[P3-B-0934] 高齢女性の動脈スティフネスと生活体力との関係
Keywords:脈波伝播速度, 生活体力, 高齢者
【はじめに,目的】
現在,国内の年間死亡原因の約28%は心疾患,脳血管疾患などの動脈硬化性疾患であり,動脈硬化は加齢,運動能力低下により進行を加速させることが報告されている。また,加齢,喫煙,運動不足などの生活習慣により生活習慣病を惹起させる。Durenら(2008)は定期的に有酸素運動を実施する高齢者の動脈スティフネスが低いと報告しており,運動習慣の有無が動脈機能に影響を及ぼすことが明らかになっている。しかし,身体機能と動脈機能との関係については十分に検討されていない。そこで本研究では,高齢者の動脈スティフネスと身体機能との関係について検討した。
【方法】
対象者は,徳島県内在住の在宅自立女性高齢者309名(年齢73.1±5.0歳,身長152.2±5.1 cm,体重53. 3±7.9kg,体脂肪31.1±6.7%)であった。
動脈機能の測定は,血圧脈波検査装置を用いて,上腕-足首間脈波伝播速度(baPWV),収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),心拍数(HR)をそれぞれ測定した。身体機能については,地域自立高齢者の日常生活の動作能力を評価するために(財)明治厚生事業団体力医学研究所が考案した生活体力テストの実施マニュアルに準拠し,①起居動作能力,②歩行動作能力,③手腕作業能力,④身辺作業能力の4種目で構成される生活体力テストを実施した。統計処理については,baPWVと他の測定項目について,2要因間の関連にPearsonの相関関数を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
全ての被験者の動脈機能について,baPWVは1868.3±332.2cm・sec-1,SBPは138.5±38.1mmHg,DBPは82.2±15.2 mmHg,HRは73.4±11.1回・min-1であった。生活体力について,起居動作能力は7.4±2.9秒,歩行動作能力は8.4±1.7秒,手腕作業能力は37.0±19.5秒,および身辺作業能力は8.6±2.4秒であった。baPWVとの相関関係については,baPWVと手腕作業能力との間に相関関係は認められなかったが,baPWVと起居動作能力(r=0.213),baPWVと歩行能力(r=0.248),baPWVと身辺作業能力(r=0.168),baPWVと年齢(r=0.329),baPWVとSBP(r=0.161),baPWVとDBP(r=0.271),およびbaPWVとHR(r=0.21)との間にそれぞれ有意な相関関係が認められた(p<0.05)。
【考察】
本研究では,baPWVと生活体力テストの起居動作能力,歩行動作能力,および身辺作業能力との間に有意な相関関係が認められた。起居動作能力,歩行動作能力は下肢筋力,バランス能力,また,移動能力を反映する指標である。したがって,これらの能力が高いことは日常生活において身体活動量の増加につながることが推測され,これがbaPWVに影響を及ぼしたのではないかと考えられる。山本ら(2009)は,中高齢者の柔軟性とPWVとの間に有意な負の相関関係があることを報告している。本研究で実施した身辺作業能力は,主に柔軟性,バランスを反映した指標であり,baPWVと相関があった原因は骨格筋への習慣的な身体活動が一過性の交感神経興奮の反復刺激が慢性的に安静時の交感神経活動の低下を引き起こしている可能性が考えられる。一方,本研究では生活体力テストの手腕作業能力とbaPWVとの間に有意な相関は認められなかった。これは手腕作業能力が,主に手指の巧緻性を反映する指標であることが原因と考えられる。
このように自立高齢女性では,身体機能,特に起居動作能力,歩行動作能力,身辺作業能力が高いことがbaPWVを低値に示すことに関連し,動脈スティフネスの低下に関与することが明らかとなった。したがって,生活体力レベル,身体的生活機能レベルを維持することは,循環器疾患のリスクを減少する上で重要な要因であり,そのためにも定期的な運動習慣を身につけることが必要と考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
今回の結果から,自立機能が動脈スティフネスに影響を及ぼすことが明らかとなり,日常生活の中で身体機能を維持・亢進することが循環器疾患の予防につながることが示唆された。したがって,これらのことから,一次予防を目的とした病院でのリハビリテーションだけではなく,在宅高齢者に目を向け,身体機能の低下を予防し,高齢者生活の自立性を高めていくことが生活体力を向上させる要因となるため,今後も積極的に介入していく必要性があると考えられる。
