[P3-B-1050] 脳卒中急性期においてリスク管理が重要な病態の臨床経過とリハビリテーション
キーワード:リスク管理, BAD, 出血性梗塞
【はじめに】
近年,脳卒中急性期においてリスク管理下で積極的なリハビリテーションを行うことが推奨されている。しかし,脳卒中急性期に不安定な病態を呈する症例に関して,リハビリテーションの視点から報告されたものは少ない。今回,脳梗塞急性期において進行性増悪を呈する分枝粥腫型梗塞(Branch atheromatous disease:以下BAD)と梗塞後の再開通を機に血管性浮腫の増悪や梗塞により脆くなった血管壁から出血を起こす出血性梗塞に関してラクナ梗塞と対比し,その臨床経過とリハビリテーションについて後方視的に検討を行った。
【対象と方法】
対象は当院に入院した脳梗塞患者の内BADを呈した94名(平均年齢72.6±10.0歳,男性46名,女性48名),出血性梗塞54名(平均年齢74.8±10.2歳,男性28名,女性26名),ラクナ梗塞69名(平均年齢69.4±12.6歳,男性33名,女性36名)とした。
方法は,入院時の記録よりBAD,出血性梗塞,ラクナ梗塞の3群における発症当初のFunctional. Independence. Measure:以下FIM,終了時FIM,FIM利得,FIM効率,在院日数の違いについて調査を行った。統計処理は,統計解析ソフトJSTATを用いて一元配置分散分析を行い多重比較検定(Bonferroni)を実施した。
【結果】
発症当初のFIMは,BAD76.3±25.3,出血性梗塞65.7±30.7,ラクナ梗塞98.7±14.8であった。一元配置分散分析の結果,3群間に主効果が認められた。BADとラクナ梗塞には有意な差が認められた(p<0.01)。BADと出血性梗塞には有意な差が認められた(p<0.05)。出血性梗塞とラクナ梗塞では有意な差が認められた(p<0.01)。終了時FIMは,BAD97.3±31.1,出血性梗塞84.4±37.9,ラクナ梗塞117.3±11.2であった。一元配置分散分析の結果,3群間に主効果が認められた。BADとラクナ梗塞には有意な差が認められた(p<0.01)。BADと出血性梗塞には有意な差が認められた(p<0.05)。出血性梗塞とラクナ梗塞では有意な差が認められた(p<0.01)。FIM利得は,BAD20.8±18.6,出血性梗塞20.2±17.9,ラクナ梗塞21.6±28.1であった。3群間における有意差は認められなかった。FIM効率は,BAD1.20±3.23,出血性梗塞1.11±1.13,ラクナ梗塞1.62±2.03であった。3群間における有意差は認められなかった。在院日数は,BAD42.5±31.2日,出血性梗塞39.0±32.8日,ラクナ梗塞18.7±12.5日であった。一元配置分散分析の結果,3群間に主効果が認められた。BADとラクナ梗塞では有意な差が認められた(p<0.01)。出血性梗塞とラクナ梗塞では有意な差が認められた(p<0.01)。BADと出血性梗塞では有意な差は認められなかった。
【考察】
潮見は,リスクを回避することが理学療法介入の成否を決定する重要な要因であると述べている。本研究は,急性期に不安定な病態を呈しリスク管理が重要な疾患における臨床経過とリハビリテーションについて検討を行った。
BADと出血性梗塞の発症時/最終FIMと在院日数は,ラクナ梗塞と比べ有意に差が認められた。一方,FIM利得とFIM効率に関しては有意な差は認められなかった。これは,発症後にレベルダウンを呈しても医学的な管理と並行してモニタリングや急変時の対応に留意しながら早期から理学療法を介入することで症状の増悪後においても改善する可能性を示唆していると考えられる。
脳卒中治療ガイドラインにおいて「廃用症候群を予防し早期の日常生活動作能力の向上と社会復帰を図るために,十分なリスク管理のもとにできるだけ発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められる(グレードA)」が推奨されており。発症後に不安定な病態を呈する症例においてもバイタルサインの変動や神経学的所見等の確認を密に行い発症早期から積極的な介入を行うことが望まれる。
今後は,症状の増悪に関連する因子や予後予測に影響を与える因子について検討していくことが課題である。
【理学療法学研究としての意義】
発症後に進行性増悪を呈する症例などの臨床経過を検討することは,早期から積極的な理学療法を行っていく上で,個々の病態に応じたリスク管理を行っていく必要性を示唆する点で意義があると考えられる。
