[P3-B-0951] 圧迫骨折の再発リスク因子について
圧迫骨折の再発要因の発見を目指して
Keywords:脊椎圧迫骨折, 再発, リスク因子
【はじめに,目的】
高齢者の骨折の中で,最も頻度の高いものは圧迫骨折であり,当院でも入院数の非常に多い疾患と言える。また,一度圧迫骨折によって入院した症例は,退院後も再発するリスクが高く,何度も再発,入院する症例を経験する。その圧迫骨折の再発リスクが高い原因として,一般的に椎体圧潰による脊椎アライメントの変化や骨粗鬆症などが言われている。しかし,理学療法範囲外の因子であるため,再発リスクについては理学療法士として関与出来ていない現状がある。そのため,改めて圧迫骨折のリスク因子と再発リスクの因果関係について検証し,今後の圧迫骨折の理学療法の展開に繋げていくことを目的とし,研究に取り組んだ。
【方法】
対 象は当院に胸腰椎圧迫骨折で入院した65歳以上の高齢者で,今回の入院が初めての圧迫骨折患者(以下より初回圧迫骨折患者とする)11名,過去に圧迫骨折の既往のある患者(以下より再発圧迫骨折患者)5名の合計16名で,悪性腫瘍からの骨転移や寝たきり患者,意識レベルの低い患者や圧迫骨折の診断にて入院したものの,発症より2週間以上経過しての入院の場合や,陳旧性の圧迫骨折による入院患者は除外した。内訳としては,初回圧迫骨折患者の内,女性8名,男性3名,平均年齢81.7歳±9.3歳で,再発圧迫骨折患者は全て女性で4名,平均年齢81.2歳±5.9歳であった。
期間:平成26年6月17日~平成27年11月1日までのおよそ4カ月半とした。
調査方法は,各担当によるカルテ情報収集,本人・家族聞き取り後のチェックリスト記入とした。
調査項目は,年齢や性別,身長,体重,BMI,生化学検査(アルブミン値,ヘモグロビン値,総蛋白値),骨折レベル(高位),受傷起点,認知症の有無(HDS-R,MMSE点数),入院から歩行開始・入院から離床開始までの期間,入院前の移動方法(介助量含む),既往歴の有無(高齢者4大骨折,DM,関節リウマチ,脳卒中)を挙げ,圧迫骨折再発患者と今回の入院が初めての圧迫骨折患者(以下より初回圧迫骨折患者とする)の群間比較を行った。
統計学的検討は,Mann-WhitneyのU検定にて初回圧迫骨折患者と再発圧迫骨折患者を説明変数,各調査項目を目的変数に設定し,危険率5%未満を有意差ありとした。
【結果】
各項目の群間比較において,入院から歩行開始までの期間は初回圧迫骨折患者の中央値6日,再発圧迫骨折患者の中央値10日で,有意差あり(P=0.02)との結果を得た。
また総蛋白に関しては,初回圧迫骨折患者の中央値7g/dl,再発圧迫骨折患者の中央値6.6g/dlとMann-WhitneyのU検定では有意差は認められなかったが(P=0.2),検出力の低下するメデイアン分析において有意差あり(P=0.02)との結果であった。
【考察】発圧迫骨折患者と初回圧迫骨折患者の比較において,入院から離床までの期間,在院日数の項目では有意差がなく,入院から歩行開始までの期間の項目のみ有意差ありとの結果が出た。その要因として,筋力などの身体機能面の違いが考えられる。離床に関しては,介助によって車椅子移乗行うため,身体機能面の差は出づらく,在院日数に関しては,身体機能面だけでなく,自宅や家族因子などの背景因子の要素が在院日数を大きく左右するため,入院から歩行開始期間のみ有意差がみられ,その原因は入院歴などによる身体機能面の低下であると考えられる。
また総蛋白に関して有意差ありとの結果がみられたことは,初回圧迫骨折患者に比べて再発圧迫骨折患者の方が,栄養面において不良な状態であることを指し示している。これは,上記で述べたように,圧迫骨折による入院歴などから栄養状態が退院後も不良であったことが考えられる。前回圧迫骨折による炎症が蛋白質を消耗し,また入院生活による栄養不良によってこのような結果になったと考えられ,昨今注目を浴びている栄養学の観点からも圧迫骨折患者に対するアプローチを行う事が重要であると捉えることが出来る。しかし,アルブミン値においては有意差がなく,アルブミンの血中半減期が長いことや骨粗鬆症に関わるエストロゲンと蛋白質との関係などは,今後の研究の課題である。