現在,国内の年間死亡原因の約28%は心疾患,脳血管疾患などの動脈硬化性疾患であり,動脈硬化は加齢,運動能力低下により進行を加速させることが報告されている。また,加齢,喫煙,運動不足などの生活習慣により生活習慣病を惹起させる。Durenら(2008)は定期的に有酸素運動を実施する高齢者の動脈スティフネスが低いと報告しており,運動習慣の有無が動脈機能に影響を及ぼすことが明らかになっている。しかし,身体機能と動脈機能との関係については十分に検討されていない。そこで本研究では,高齢者の動脈スティフネスと身体機能との関係について検討した。
【方法】
対象者は,徳島県内在住の在宅自立女性高齢者309名(年齢73.1±5.0歳,身長152.2±5.1 cm,体重53. 3±7.9kg,体脂肪31.1±6.7%)であった。
動脈機能の測定は,血圧脈波検査装置を用いて,上腕-足首間脈波伝播速度(baPWV),収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),心拍数(HR)をそれぞれ測定した。身体機能については,地域自立高齢者の日常生活の動作能力を評価するために(財)明治厚生事業団体力医学研究所が考案した生活体力テストの実施マニュアルに準拠し,①起居動作能力,②歩行動作能力,③手腕作業能力,④身辺作業能力の4種目で構成される生活体力テストを実施した。統計処理については,baPWVと他の測定項目について,2要因間の関連にPearsonの相関関数を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
全ての被験者の動脈機能について,baPWVは1868.3±332.2cm・sec-1,SBPは138.5±38.1mmHg,DBPは82.2±15.2 mmHg,HRは73.4±11.1回・min-1であった。生活体力について,起居動作能力は7.4±2.9秒,歩行動作能力は8.4±1.7秒,手腕作業能力は37.0±19.5秒,および身辺作業能力は8.6±2.4秒であった。baPWVとの相関関係については,baPWVと手腕作業能力との間に相関関係は認められなかったが,baPWVと起居動作能力(r=0.213),baPWVと歩行能力(r=0.248),baPWVと身辺作業能力(r=0.168),baPWVと年齢(r=0.329),baPWVとSBP(r=0.161),baPWVとDBP(r=0.271),およびbaPWVとHR(r=0.21)との間にそれぞれ有意な相関関係が認められた(p<0.05)。
【考察】
本研究では,baPWVと生活体力テストの起居動作能力,歩行動作能力,および身辺作業能力との間に有意な相関関係が認められた。起居動作能力,歩行動作能力は下肢筋力,バランス能力,また,移動能力を反映する指標である。したがって,これらの能力が高いことは日常生活において身体活動量の増加につながることが推測され,これがbaPWVに影響を及ぼしたのではないかと考えられる。山本ら(2009)は,中高齢者の柔軟性とPWVとの間に有意な負の相関関係があることを報告している。本研究で実施した身辺作業能力は,主に柔軟性,バランスを反映した指標であり,baPWVと相関があった原因は骨格筋への習慣的な身体活動が一過性の交感神経興奮の反復刺激が慢性的に安静時の交感神経活動の低下を引き起こしている可能性が考えられる。一方,本研究では生活体力テストの手腕作業能力とbaPWVとの間に有意な相関は認められなかった。これは手腕作業能力が,主に手指の巧緻性を反映する指標であることが原因と考えられる。
このように自立高齢女性では,身体機能,特に起居動作能力,歩行動作能力,身辺作業能力が高いことがbaPWVを低値に示すことに関連し,動脈スティフネスの低下に関与することが明らかとなった。したがって,生活体力レベル,身体的生活機能レベルを維持することは,循環器疾患のリスクを減少する上で重要な要因であり,そのためにも定期的な運動習慣を身につけることが必要と考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
今回の結果から,自立機能が動脈スティフネスに影響を及ぼすことが明らかとなり,日常生活の中で身体機能を維持・亢進することが循環器疾患の予防につながることが示唆された。したがって,これらのことから,一次予防を目的とした病院でのリハビリテーションだけではなく,在宅高齢者に目を向け,身体機能の低下を予防し,高齢者生活の自立性を高めていくことが生活体力を向上させる要因となるため,今後も積極的に介入していく必要性があると考えられる。