[P3-B-0969] 脊椎圧迫骨折患者におけるエネルギー摂取量と歩行能力との関連
キーワード:栄養, エネルギー摂取量, 歩行
【はじめに,目的】
脊椎圧迫骨折では,受傷後に保存療法として安静臥床を強いられることが少なくない。そのような場合,臥床状態での食事摂取を余儀なくされるが故に食べにくさや疼痛などにより食欲が低下を訴える患者を多く見受ける。エネルギー摂取量の低下により低栄養に陥ると,リハビリテーション(以下,リハ)の帰結に影響を与える可能性がある。高齢の入院患者や大腿骨近位部骨折患者に関しては,入院後に食事摂取量が低下し,低栄養を認めることにより予後に影響を及ぼすとの報告はなされている。しかし,脊椎圧迫骨折患者における食事摂取状況についての報告は少なく,またエネルギー摂取量とリハの帰結に関する報告はない。そこで今回,我々は脊椎圧迫骨折患者における食事摂取状況を調査し,リハの帰結である歩行能力との関連について検討することを本研究の目的とした。
【方法】
対象は2013年7月1日から2014年6月30日までに当院に脊椎圧迫骨折(新鮮例)で入院した65歳以上の患者のうち,受傷前の生活レベルは自立歩行にて生活を行っており,入院中に理学療法を2単位実施した31名(男性9名,女性22名)とした。平均年齢80.6±8.5歳であった。
方法は,設定期間の診療記録を後方視的に調査した。診療記録の中から,年齢,Body Mass Index(以下BMI),骨折のGrade,疼痛(Numerical Rating Scale),リハ開始までの日数,臥床日数,歩行開始日数,歩行開始時のFunctional Ambulation Category(以下FAC),FAC3(見守りレベル)に至るまでの日数,退院時のFAC,入院日数,7日間の食事充足率の12項目について検討した。栄養管理の優劣と歩行機能の関連について判別する為に,管理栄養士によって7日間のエネルギー摂取率(エネルギー摂取量/エネルギー消費量)の評価を行った。1.0以上を充足群,1.0未満を不足群とし,2群に分類した中で比較検討を実施した。エネルギー消費量は,ハリスベネディクトの式より算出された基礎エネルギー消費量×1.2(活動係数)とした。統計学的手法は,両群における11項目の差について比較検討するためにKruskalwallisの検定を行った。また,栄養との運動機能の関連性を把握する為に7日間のエネルギー摂取率を独立変数,他項目を従属変数とした相関分析を実施した。いずれも有意確立を5%未満とした。統計ソフトはPASW statistics18を用いた。
【結果】
充足群は8名,不足群は23名であり,74%にエネルギー摂取率の低下を認めた。エネルギー摂取率は,充足群1.12±0.08,不足群0.66±0.25であった。12項目における両群の差については,歩行開始時FAC,退院時FACの2項目で充足群が不足群に対して有意に高値を示し(p<0.05),他の項目では差を認めなかった。エネルギー摂取率7日間を従属変数とした相関分析の結果は,歩行開始時FAC,退院時FACの2項目に相関を認めた(r≧0.4,p<0.05)
【考察】
結果より,充足群は不足群と比較して歩行開始時FAC,退院時FACは有意に高値を示した。また,対象全体に対して74%にエネルギー摂取率の低下を認めた。脊椎圧迫骨折受傷後の高齢者では入院後に食事摂取量が低下することが多く,それが歩行能力に影響を及ぼす可能性があることが示唆された。
脊椎圧迫骨折受傷後は,後療法に基づいて管理を行うため,臥床日数やリハ開始までの日数,入院日数などの時間的経過に関しては差を生じにくい。今回の結果では,FACが充足群で高かったことから,リハの実施と十分なエネルギー摂取により,歩行を開始する際の残存機能レベルとしては高い状態を維持できているものと考えられた。安静臥床の状態でエネルギー摂取が不足すると筋蛋白異化により筋萎縮が助長されるとの報告がある。この事から充足群では,十分なエネルギー摂取により筋蛋白異化を補うだけの供給があり運動機能が発揮できていたものと考えられた。この結果から,エネルギー摂取率と歩行能力を代表とする運動機能との関係性は明確であるものと考えている。今回は,後方視的に検討を行ったが,エネルギー摂取率と運動機能の関連について調査するために,エネルギー摂取量低下による体重,筋量などの身体組成や,筋力の変化と歩行能力との関連などについても検討していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
脊椎圧迫骨折を受傷した高齢者では,入院後のエネルギー摂取量低下が歩行能力に影響を及ぼす可能性があるため,早期から食事摂取量の確認や栄養評価を行い,栄養サポートを併用したリハを実施することが重要である。
