[P3-B-0944] 椅子座位における腰背部の筋活動および循環動態
~4種類のクッションを用いた比較~
キーワード:座位姿勢, 筋電図, 循環動態
【はじめに,目的】
椅子座位が長時間にわたると臀部や腰背部に痛みが出現する事は多くの人が経験するところである。近年,椅子座位における安定性の向上や不快感の軽減を謳った種々のクッションがあるが実際にそれらを用いることが腰背部の筋活動や循環動態にどのような影響を与えるかを示した報告は少ない。
本研究の目的は,クッションを用いない椅子座位と比較し4種類のクッションを用いた椅子座位が腰背部の筋活動および循環動態においてどのような変化を示すか明らかにすることである。
【方法】
対象は,腰痛・背部痛の既往のない健常成人10名(男性6名,女性4名)である。
使用したクッションは体圧を分散させることを目的に臀部および腰部に低反発素材を用いたもの(A),底面が弯曲しており使用者自身が能動的に姿勢を変化させる事で腰部痛の軽減を図るもの(B),臀部・腰部に加え骨盤を左右からサポートすることで骨盤の左右への傾きを抑え腰椎の前弯をサポートするもの(C),Cの機能に加えバックレストが高く下部胸郭までサポートするもの(D)。以上,4つのクッションを使用した際の腰背部の筋活動・循環動態をクッションを使用しない場合と比較検討した。
座位保持時間は30分とし,それぞれの測定間には十分な休憩時間を設けた。また,クッションを使用する順番は順序の系統誤差を均等にするため循環法で決定した。
筋活動は表面筋電計(Noraxon社製テレマイオDTS)を用いT7.9.11,L1.3.5レベルの脊柱起立筋および多裂筋・大殿筋の計8か所から導出したデータを整流化およびノイズ低減処理したのち%MVCを算出し比較検討し,周波数の解析も合わせて実施した。また循環動態はHAMAMATSU社製PocketNIRSを用いT9およびL3レベルの脊柱起立筋筋腹部で計測した。統計的解析は一般線形モデルを用い有意水準は5%とした。
また,測定終了後に背部・腰部・臀部にどの程度の痛みを感じたかをクッションを使用しなかった場合を5点とし0から10の11段階で回答して頂いた。
【結果】
クッションを使用しない条件と比較しAはT11の筋活動が9.5%。L1の筋活動9.2%それぞれ減弱し腰部の循環動態減少が緩やかであった(p<0.05)。BはT7の筋活動が43.5%。T9の筋活動が21.5%増加し背部の循環動態が増加した(p<0.05)。CはL5の筋活動が27.0%増加し腰部の循環量が増加した(p<0.05)。DはL3の筋活動が13.4%。L5の筋活動が23.0%増加し腰部の循環動態が増加した(p<0.05)。いずれの条件下でも筋の周波数帯の有意な変化は見られなかった。痛みの点数がもっとも低かったのは背部・腰部・臀部いずれもAであった。もっとも点数が高かったのは背部がB,腰部がC,臀部がBであった。
【考察】
今回使用した4種類のクッションはそれぞれ背部の筋活動が増加するタイプ,腰部の筋活動が増加するタイプ,腰背部の筋活動が減弱するタイプに大別された。Bにおいて背部の循環動態増加が,C.Dにおいて腰部の循環動態増加が観察されたが,これは筋電図の解析からも同部位の筋活動量が増加したためと考えられた。また,同部位は痛みの点数が高くなっており周波数帯の変化は見られなかったものの筋疲労により痛みが出現している可能性が示唆された。今回の計測においては30分程度の椅子座位では周波数帯の変化が起きる程の筋疲労には至っていない可能性もあり,今後は筋疲労を評価する方法の検討が必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
椅子座位はクッションの有無およびクッションの種類により腰背部の筋活動や循環動態に差が出ること,また筋疲労やそれに伴う痛みに影響することが示唆された。クッションの利用にあたっては,その機能を十分に把握し使用する必要があると考えられる。
