第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター3

運動生理学2

Sun. Jun 7, 2015 10:50 AM - 11:50 AM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-B-0941] ドロップジャンプテスト着地時における下腿内側傾斜角度に性差が及ぼす影響

村澤実香1, 金井章2, 今泉史生1, 蒲原元1, 木下由紀子1, 四ノ宮祐介1, 河合理江子1, 上原卓也1, 江﨑雅彰1 (1.豊橋整形外科江崎病院, 2.豊橋創造大学保健医療学部理学療法学科)

Keywords:ドロップジャンプ, 下腿内側傾斜, 性差

【はじめに】スポーツ場面における重篤な外傷の一つとしてあげられる前十字靭帯損傷(以下,ACL損傷)の発生率は女性では男性に比べ2から8倍高いといわれている。女性に多い理由として,Q-angleが大きい,全身弛緩性を有する者が多い,膝外反位を呈するものが多いことなどが報告されている。受傷機転には,ジャンプ着地動作,減速動作,カッティング動作などが指摘されている。その中でもジャンプ着地動作において,Noyesらはドロップジャンプテスト(以下DJT)では,女性において股関節内転,膝関節外反角度が増加したと報告しているが性差による動作パターンの影響についての検討はなされていない。そこで本研究では,DJT着地時における下腿内側傾斜角度に性差が及ぼす影響について検討することを目的とした。
【方法】対象は下肢運動機能に問題が無く,週1回以上レクリエーションレベル以上のスポーツを行っている健常者40名(男性16名,女性24名,平均年齢17.6±3.1歳,平均身長162.9±8.4cm,平均体重57.3±8.7kg)とした。DJTは,高さ30cmの台から前方に飛び降り,両脚での着地後に両手を振り上げ真上にジャンプし,再び着地し立位姿勢となるまでの動作とした。計測は測定前に充分練習した後3回施行し,台から飛び降りた際の着地時における左膝関節最大屈曲時を解析対象とした。真上にジャンプできなかったり,着地後にバランスを崩した場合は再度測定を行なった。動作の計測には,三次元動作解析装置VICON-MX(VICON MOTION SYSTEMS社製)および床反力計OR6-7(AMTI社製)を用い,関節角度,下腿内側傾斜角度(前額面における垂線に対する内側への傾斜),関節モーメント,足圧中心,床反力,上前腸骨間距離,重心の高さを算出した。関節モーメントは得られた値を体重で除し,上前腸骨間距離と重心の高さは得られた値を身長で除して正規化した。筋力は股関節屈曲,伸展,外転,内転,膝関節屈曲,伸展,足関節背屈,底屈の等尺性最大筋力を測定した。筋力は筋力計μtasMT-1(ANIMA社製)を用いて計測し,得られた値を体重で除して正規化した。統計学的手法は対応のないt検定を用いた。
【結果】男女の比較では(男性群,女性群),下腿内側傾斜角度(-1.7±3.9,8.2±5.6°),上前腸骨間距離(0.15±0.1,0.16±0.1mm/cm,),骨盤前傾角度(12.1±7.0,19.6±7.8°),股関節内転モーメント(0.7±2.2,4.5±4.4 Nm/kg),重心の高さ(3.6±0.4,3.9±0.2mm/cm)が女性群で有意(P<0.05)に高値を示した。脊柱屈曲角度(27.5±11.9,12.2±11.7°),胸郭前傾角度(40.0±14.0,31.8±9.5°),股関節外転角度(-5.1±3.5,-0.3±5.7°),足部外転角度(7.0±4.1,-1.3±4.4°)が男性群で有意に高値を示した。筋力(N/kg)は,股関節伸展(5.6±1.2,5.0±1.2),股関節外転(4.4±0.9,3.6±0.9),股関節内転(4.2±1.0,3.3±1.1),膝関節屈曲(1.5±0.2,1.0±0.2),膝関節伸展(2.9±0.5,2.5±0.5),足関節背屈(3.1±0.6,2.6±0.5),足関節底屈(8.7±1.8,7.0±1.3)の各筋力が男性群で有意(P<0.05)に高値を示した。
【考察】女性は男性に比べて骨盤前傾角度が有意に高値を示し,脊柱屈曲,胸郭前傾角度が有意に低値を示した。一般的には,ジャンプ跳躍高を上げるためには,重心位置を低くする必要があるが,今回女性は男性と比較して重心位置は有意に高くなっていた。このことは女性は男性と比較し,股関節屈曲筋力以外の下肢筋力が有意に低値を示していたことから,重心位置を低くすることが困難であるためと考えられた。そのため,骨盤前傾角度を増加して,大殿筋とハムストリングスの張力を高めジャンプ跳躍動作に対応していると考えられた。また女性において,股関節内転モーメントが有意に高値を示したのは,上前腸骨間距離で表される骨盤幅の広さが要因と考えられ,それに伴い下腿内側傾斜角度も増加したと考えられた。そのため着地時には下腿内側傾斜角度を軽減させるために股関節外転角度を増加させ,床反力が股関節中心の近くを通るような着地を指導する事が予防において重要と考えられた。
【理学療法学研究としての意義】DJT着地時における性差が下腿内側傾斜角度に及ぼす影響を検討することにより,ACL損傷の予防の一助となることが考えられた。