[P3-B-1025] 脳血管損傷後患者の深部静脈血栓症発症例の特徴
キーワード:脳血管損傷, 深部静脈血栓症, 危険因子
【はじめに,目的】
急性期脳血管損傷後患者の合併症のなかで,深部静脈血栓症(以下,DVT)は肺塞栓へと併発する重篤な合併症である。当院では,DVT・肺塞栓症の予防目的にて,肺塞栓予防委員会を発足し様々なアプローチを行ってきた。リハビリテーション科での予防方法としては,早期からの関節可動域運動や離床の獲得,または,臥床期間中の弾性ストッキング着用の有無の検討,間歇的空気圧迫装置実施の検討や実施であった。このような予防法の実施後は重篤な肺梗塞発症例はないが,DVTを発症しその後,下大静脈フィルター留置術を行う症例も存在するのが現状であった。本研究では,脳血管損傷後に当院にて入院加療中にDVTを発症した症例の特徴を明らかにし,DVT発生の危険因子・予防方法について考察した。
【方法】
平成23年3月から平成26年3月の期間,脳血管損傷後患者で当院にてリハビリテーションを実施したうち,静脈エコーにて下肢静脈にDVTが確認され下大静脈フィルター留置術を行った18例を対象とした。年齢・性別,疾患,意識障害レベル,modified Rankin Scale(以下,mRS),下肢Brunnstrom stage(以下,Br-s),DVT発症の下肢側,下肢の腫脹などの症状,合併症・既往歴についてカルテより後ろ向き調査を行った。
【結果】
年齢78.9(±8.7)歳,男女比は1:5であった。疾患は脳内出血7例,くも膜下出血4例,脳梗塞4例,外傷性疾患3例であり,出血性疾患と梗塞性疾患の比は7:2であった。意識障害はGlasgow Coma Scale(以下,GCS)にて8.1(±3.7)であった。mRSは5が12例,4が5例,2が1例であった。Br-sはstageIが6例,stageIIが8例,stageIVが2例,stageV・VIが各1例であった。DVT発症の下肢側は両側が4例,麻痺側が11例,非麻痺側3例で,麻痺側と非麻痺側の比は5:1であった。下肢の腫脹症状は9例で認め,他は呼吸苦症状が1例であり,無症候例が8例であった。既往歴として,悪性新生物(胃がん・脳腫瘍)が2例,骨折が2例,肺動脈血栓症が1例であった。
【考察】
脳卒中治療ガイドラインでも,抗凝固剤等の使用が制限される脳出血症例で麻痺を伴う場合は,DVTおよび肺梗塞の合併が生じやすいと言われている。今回も同様に出血性疾患の症例が多い結果となった。一方,梗塞性疾患の4症例は,全てにおいてmRS4,5であり,かつ下肢Br-sI,IIであった。これらの症例は,下肢の随意性低下や活動性低下などの影響が考えられた。また,下肢の運動麻痺は,DVTの発症の強い危険因子でもあり,今回も麻痺側の発生が多い結果となったが,非麻痺側にも3症例の発症を認めた。これらの症例全てにおいては,mRS5の臥床状態に加え,GCSも6以下の重度の意識障害症例であった。重度の意識障害および臥床状態の症例においては,非麻痺側の自動運動の低下の影響が考えられた。下肢Br-sVIでmRS 2,かつ無症候の症例での発症も1症例認められたが,合併症に悪性新生物を有していた。運動機能の低下が軽症であっても,離床開始時などリスク症例とする必要があると考えられた。理学療法として,様々なDVTの危険因子を加味し総合的に評価を行い対応することが必要である。DVTの予防は基本であり,特に早期の離床や歩行動作の獲得,下肢を中心とした自主的な自動運動の指導・実施は重要である。また早期離床が困難な症例に対しても,ポジショニングによる下肢の挙上や弾性ストッキング着用,または間歇的空気圧迫装置などによる下肢静脈うっ滞の減少を積極的に行う必要ある。
【理学療法学研究としての意義】
