[P3-B-0893] 基本動作の評価指標の有用性について機能的自立度評価表(FIM)と日常生活機能評価を用いた検討
当院回復期リハビリテーション病棟における高齢者の実態
キーワード:高齢者, 基本動作, 評価
【はじめに,目的】
超高齢社会を迎え,回復期病棟では理学療法士,作業療法士,看護師等によるチーム医療が推進されている。各々の専門性を示す評価指標として,作業療法士は主にADLを他部門に示すFIMなどがあり,看護師は重症度を示す日常生活機能評価などがある。しかし動作レベルを評価する指標として,理学療法単独で他部門に示すための一般的に用いられている統一した評価指標がないのが現状である。また理学療法士法及び作業療法士法では,「理学療法とは…主としてその基本的動作能力の回復を図るために…」とあるが,その理学療法の目的とも言える基本動作能力を示す指標でさえ見つからない。前大会では,当院に入院している高齢者を対象に,当院独自で作成した基本動作評価表(以下BMW:Basic-motion Measure in Wajinkai-hospital)を使用し,「高齢者に適した運動課題の検討と運動課題が基本動作,トイレ動作に関連し在宅復帰率に及ぼす影響」,「FIM100点未満の高齢者において自宅退院を向上させるための患者要因の検討」を報告した。しかしBMW自体の有用性については報告できていない。そこで他部門が評価するFIM,日常生活機能評価との関連性を調べ,またBMWを含む3つの評価の向上が在宅復帰率に影響した要因のひとつである結果が得られたので報告する。
【方法】
対象は平成24年6月から1年間で当院回復期リハビリテーション病棟に入院した70歳以上の運動器疾患30名,脳血管疾患14名,廃用症候群(術後・肺炎等)36名の計80名(男性26名,女性54名),平均年齢84.79±5.69歳である。在宅復帰率は76%であった。方法は,BMW(PT評価項目),FIM(OT評価項目),日常生活機能評価(Ns評価項目)を入院月と退院月で比較,また毎月実施した総評価数226回(80名)で3つの評価項目の関連性を求めた。BMWとは,寝返り(①患側・②非患側),起き上がり(③on elbow・④on hand・⑤off hand),立ち上がり(⑥屈曲相・⑦臀部挙上相・⑧伸展相),⑨歩行の9項目を,FIMを参考に7段階尺度で点数化した評価表である。なお解析ソフトはSTAT VIEWを使用し,入院月と退院月の比較はt検定(対応あり),各項目の関連性はSpearmanの順位検定にて解析した。有意水準は全て5%とした。
【結果】
入院月と退院月の比較では,BMW・FIM・日常生活機能評価全て入院時より退院時が有意な改善を示した(p<0.0001)。また各評価の関連性は,BMWとFIMでは相関係数0.825(p<0.0001)であり,BMWと日常生活機能評価では相関係数-0.781(p<0.0001)で有意な相関関係を示した。年齢・性差等に関して,入退院月の比較ではBMWの入院月とFIMの入退院月で70代が90代に比べ有意に高かった(p<0.05)。また3項目の関連性ではBMWは運動器疾患が廃用症候群に比べ有意に高く(p<0.05),FIM・日常生活機能評価は運動器疾患が脳血管疾患,廃用症候群に比べ有意に高かった(p<0.0001,p<0.05)。日常生活機能評価は女性が男性に比べ有意に低かった(p<0.05)。
【考察】
超高齢社会の中,回復期病棟に入院する患者も高齢化してきており,その基本動作能力は低くなっている。実際に,対象者における入院月のBMWでは②寝返り(非患側)で25名(31%),③起き上がり(on elbow)で36名(45%),⑦立ち上がり(臀部挙上相)37名(46%),⑨歩行で50名(63%)が4点以下で介助を要した。基本動作能力は,ADLやQOLといった人間が生活を営むために必要な基本的な能力であり,その基本動作能力を向上させることは理学療法の目的とも言える。今回,BMW・FIM・日常生活機能評価全て入院月より退院月が有意に向上した。実際に対象高齢者の在宅復帰率は76%であり,これらの向上の影響は大きいと考える。また3つの相関関係も高い有意性を示し,それぞれの評価の関連性は強いことが示唆される。PT,OT,Nsとそれぞれ違う職種が評価を実施し,それぞれに相関がある評価であることは,BMWはひとつの評価指標として有用であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
超高齢社会である今日,チーム医療の中で理学療法士として独自で他職種に示すことが出来る指標を作成する上でひとつのカテゴリーとして基本動作に着目した。今後BMW自体は評価者間の再現性や信頼性などの検討が必要ではあるが,基本動作を中心に理学療法の効果を示していくことが,過去に示された基本動作における詳細な分析の重要性を再認識させ,その研究的意義を向上させると考える。