【理学療法学研究としての意義】
再発圧迫骨折患者は初回圧迫骨折患者に比べて,歩行開始時期は遅れるが,大きく在院日数などには差はないことが判明した。しかし,栄養面などにおいて群間の差が認められ,早期退院を目指すために,また再発を予防するためにも栄養学を考慮した理学療法アプローチを進めていく必要があると考える。
高齢者の骨折の中で,最も頻度の高いものは圧迫骨折であり,当院でも入院数の非常に多い疾患と言える。また,一度圧迫骨折によって入院した症例は,退院後も再発するリスクが高く,何度も再発,入院する症例を経験する。その圧迫骨折の再発リスクが高い原因として,一般的に椎体圧潰による脊椎アライメントの変化や骨粗鬆症などが言われている。しかし,理学療法範囲外の因子であるため,再発リスクについては理学療法士として関与出来ていない現状がある。そのため,改めて圧迫骨折のリスク因子と再発リスクの因果関係について検証し,今後の圧迫骨折の理学療法の展開に繋げていくことを目的とし,研究に取り組んだ。
【方法】
期間:平成26年6月17日~平成27年11月1日までのおよそ4カ月半とした。
調査方法は,各担当によるカルテ情報収集,本人・家族聞き取り後のチェックリスト記入とした。
調査項目は,年齢や性別,身長,体重,BMI,生化学検査(アルブミン値,ヘモグロビン値,総蛋白値),骨折レベル(高位),受傷起点,認知症の有無(HDS-R,MMSE点数),入院から歩行開始・入院から離床開始までの期間,入院前の移動方法(介助量含む),既往歴の有無(高齢者4大骨折,DM,関節リウマチ,脳卒中)を挙げ,圧迫骨折再発患者と今回の入院が初めての圧迫骨折患者(以下より初回圧迫骨折患者とする)の群間比較を行った。
統計学的検討は,Mann-WhitneyのU検定にて初回圧迫骨折患者と再発圧迫骨折患者を説明変数,各調査項目を目的変数に設定し,危険率5%未満を有意差ありとした。
【結果】
各項目の群間比較において,入院から歩行開始までの期間は初回圧迫骨折患者の中央値6日,再発圧迫骨折患者の中央値10日で,有意差あり(P=0.02)との結果を得た。
また総蛋白に関しては,初回圧迫骨折患者の中央値7g/dl,再発圧迫骨折患者の中央値6.6g/dlとMann-WhitneyのU検定では有意差は認められなかったが(P=0.2),検出力の低下するメデイアン分析において有意差あり(P=0.02)との結果であった。
【考察】発圧迫骨折患者と初回圧迫骨折患者の比較において,入院から離床までの期間,在院日数の項目では有意差がなく,入院から歩行開始までの期間の項目のみ有意差ありとの結果が出た。その要因として,筋力などの身体機能面の違いが考えられる。離床に関しては,介助によって車椅子移乗行うため,身体機能面の差は出づらく,在院日数に関しては,身体機能面だけでなく,自宅や家族因子などの背景因子の要素が在院日数を大きく左右するため,入院から歩行開始期間のみ有意差がみられ,その原因は入院歴などによる身体機能面の低下であると考えられる。
また総蛋白に関して有意差ありとの結果がみられたことは,初回圧迫骨折患者に比べて再発圧迫骨折患者の方が,栄養面において不良な状態であることを指し示している。これは,上記で述べたように,圧迫骨折による入院歴などから栄養状態が退院後も不良であったことが考えられる。前回圧迫骨折による炎症が蛋白質を消耗し,また入院生活による栄養不良によってこのような結果になったと考えられ,昨今注目を浴びている栄養学の観点からも圧迫骨折患者に対するアプローチを行う事が重要であると捉えることが出来る。しかし,アルブミン値においては有意差がなく,アルブミンの血中半減期が長いことや骨粗鬆症に関わるエストロゲンと蛋白質との関係などは,今後の研究の課題である。
【理学療法学研究としての意義】
再発圧迫骨折患者は初回圧迫骨折患者に比べて,歩行開始時期は遅れるが,大きく在院日数などには差はないことが判明した。しかし,栄養面などにおいて群間の差が認められ,早期退院を目指すために,また再発を予防するためにも栄養学を考慮した理学療法アプローチを進めていく必要があると考える。