椅子座位が長時間にわたると臀部や腰背部に痛みが出現する事は多くの人が経験するところである。近年,椅子座位における安定性の向上や不快感の軽減を謳った種々のクッションがあるが実際にそれらを用いることが腰背部の筋活動や循環動態にどのような影響を与えるかを示した報告は少ない。
本研究の目的は,クッションを用いない椅子座位と比較し4種類のクッションを用いた椅子座位が腰背部の筋活動および循環動態においてどのような変化を示すか明らかにすることである。
【方法】
対象は,腰痛・背部痛の既往のない健常成人10名(男性6名,女性4名)である。
使用したクッションは体圧を分散させることを目的に臀部および腰部に低反発素材を用いたもの(A),底面が弯曲しており使用者自身が能動的に姿勢を変化させる事で腰部痛の軽減を図るもの(B),臀部・腰部に加え骨盤を左右からサポートすることで骨盤の左右への傾きを抑え腰椎の前弯をサポートするもの(C),Cの機能に加えバックレストが高く下部胸郭までサポートするもの(D)。以上,4つのクッションを使用した際の腰背部の筋活動・循環動態をクッションを使用しない場合と比較検討した。
座位保持時間は30分とし,それぞれの測定間には十分な休憩時間を設けた。また,クッションを使用する順番は順序の系統誤差を均等にするため循環法で決定した。
筋活動は表面筋電計(Noraxon社製テレマイオDTS)を用いT7.9.11,L1.3.5レベルの脊柱起立筋および多裂筋・大殿筋の計8か所から導出したデータを整流化およびノイズ低減処理したのち%MVCを算出し比較検討し,周波数の解析も合わせて実施した。また循環動態はHAMAMATSU社製PocketNIRSを用いT9およびL3レベルの脊柱起立筋筋腹部で計測した。統計的解析は一般線形モデルを用い有意水準は5%とした。
また,測定終了後に背部・腰部・臀部にどの程度の痛みを感じたかをクッションを使用しなかった場合を5点とし0から10の11段階で回答して頂いた。
【結果】
クッションを使用しない条件と比較しAはT11の筋活動が9.5%。L1の筋活動9.2%それぞれ減弱し腰部の循環動態減少が緩やかであった(p<0.05)。BはT7の筋活動が43.5%。T9の筋活動が21.5%増加し背部の循環動態が増加した(p<0.05)。CはL5の筋活動が27.0%増加し腰部の循環量が増加した(p<0.05)。DはL3の筋活動が13.4%。L5の筋活動が23.0%増加し腰部の循環動態が増加した(p<0.05)。いずれの条件下でも筋の周波数帯の有意な変化は見られなかった。痛みの点数がもっとも低かったのは背部・腰部・臀部いずれもAであった。もっとも点数が高かったのは背部がB,腰部がC,臀部がBであった。
【考察】
今回使用した4種類のクッションはそれぞれ背部の筋活動が増加するタイプ,腰部の筋活動が増加するタイプ,腰背部の筋活動が減弱するタイプに大別された。Bにおいて背部の循環動態増加が,C.Dにおいて腰部の循環動態増加が観察されたが,これは筋電図の解析からも同部位の筋活動量が増加したためと考えられた。また,同部位は痛みの点数が高くなっており周波数帯の変化は見られなかったものの筋疲労により痛みが出現している可能性が示唆された。今回の計測においては30分程度の椅子座位では周波数帯の変化が起きる程の筋疲労には至っていない可能性もあり,今後は筋疲労を評価する方法の検討が必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
椅子座位はクッションの有無およびクッションの種類により腰背部の筋活動や循環動態に差が出ること,また筋疲労やそれに伴う痛みに影響することが示唆された。クッションの利用にあたっては,その機能を十分に把握し使用する必要があると考えられる。