超高齢社会を迎え,回復期病棟では理学療法士,作業療法士,看護師等によるチーム医療が推進されている。各々の専門性を示す評価指標として,作業療法士は主にADLを他部門に示すFIMなどがあり,看護師は重症度を示す日常生活機能評価などがある。しかし動作レベルを評価する指標として,理学療法単独で他部門に示すための一般的に用いられている統一した評価指標がないのが現状である。また理学療法士法及び作業療法士法では,「理学療法とは…主としてその基本的動作能力の回復を図るために…」とあるが,その理学療法の目的とも言える基本動作能力を示す指標でさえ見つからない。前大会では,当院に入院している高齢者を対象に,当院独自で作成した基本動作評価表(以下BMW:Basic-motion Measure in Wajinkai-hospital)を使用し,「高齢者に適した運動課題の検討と運動課題が基本動作,トイレ動作に関連し在宅復帰率に及ぼす影響」,「FIM100点未満の高齢者において自宅退院を向上させるための患者要因の検討」を報告した。しかしBMW自体の有用性については報告できていない。そこで他部門が評価するFIM,日常生活機能評価との関連性を調べ,またBMWを含む3つの評価の向上が在宅復帰率に影響した要因のひとつである結果が得られたので報告する。
【方法】
対象は平成24年6月から1年間で当院回復期リハビリテーション病棟に入院した70歳以上の運動器疾患30名,脳血管疾患14名,廃用症候群(術後・肺炎等)36名の計80名(男性26名,女性54名),平均年齢84.79±5.69歳である。在宅復帰率は76%であった。方法は,BMW(PT評価項目),FIM(OT評価項目),日常生活機能評価(Ns評価項目)を入院月と退院月で比較,また毎月実施した総評価数226回(80名)で3つの評価項目の関連性を求めた。BMWとは,寝返り(①患側・②非患側),起き上がり(③on elbow・④on hand・⑤off hand),立ち上がり(⑥屈曲相・⑦臀部挙上相・⑧伸展相),⑨歩行の9項目を,FIMを参考に7段階尺度で点数化した評価表である。なお解析ソフトはSTAT VIEWを使用し,入院月と退院月の比較はt検定(対応あり),各項目の関連性はSpearmanの順位検定にて解析した。有意水準は全て5%とした。
【結果】
入院月と退院月の比較では,BMW・FIM・日常生活機能評価全て入院時より退院時が有意な改善を示した(p<0.0001)。また各評価の関連性は,BMWとFIMでは相関係数0.825(p<0.0001)であり,BMWと日常生活機能評価では相関係数-0.781(p<0.0001)で有意な相関関係を示した。年齢・性差等に関して,入退院月の比較ではBMWの入院月とFIMの入退院月で70代が90代に比べ有意に高かった(p<0.05)。また3項目の関連性ではBMWは運動器疾患が廃用症候群に比べ有意に高く(p<0.05),FIM・日常生活機能評価は運動器疾患が脳血管疾患,廃用症候群に比べ有意に高かった(p<0.0001,p<0.05)。日常生活機能評価は女性が男性に比べ有意に低かった(p<0.05)。
【考察】
超高齢社会の中,回復期病棟に入院する患者も高齢化してきており,その基本動作能力は低くなっている。実際に,対象者における入院月のBMWでは②寝返り(非患側)で25名(31%),③起き上がり(on elbow)で36名(45%),⑦立ち上がり(臀部挙上相)37名(46%),⑨歩行で50名(63%)が4点以下で介助を要した。基本動作能力は,ADLやQOLといった人間が生活を営むために必要な基本的な能力であり,その基本動作能力を向上させることは理学療法の目的とも言える。今回,BMW・FIM・日常生活機能評価全て入院月より退院月が有意に向上した。実際に対象高齢者の在宅復帰率は76%であり,これらの向上の影響は大きいと考える。また3つの相関関係も高い有意性を示し,それぞれの評価の関連性は強いことが示唆される。PT,OT,Nsとそれぞれ違う職種が評価を実施し,それぞれに相関がある評価であることは,BMWはひとつの評価指標として有用であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
超高齢社会である今日,チーム医療の中で理学療法士として独自で他職種に示すことが出来る指標を作成する上でひとつのカテゴリーとして基本動作に着目した。今後BMW自体は評価者間の再現性や信頼性などの検討が必要ではあるが,基本動作を中心に理学療法の効果を示していくことが,過去に示された基本動作における詳細な分析の重要性を再認識させ,その研究的意義を向上させると考える。