[P3-B-0960] 日本語版FreBAQの信頼性と妥当性の検討に関する予備的研究
Keywords:慢性腰痛, FreBAQ, 妥当性
【はじめに,目的】
難治性疼痛疾患である複合性局所疼痛症候群患者において,患肢を実際よりも大きく感じる身体イメージの異常や患肢をどのように動かしたらいいのかわからない運動イメージの異常などの自己身体の知覚異常が生じることが報告されており,身体知覚異常は難治性疼痛の一要因であると考えられている。また,複合性局所疼痛症候群患者において,このような自己身体知覚の改善を目的とした治療が有効である。このような背景から,自己身体知覚異常を評価する質問紙が開発されており,この質問紙が治療方針を決定する一助となっている。慢性腰痛患者においても「腰部が重たく感じる」,「腫れているように感じる」などの複合性局所疼痛症候群と類似した身体イメージや運動イメージの異常などの自己身体知覚異常が認められており,慢性化の一要因と考えられている。近年,慢性腰痛患者において,自己身体知覚異常を評価する質問紙であるFremantle Back Awareness Questionnaire(FreBAQ)が開発され,臨床症状との関連が報告されている。我々は原作者の許可を得て,言語的妥当性を担保した日本語版FreBAQを作成した。今回,日本語版FreBAQの信頼性と妥当性の検討に関する予備的研究を行い,さらに,FreBAQに影響する因子を検討した。
【方法】
対象は18歳以上80歳未満で,腰部痛が6ヶ月以上持続する男性2名,女性15名の17名(平均年齢63.5±12.7歳)とした。除外基準は,腰部の変形が著名な者,神経根性疼痛を有する者とした。日本語版FreBAQは計9項目(腰が自分の体の一部でないように感じるか,動作時の腰の動きや姿勢を把握できるかなど,腰に対する身体所有感に関する項目5項目,腰を腫れたり縮んだりしたように感じるかなど,身体イメージに関する項目4項目)からなる。この日本語版FreBAQの内的整合性をCronbachのα係数を算出して検討した。Cronbachのα係数は0.7以上を内的妥当性があると報告されている。さらに,妥当性を検討するために,Roland-Morris Disability Questionnaire(RDQ),Pain Catastrophizing Scale(PCS),Tampa Scale for Kinesiophobia(TSK),Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を評価し,日本語版FreBAQとの関連をPearsonの積率相関係数を用いて検討した。さらに,FreBAQに影響する因子を検討するために,骨盤可動性,メンタルローテーション課題時の正確性と反応性,疼痛強度(安静時,長時間座位時,動作時)を計測した。骨盤可動性はPALM(Performance Attainment Associates社製)にて上前腸骨棘と上後腸骨棘を指標に前傾,後傾の最大角度を左右各々測定し,疼痛強度の強い方を疼痛側,対側を非疼痛側とした。メンタルローテーションはiPad用アプリ(Recognise Back;http://www.noigroup.com/en/Product/BTRAPP)にて10枚の画像での練習を行った後,40枚の画像を用い課題を実施して評価した。疼痛強度はVisual analogue scale(VAS)を用いて左右各々評価した。これらの項目と日本語版FreBAQとの関連をPearsonの積率相関係数を用いて検討した。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
Cronbachのα係数は0.71であった。日本語版FreBAQの総得点の平均は11.8±5.7,中央値は13(0-19)であった。質問紙との相関は,RDQ,TSKとの間にそれぞれ有意な正の相関関係(r=0.543,0.544,p<0.05)を認めた。日本語版FreBAQと機能評価との相関では,骨盤前傾角度(疼痛側:r=-0.570,非疼痛側:r=-0.553,p<0.05)と有意な相関関係を認め,骨盤後傾角度,メンタルローテーション課題時の正確性および反応性,疼痛強度との間に有意な相関関係は認められなかった。
【考察】
Cronbackのα係数が0.7以上であったことから内的整合性が確認された。原作版での先行研究における慢性腰痛群での平均は10.8,中央値は11(0-26)であり,今回の日本語版FreBAQの値は原作版と近似していた。また,RDQ,TSKとの間に有意な相関関係を認め,日本語版FreBAQが妥当性を有する質問紙であることが示唆された。さらに,FreBAQは骨盤前傾角度と有意な相関関係を認め,機能的な可動性が自己身体知覚に影響している可能性が示唆された。今後,症例数を増やし,さらなる信頼性と妥当性の検討が必要である。
【理学療法学研究としての意義】
腰痛患者における自己身体知覚異常を評価する質問票は本邦では存在しなかった。信頼性と妥当性の担保された質問紙を開発することで,より簡便に身体知覚異常を評価することが可能となり,治療戦略の一助となり得る点。
