し医師の指示によるリハビリ介入とした。また,入院時の同意書における包括同意の項目に「リハビリテーション」を追加することで患者や家族への理解を促し,当科介入による評価が円滑に行えるようにした。
(2)評価の実施数は月平均105名で入院患者の53%であった。さらにリハ導入に至った割合は評価全体の17%であった。リハ導入数は月平均18人と前年同月の12人と比べ増加傾向を示した。
【考察】
JCI基準に対応するために入院患者全員にスクリーニングを実施し,機能低下が疑われる患者に対して更なる評価を行う体制を整えることができた。また身体機能の評価はリハビリテーション部門が専門分野であり,当科が入院患者の評価を行う役割を担い,包括的医療を通じた高い質の医療提供に貢献できたと思われる。スクリーニングと評価を通じて低機能の患者にリハビリ科が適切に介入できる基準を設けることで,機能の維持向上に入院当初からかかわるようになり患者のケア向上につながったと考えられる。課題としては評価に対するリハ未介入率が高く,スクリーニング基準や評価基準の変更の余地がある。また,評価はリハオーダー前の対応でありコスト未算定の課題が残り,今後医師との連携を進め,評価を含めたリハオーダーシステムの変更も必要と思われる。
【理学療法学研究としての意義】
今回の報告は,他のJCI認定病院や今後国際基準を取得する施設におけるリハビリテーション・理学療法業務の参考になるとともに,理学療法士全体の医療の質の向上に役立つものと考える。
当院はNTT東日本の病院として高度の先進医療を提供し,地域の医療連携の中核を担う病院として日々の診療に努めている。当院の基本方針のひとつに「世界的視野に立った最新の技術に基づき最高の医療の提供」が掲げられ,2011年3月にJOINT COMMISSION INTERNATIONAL(国際版医療機能評価,以下JCI)の認定を取得し,国内で2番目,東京都内では初めての認定施設となった。3年ごとの認定更新にはPDCAサイクルに基づき,更なる改変をおこない高い基準を維持していることが求められる。JCI基準には「患者中心の基準」の一つである「入院時のスクリーニングおよび詳細な評価」を行うように定められている。ここでは,入院した患者は栄養・転倒リスク・身体機能をスクリーニングにより早急に状態を把握し,低下等が認められた場合は専門家による詳細な評価と適切なサービス(ケア)を行うよう提示されている。2014年における当院の認定更新の際,身体機能ついてリハビリテーション科が詳細な評価を行う事で体制を整え全病棟で対応し,無事に基準をクリアした。国内におけるJCI認定病院(病院基準)は2014年10月時点で8施設であり,JCI基準でのリハビリテーション領域の対応についての報告は少ない。今回,JCI基準に則った入院時の身体機能評価におけるリハビリテーション科(以下当科)の対応および役割について報告する。
【方法】
(1)院内におけるJCI委員会・医療安全委員会・看護部・当科にて協議し,入院時に全患者に行う身体機能スクリーニング(以下スクリーニング)と詳細評価(以下評価)の役割と実施内容について制定し運用した。
(2)運用後の実績について調査した。対象は2014年6月~9月に内科病棟に入院した778名から詳細評価を実施した患者数と割合,リハビリ介入に至った人数と割合を算出し,リハビリ介入数は前年同月と比較した。
【結果】
(1)身体機能のスクリーニングから評価までの流れは以下のように制定・運用した。入院時のスクリーニングは看護師が行い,評価を当科にて行う。看護師によるスクリーニングは,「食事・排泄・清潔・洗面・更衣整容・移動」の活動6項目で,段階付けは「自立・セッティング以外自立・見守り・中介助・全介助」の5段階とし,「見守り」以下が1項目以上あれば当科にて評価をおこなう事とした。また,転倒スクリーニングのMorse Scoreにおいて中等度~高リスクに該当した場合も低機能の可能性があり評価の対象とした。入院から48時間以内に対応することが基準であるため,当科への評価依頼はFAXを用い昼夜問わずに送受信できるようにした。当科での評価はBarthel indexを用いて10項目の動作を確認し,85点以上を自立,25点以下を全介助,中間の26~84点を一定の介助が必要なレベルとし,中間のスコアになった場合はリハビリ介入必要とし医師に進言する事とした。全介助レベルは病状やリスクを考慮し医師の指示によるリハビリ介入とした。また,入院時の同意書における包括同意の項目に「リハビリテーション」を追加することで患者や家族への理解を促し,当科介入による評価が円滑に行えるようにした。
(2)評価の実施数は月平均105名で入院患者の53%であった。さらにリハ導入に至った割合は評価全体の17%であった。リハ導入数は月平均18人と前年同月の12人と比べ増加傾向を示した。
【考察】
JCI基準に対応するために入院患者全員にスクリーニングを実施し,機能低下が疑われる患者に対して更なる評価を行う体制を整えることができた。また身体機能の評価はリハビリテーション部門が専門分野であり,当科が入院患者の評価を行う役割を担い,包括的医療を通じた高い質の医療提供に貢献できたと思われる。スクリーニングと評価を通じて低機能の患者にリハビリ科が適切に介入できる基準を設けることで,機能の維持向上に入院当初からかかわるようになり患者のケア向上につながったと考えられる。課題としては評価に対するリハ未介入率が高く,スクリーニング基準や評価基準の変更の余地がある。また,評価はリハオーダー前の対応でありコスト未算定の課題が残り,今後医師との連携を進め,評価を含めたリハオーダーシステムの変更も必要と思われる。
【理学療法学研究としての意義】
今回の報告は,他のJCI認定病院や今後国際基準を取得する施設におけるリハビリテーション・理学療法業務の参考になるとともに,理学療法士全体の医療の質の向上に役立つものと考える。