第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

症例研究 ポスター15

運動器/膝関節

Sun. Jun 7, 2015 10:50 AM - 11:50 AM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-B-0838] 右膝慢性疼痛に対し末梢神経感作の関与が疑われた一症例

吉田亮太, 野中一誠, 西亮介, 野中理絵, 松島知生, 西恒亮 (医療法人龍邦会東前橋整形外科リハビリテーションセンター)

Keywords:慢性疼痛, 徒手療法, 末梢神経感作

【目的】
今回,右膝の慢性疼痛に対し神経障害性疼痛のひとつである末梢神経感作(Peripheral Nerve Sensitization;以下,PNS)の関与が疑われる症例を経験した。本邦でのPNSに関する報告は少ないが,本症例を経験し良好な結果が得られたため報告する。
【症例提示】
61歳女性。診断名は変形性膝関節症。主訴は右膝関節周囲の動作時痛。現病歴は7年前から膝に違和感が生じ,半年前から疼痛と炎症の急性増悪みられ他院受診。約5ヶ月間の治療で疼痛の軽減みられず当院受診。同様の診断後に理学療法開始。理学検査は姿勢,触診,自動運動,他動運動,関節副運動,神経動的検査,神経学的検査,整形外科的検査を行った。その結果,疼痛は筋骨格系由来ではなく,伏在神経のPNSにより生じている事が疑われた。その所見として,1)股関節屈曲位よりも伸展位での膝関節屈曲可動域の低下と疼痛再現,2)股関節伸展,膝関節屈曲に体幹左側屈を加えた複合運動での疼痛再現,3)大腿神経動的検査陽性,4)伏在神経触診での疼痛再現等が挙げられた。よってL3/4分節に対しlateral glideを行った。
【経過と考察】
初回評価時,膝関節屈曲は疼痛により80度で制限されていたが,初回介入後に120度まで改善。歩行,階段動作時の痛みは介入前をNRS10とし0-2まで軽減,PNSの所見も消失。3日後の再来院時も状態は維持されていた為,膝関節可動域練習,筋力エクササイズを開始。介入後9週で屈曲150度まで改善,ADL上の疼痛,制限共に消失。PNSは,末梢神経周辺の炎症や繰り返しの痛み刺激により閾値の低下を招くものである。本症例は約7年間の膝痛に加え,一時は右膝周囲に炎症所見が強く生じていたとの事であった為,それらにより伏在神経のPNSが惹起されたと考える。またCoppietersらによりPNSには当該分節へのlateral glideが効果的であると報告されており,本症例においても有効であったと考える。以上から,膝痛に対する理学療法での筋骨格系に加えた神経系へのアプローチの重要性が示唆された。