急性期脳血管損傷後患者に対する重篤な合併症の予防とリスクに役立つ。
急性期脳血管損傷後患者の合併症のなかで,深部静脈血栓症(以下,DVT)は肺塞栓へと併発する重篤な合併症である。当院では,DVT・肺塞栓症の予防目的にて,肺塞栓予防委員会を発足し様々なアプローチを行ってきた。リハビリテーション科での予防方法としては,早期からの関節可動域運動や離床の獲得,または,臥床期間中の弾性ストッキング着用の有無の検討,間歇的空気圧迫装置実施の検討や実施であった。このような予防法の実施後は重篤な肺梗塞発症例はないが,DVTを発症しその後,下大静脈フィルター留置術を行う症例も存在するのが現状であった。本研究では,脳血管損傷後に当院にて入院加療中にDVTを発症した症例の特徴を明らかにし,DVT発生の危険因子・予防方法について考察した。
【方法】
平成23年3月から平成26年3月の期間,脳血管損傷後患者で当院にてリハビリテーションを実施したうち,静脈エコーにて下肢静脈にDVTが確認され下大静脈フィルター留置術を行った18例を対象とした。年齢・性別,疾患,意識障害レベル,modified Rankin Scale(以下,mRS),下肢Brunnstrom stage(以下,Br-s),DVT発症の下肢側,下肢の腫脹などの症状,合併症・既往歴についてカルテより後ろ向き調査を行った。
【結果】
年齢78.9(±8.7)歳,男女比は1:5であった。疾患は脳内出血7例,くも膜下出血4例,脳梗塞4例,外傷性疾患3例であり,出血性疾患と梗塞性疾患の比は7:2であった。意識障害はGlasgow Coma Scale(以下,GCS)にて8.1(±3.7)であった。mRSは5が12例,4が5例,2が1例であった。Br-sはstageIが6例,stageIIが8例,stageIVが2例,stageV・VIが各1例であった。DVT発症の下肢側は両側が4例,麻痺側が11例,非麻痺側3例で,麻痺側と非麻痺側の比は5:1であった。下肢の腫脹症状は9例で認め,他は呼吸苦症状が1例であり,無症候例が8例であった。既往歴として,悪性新生物(胃がん・脳腫瘍)が2例,骨折が2例,肺動脈血栓症が1例であった。
【考察】
脳卒中治療ガイドラインでも,抗凝固剤等の使用が制限される脳出血症例で麻痺を伴う場合は,DVTおよび肺梗塞の合併が生じやすいと言われている。今回も同様に出血性疾患の症例が多い結果となった。一方,梗塞性疾患の4症例は,全てにおいてmRS4,5であり,かつ下肢Br-sI,IIであった。これらの症例は,下肢の随意性低下や活動性低下などの影響が考えられた。また,下肢の運動麻痺は,DVTの発症の強い危険因子でもあり,今回も麻痺側の発生が多い結果となったが,非麻痺側にも3症例の発症を認めた。これらの症例全てにおいては,mRS5の臥床状態に加え,GCSも6以下の重度の意識障害症例であった。重度の意識障害および臥床状態の症例においては,非麻痺側の自動運動の低下の影響が考えられた。下肢Br-sVIでmRS 2,かつ無症候の症例での発症も1症例認められたが,合併症に悪性新生物を有していた。運動機能の低下が軽症であっても,離床開始時などリスク症例とする必要があると考えられた。理学療法として,様々なDVTの危険因子を加味し総合的に評価を行い対応することが必要である。DVTの予防は基本であり,特に早期の離床や歩行動作の獲得,下肢を中心とした自主的な自動運動の指導・実施は重要である。また早期離床が困難な症例に対しても,ポジショニングによる下肢の挙上や弾性ストッキング着用,または間歇的空気圧迫装置などによる下肢静脈うっ滞の減少を積極的に行う必要ある。
【理学療法学研究としての意義】
急性期脳血管損傷後患者に対する重篤な合併症の予防とリスクに役立つ。