難治性疼痛疾患である複合性局所疼痛症候群患者において,患肢を実際よりも大きく感じる身体イメージの異常や患肢をどのように動かしたらいいのかわからない運動イメージの異常などの自己身体の知覚異常が生じることが報告されており,身体知覚異常は難治性疼痛の一要因であると考えられている。また,複合性局所疼痛症候群患者において,このような自己身体知覚の改善を目的とした治療が有効である。このような背景から,自己身体知覚異常を評価する質問紙が開発されており,この質問紙が治療方針を決定する一助となっている。慢性腰痛患者においても「腰部が重たく感じる」,「腫れているように感じる」などの複合性局所疼痛症候群と類似した身体イメージや運動イメージの異常などの自己身体知覚異常が認められており,慢性化の一要因と考えられている。近年,慢性腰痛患者において,自己身体知覚異常を評価する質問紙であるFremantle Back Awareness Questionnaire(FreBAQ)が開発され,臨床症状との関連が報告されている。我々は原作者の許可を得て,言語的妥当性を担保した日本語版FreBAQを作成した。今回,日本語版FreBAQの信頼性と妥当性の検討に関する予備的研究を行い,さらに,FreBAQに影響する因子を検討した。
【方法】
対象は18歳以上80歳未満で,腰部痛が6ヶ月以上持続する男性2名,女性15名の17名(平均年齢63.5±12.7歳)とした。除外基準は,腰部の変形が著名な者,神経根性疼痛を有する者とした。日本語版FreBAQは計9項目(腰が自分の体の一部でないように感じるか,動作時の腰の動きや姿勢を把握できるかなど,腰に対する身体所有感に関する項目5項目,腰を腫れたり縮んだりしたように感じるかなど,身体イメージに関する項目4項目)からなる。この日本語版FreBAQの内的整合性をCronbachのα係数を算出して検討した。Cronbachのα係数は0.7以上を内的妥当性があると報告されている。さらに,妥当性を検討するために,Roland-Morris Disability Questionnaire(RDQ),Pain Catastrophizing Scale(PCS),Tampa Scale for Kinesiophobia(TSK),Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を評価し,日本語版FreBAQとの関連をPearsonの積率相関係数を用いて検討した。さらに,FreBAQに影響する因子を検討するために,骨盤可動性,メンタルローテーション課題時の正確性と反応性,疼痛強度(安静時,長時間座位時,動作時)を計測した。骨盤可動性はPALM(Performance Attainment Associates社製)にて上前腸骨棘と上後腸骨棘を指標に前傾,後傾の最大角度を左右各々測定し,疼痛強度の強い方を疼痛側,対側を非疼痛側とした。メンタルローテーションはiPad用アプリ(Recognise Back;http://www.noigroup.com/en/Product/BTRAPP)にて10枚の画像での練習を行った後,40枚の画像を用い課題を実施して評価した。疼痛強度はVisual analogue scale(VAS)を用いて左右各々評価した。これらの項目と日本語版FreBAQとの関連をPearsonの積率相関係数を用いて検討した。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
Cronbachのα係数は0.71であった。日本語版FreBAQの総得点の平均は11.8±5.7,中央値は13(0-19)であった。質問紙との相関は,RDQ,TSKとの間にそれぞれ有意な正の相関関係(r=0.543,0.544,p<0.05)を認めた。日本語版FreBAQと機能評価との相関では,骨盤前傾角度(疼痛側:r=-0.570,非疼痛側:r=-0.553,p<0.05)と有意な相関関係を認め,骨盤後傾角度,メンタルローテーション課題時の正確性および反応性,疼痛強度との間に有意な相関関係は認められなかった。
【考察】
Cronbackのα係数が0.7以上であったことから内的整合性が確認された。原作版での先行研究における慢性腰痛群での平均は10.8,中央値は11(0-26)であり,今回の日本語版FreBAQの値は原作版と近似していた。また,RDQ,TSKとの間に有意な相関関係を認め,日本語版FreBAQが妥当性を有する質問紙であることが示唆された。さらに,FreBAQは骨盤前傾角度と有意な相関関係を認め,機能的な可動性が自己身体知覚に影響している可能性が示唆された。今後,症例数を増やし,さらなる信頼性と妥当性の検討が必要である。
【理学療法学研究としての意義】
腰痛患者における自己身体知覚異常を評価する質問票は本邦では存在しなかった。信頼性と妥当性の担保された質問紙を開発することで,より簡便に身体知覚異常を評価することが可能となり,治療戦略の一助となり得る点。