[P3-B-0924] 関節固定に後肢懸垂を加えることにより発生した筋萎縮に対する歩行訓練の影響
Keywords:後肢懸垂, 筋萎縮, トレッドミル
【はじめに,目的】
廃用性筋萎縮に関する実験は,関節の不動を関節固定法で再現されている。我々は,臥症時間が長い症例を想定して下肢を非荷重とする後肢懸垂法と関節固定を合わせて発生する筋萎縮に着目している。これまでの研究において,足関節の関節固定法による不動に後肢懸垂法による非荷重を合わせて関節拘縮の実験を行った。その結果,後肢懸垂に1日4時間の関節固定と20時間の自由運動を行った場合は関節拘縮が発生することが分かった。そこで本研究では,関節固定に及ぼす後肢懸垂の影響を筋萎縮に着目して調べる。その上で,関節固定に後肢懸垂を加えることにより生じた筋萎縮に対する歩行訓練の影響を検討した。
【方法】
対象は8週齢,体重220.2±6.6gのWistar系雌ラット18匹である。各個体は各群が6匹になるように,1日4時間の関節固定のみ行う「固定群」,1日4時間の関節固定と後肢懸垂を行う「固定懸垂群」,1日4時間の関節固定と後肢懸垂に加えて1日20分のトレッドミル歩行を行う「固定懸垂運動群」に振り分けた。実験期間は1週間である。関節固定は右下肢とし,左下肢は非固定肢とした。関節固定肢位は足関節最大底屈位である。後肢懸垂は尾部に直径1.0mmキルシュナー鋼線を刺入し,ナスカンフックを介して飼育ゲージ金網に掛けることで行った。4時間の関節固定実施時刻は9時から13時である。トレッドミル歩行に使用した機器はラット・マウス用トレッドミル(Colubus社製:Exer-6M)である。歩行速度は10m/minとし,歩行時間は20分とした。トレッドミル歩行の実施時刻は9時の関節固定を行う前とした。実験終了後に体重とヒラメ筋湿重量から相対重量比を求めた。また,HE染色により筋線維短径を測定した。関節固定におよぼす後肢懸垂の影響は固定群と固定懸垂群を比較した。関節固定に後肢懸垂を加えることにより生じた筋萎縮に対する歩行訓練の影響は固定懸垂群と固定懸垂運動群を比較した。統計処理は二次元配置分散分析を用いて,有意差が見られた場合は,事後検定としてScheffe法を用いた。有意差は5%未満を有意差ありと判定した。
【結果】
各群の実験開始前終了後の相対重量比(mg/g)は固定群では固定肢5.4±0.5,非固定肢5.7±0.5,固定懸垂群は固定肢4.3±0.3,非固定肢4.1±0.5,固定懸垂運動群は固定肢4.7±0.5,非固定肢4.7±0.7であった。筋線維短径(μm)は固定群では固定肢50.1±2.3,非固定肢50.7±3.35,固定懸垂群は固定肢43.5±3.7,非固定肢41.5±2.6,固定懸垂運動群は固定肢49.2±3.8,非固定肢45.9±2.9であった。各群とも固定肢と非固定肢に有意差はみられなかった。相対重量比と筋線維短径について,固定懸垂群は固定群に比べて有意な減少を示し,固定懸垂運動群は固定懸垂群に比べて有意な増加を示した。
【考察】
関節固定におよぼす後肢懸垂の影響は固定群と固定懸垂群を比較した。その結果,相対重量比と筋線維短径について,固定懸垂群は固定群に比べて有意な減少を示した。後肢懸垂は筋活動の低下や骨格筋のタンパク質の合成が著しく低下することが原因であると考えられる。次に,関節固定に後肢懸垂を加えることにより生じた筋萎縮に対する歩行訓練の影響は固定懸垂群と固定懸垂運動群を比較した。その結果,相対重量比と筋線維短径について,固定懸垂運動群は固定懸垂群に比べて有意な増加を示した。これは,20分のトレッドミル歩行で筋萎縮予防効果があったことを示している。関節固定は行っていない点が本研究とは異なるが,後肢懸垂により発生する筋萎縮は1日10分の荷重運動を2回行うことが有効であったとする報告と類似した結果であった。一方,後肢懸垂により筋線維は脆弱化し歩行訓練で筋損傷が発生するという報告がある。そのため今後は,歩行訓練によって予防できた筋線維の形態学的観察も合わせて実施する必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では,非荷重と不動の組み合わせが筋萎縮に悪影響をおよぼす事実を示した。さらに20分間の歩行訓練は,筋萎縮予防に対して有効的な手段となりえることを見出した。