脊椎圧迫骨折では,受傷後に保存療法として安静臥床を強いられることが少なくない。そのような場合,臥床状態での食事摂取を余儀なくされるが故に食べにくさや疼痛などにより食欲が低下を訴える患者を多く見受ける。エネルギー摂取量の低下により低栄養に陥ると,リハビリテーション(以下,リハ)の帰結に影響を与える可能性がある。高齢の入院患者や大腿骨近位部骨折患者に関しては,入院後に食事摂取量が低下し,低栄養を認めることにより予後に影響を及ぼすとの報告はなされている。しかし,脊椎圧迫骨折患者における食事摂取状況についての報告は少なく,またエネルギー摂取量とリハの帰結に関する報告はない。そこで今回,我々は脊椎圧迫骨折患者における食事摂取状況を調査し,リハの帰結である歩行能力との関連について検討することを本研究の目的とした。
【方法】
対象は2013年7月1日から2014年6月30日までに当院に脊椎圧迫骨折(新鮮例)で入院した65歳以上の患者のうち,受傷前の生活レベルは自立歩行にて生活を行っており,入院中に理学療法を2単位実施した31名(男性9名,女性22名)とした。平均年齢80.6±8.5歳であった。
方法は,設定期間の診療記録を後方視的に調査した。診療記録の中から,年齢,Body Mass Index(以下BMI),骨折のGrade,疼痛(Numerical Rating Scale),リハ開始までの日数,臥床日数,歩行開始日数,歩行開始時のFunctional Ambulation Category(以下FAC),FAC3(見守りレベル)に至るまでの日数,退院時のFAC,入院日数,7日間の食事充足率の12項目について検討した。栄養管理の優劣と歩行機能の関連について判別する為に,管理栄養士によって7日間のエネルギー摂取率(エネルギー摂取量/エネルギー消費量)の評価を行った。1.0以上を充足群,1.0未満を不足群とし,2群に分類した中で比較検討を実施した。エネルギー消費量は,ハリスベネディクトの式より算出された基礎エネルギー消費量×1.2(活動係数)とした。統計学的手法は,両群における11項目の差について比較検討するためにKruskalwallisの検定を行った。また,栄養との運動機能の関連性を把握する為に7日間のエネルギー摂取率を独立変数,他項目を従属変数とした相関分析を実施した。いずれも有意確立を5%未満とした。統計ソフトはPASW statistics18を用いた。
【結果】
充足群は8名,不足群は23名であり,74%にエネルギー摂取率の低下を認めた。エネルギー摂取率は,充足群1.12±0.08,不足群0.66±0.25であった。12項目における両群の差については,歩行開始時FAC,退院時FACの2項目で充足群が不足群に対して有意に高値を示し(p<0.05),他の項目では差を認めなかった。エネルギー摂取率7日間を従属変数とした相関分析の結果は,歩行開始時FAC,退院時FACの2項目に相関を認めた(r≧0.4,p<0.05)
【考察】
結果より,充足群は不足群と比較して歩行開始時FAC,退院時FACは有意に高値を示した。また,対象全体に対して74%にエネルギー摂取率の低下を認めた。脊椎圧迫骨折受傷後の高齢者では入院後に食事摂取量が低下することが多く,それが歩行能力に影響を及ぼす可能性があることが示唆された。
脊椎圧迫骨折受傷後は,後療法に基づいて管理を行うため,臥床日数やリハ開始までの日数,入院日数などの時間的経過に関しては差を生じにくい。今回の結果では,FACが充足群で高かったことから,リハの実施と十分なエネルギー摂取により,歩行を開始する際の残存機能レベルとしては高い状態を維持できているものと考えられた。安静臥床の状態でエネルギー摂取が不足すると筋蛋白異化により筋萎縮が助長されるとの報告がある。この事から充足群では,十分なエネルギー摂取により筋蛋白異化を補うだけの供給があり運動機能が発揮できていたものと考えられた。この結果から,エネルギー摂取率と歩行能力を代表とする運動機能との関係性は明確であるものと考えている。今回は,後方視的に検討を行ったが,エネルギー摂取率と運動機能の関連について調査するために,エネルギー摂取量低下による体重,筋量などの身体組成や,筋力の変化と歩行能力との関連などについても検討していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
脊椎圧迫骨折を受傷した高齢者では,入院後のエネルギー摂取量低下が歩行能力に影響を及ぼす可能性があるため,早期から食事摂取量の確認や栄養評価を行い,栄養サポートを併用したリハを実施することが重要である。