近年,脳卒中急性期においてリスク管理下で積極的なリハビリテーションを行うことが推奨されている。しかし,脳卒中急性期に不安定な病態を呈する症例に関して,リハビリテーションの視点から報告されたものは少ない。今回,脳梗塞急性期において進行性増悪を呈する分枝粥腫型梗塞(Branch atheromatous disease:以下BAD)と梗塞後の再開通を機に血管性浮腫の増悪や梗塞により脆くなった血管壁から出血を起こす出血性梗塞に関してラクナ梗塞と対比し,その臨床経過とリハビリテーションについて後方視的に検討を行った。
【対象と方法】
対象は当院に入院した脳梗塞患者の内BADを呈した94名(平均年齢72.6±10.0歳,男性46名,女性48名),出血性梗塞54名(平均年齢74.8±10.2歳,男性28名,女性26名),ラクナ梗塞69名(平均年齢69.4±12.6歳,男性33名,女性36名)とした。
方法は,入院時の記録よりBAD,出血性梗塞,ラクナ梗塞の3群における発症当初のFunctional. Independence. Measure:以下FIM,終了時FIM,FIM利得,FIM効率,在院日数の違いについて調査を行った。統計処理は,統計解析ソフトJSTATを用いて一元配置分散分析を行い多重比較検定(Bonferroni)を実施した。
【結果】
発症当初のFIMは,BAD76.3±25.3,出血性梗塞65.7±30.7,ラクナ梗塞98.7±14.8であった。一元配置分散分析の結果,3群間に主効果が認められた。BADとラクナ梗塞には有意な差が認められた(p<0.01)。BADと出血性梗塞には有意な差が認められた(p<0.05)。出血性梗塞とラクナ梗塞では有意な差が認められた(p<0.01)。終了時FIMは,BAD97.3±31.1,出血性梗塞84.4±37.9,ラクナ梗塞117.3±11.2であった。一元配置分散分析の結果,3群間に主効果が認められた。BADとラクナ梗塞には有意な差が認められた(p<0.01)。BADと出血性梗塞には有意な差が認められた(p<0.05)。出血性梗塞とラクナ梗塞では有意な差が認められた(p<0.01)。FIM利得は,BAD20.8±18.6,出血性梗塞20.2±17.9,ラクナ梗塞21.6±28.1であった。3群間における有意差は認められなかった。FIM効率は,BAD1.20±3.23,出血性梗塞1.11±1.13,ラクナ梗塞1.62±2.03であった。3群間における有意差は認められなかった。在院日数は,BAD42.5±31.2日,出血性梗塞39.0±32.8日,ラクナ梗塞18.7±12.5日であった。一元配置分散分析の結果,3群間に主効果が認められた。BADとラクナ梗塞では有意な差が認められた(p<0.01)。出血性梗塞とラクナ梗塞では有意な差が認められた(p<0.01)。BADと出血性梗塞では有意な差は認められなかった。
【考察】
潮見は,リスクを回避することが理学療法介入の成否を決定する重要な要因であると述べている。本研究は,急性期に不安定な病態を呈しリスク管理が重要な疾患における臨床経過とリハビリテーションについて検討を行った。
BADと出血性梗塞の発症時/最終FIMと在院日数は,ラクナ梗塞と比べ有意に差が認められた。一方,FIM利得とFIM効率に関しては有意な差は認められなかった。これは,発症後にレベルダウンを呈しても医学的な管理と並行してモニタリングや急変時の対応に留意しながら早期から理学療法を介入することで症状の増悪後においても改善する可能性を示唆していると考えられる。
脳卒中治療ガイドラインにおいて「廃用症候群を予防し早期の日常生活動作能力の向上と社会復帰を図るために,十分なリスク管理のもとにできるだけ発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められる(グレードA)」が推奨されており。発症後に不安定な病態を呈する症例においてもバイタルサインの変動や神経学的所見等の確認を密に行い発症早期から積極的な介入を行うことが望まれる。
今後は,症状の増悪に関連する因子や予後予測に影響を与える因子について検討していくことが課題である。
【理学療法学研究としての意義】
発症後に進行性増悪を呈する症例などの臨床経過を検討することは,早期から積極的な理学療法を行っていく上で,個々の病態に応じたリスク管理を行っていく必要性を示唆する点で意義があると考えられる。