廃用性筋萎縮に関する実験は,関節の不動を関節固定法で再現されている。我々は,臥症時間が長い症例を想定して下肢を非荷重とする後肢懸垂法と関節固定を合わせて発生する筋萎縮に着目している。これまでの研究において,足関節の関節固定法による不動に後肢懸垂法による非荷重を合わせて関節拘縮の実験を行った。その結果,後肢懸垂に1日4時間の関節固定と20時間の自由運動を行った場合は関節拘縮が発生することが分かった。そこで本研究では,関節固定に及ぼす後肢懸垂の影響を筋萎縮に着目して調べる。その上で,関節固定に後肢懸垂を加えることにより生じた筋萎縮に対する歩行訓練の影響を検討した。
【方法】
対象は8週齢,体重220.2±6.6gのWistar系雌ラット18匹である。各個体は各群が6匹になるように,1日4時間の関節固定のみ行う「固定群」,1日4時間の関節固定と後肢懸垂を行う「固定懸垂群」,1日4時間の関節固定と後肢懸垂に加えて1日20分のトレッドミル歩行を行う「固定懸垂運動群」に振り分けた。実験期間は1週間である。関節固定は右下肢とし,左下肢は非固定肢とした。関節固定肢位は足関節最大底屈位である。後肢懸垂は尾部に直径1.0mmキルシュナー鋼線を刺入し,ナスカンフックを介して飼育ゲージ金網に掛けることで行った。4時間の関節固定実施時刻は9時から13時である。トレッドミル歩行に使用した機器はラット・マウス用トレッドミル(Colubus社製:Exer-6M)である。歩行速度は10m/minとし,歩行時間は20分とした。トレッドミル歩行の実施時刻は9時の関節固定を行う前とした。実験終了後に体重とヒラメ筋湿重量から相対重量比を求めた。また,HE染色により筋線維短径を測定した。関節固定におよぼす後肢懸垂の影響は固定群と固定懸垂群を比較した。関節固定に後肢懸垂を加えることにより生じた筋萎縮に対する歩行訓練の影響は固定懸垂群と固定懸垂運動群を比較した。統計処理は二次元配置分散分析を用いて,有意差が見られた場合は,事後検定としてScheffe法を用いた。有意差は5%未満を有意差ありと判定した。
【結果】
各群の実験開始前終了後の相対重量比(mg/g)は固定群では固定肢5.4±0.5,非固定肢5.7±0.5,固定懸垂群は固定肢4.3±0.3,非固定肢4.1±0.5,固定懸垂運動群は固定肢4.7±0.5,非固定肢4.7±0.7であった。筋線維短径(μm)は固定群では固定肢50.1±2.3,非固定肢50.7±3.35,固定懸垂群は固定肢43.5±3.7,非固定肢41.5±2.6,固定懸垂運動群は固定肢49.2±3.8,非固定肢45.9±2.9であった。各群とも固定肢と非固定肢に有意差はみられなかった。相対重量比と筋線維短径について,固定懸垂群は固定群に比べて有意な減少を示し,固定懸垂運動群は固定懸垂群に比べて有意な増加を示した。
【考察】
関節固定におよぼす後肢懸垂の影響は固定群と固定懸垂群を比較した。その結果,相対重量比と筋線維短径について,固定懸垂群は固定群に比べて有意な減少を示した。後肢懸垂は筋活動の低下や骨格筋のタンパク質の合成が著しく低下することが原因であると考えられる。次に,関節固定に後肢懸垂を加えることにより生じた筋萎縮に対する歩行訓練の影響は固定懸垂群と固定懸垂運動群を比較した。その結果,相対重量比と筋線維短径について,固定懸垂運動群は固定懸垂群に比べて有意な増加を示した。これは,20分のトレッドミル歩行で筋萎縮予防効果があったことを示している。関節固定は行っていない点が本研究とは異なるが,後肢懸垂により発生する筋萎縮は1日10分の荷重運動を2回行うことが有効であったとする報告と類似した結果であった。一方,後肢懸垂により筋線維は脆弱化し歩行訓練で筋損傷が発生するという報告がある。そのため今後は,歩行訓練によって予防できた筋線維の形態学的観察も合わせて実施する必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では,非荷重と不動の組み合わせが筋萎縮に悪影響をおよぼす事実を示した。さらに20分間の歩行訓練は,筋萎縮予防に対して有効的な手段となりえることを見出した。