[P3-B-1063] 脳卒中患者の退院時歩行自立のための入棟時SIASカットオフ値の算出
―回復期リハビリテーション病棟患者を対象として―
Keywords:脳卒中, 歩行自立度, 回復期
【はじめに,目的】
脳卒中治療ガイドライン2009では,脳卒中のリハビリテーションにおいて患者の機能的予後等を予測すること,またStroke Impairment Assessment Set(以下,SIAS)は総合評価尺度として用いることが勧められている。回復期リハビリテーション(以下,回リハ)病棟において理学療法士は,患者の機能・能力的予後,特に退院時歩行能力を予測し,退院へ向けて早期からのマネジメントが要求される。そこで,SIASを用いてカットオフ値を算出し,回リハ病棟へ入棟された患者様の歩行自立度の予測に活用することを目的とする。
【方法】
対象は,2012年8月から2014年10月まで当院回リハ病棟に入院されていた脳卒中患者(くも膜下出血を除く)79名(年齢:77.1±10.1歳,男性42名,女性37名,脳出血15名,脳梗塞64名)。除外項目は,病前の歩行能力が自立及び修正自立でない者,発症から2週間以内に退院した者,SIASが評価不能だった者とした。評価はSIASを用い,SIAS総点,SIAS-L/E(運動機能-下肢),SIAS-Trunk(体幹機能),SIAS-S(感覚機能)の項目に分類し,回リハ病棟入棟後1週間以内に評価した。歩行自立度は退院時歩行能力が完全自立もしくは補装具を用いた修正自立者を「自立群」,その他の見守りや身体的介助を要する者を「非自立群」として分類した。統計は,有意差の判定のためSIAS各項目の自立・非自立各群に対してWilcoxon符号付順位和検定を実施した後,歩行自立度とSIAS各項目のカットオフ値の算定を,Receiver Operating Characteristic曲線(以下ROC曲線)にて実施した。統計ソフトは,EZR(Saitama Medical Center,Jichi Medical University)を使用した。
【結果】
SIAS各項目の自立・非自立各群の間に有意差を認めた(P<0.01)。さらにROC曲線によるSIASカットオフ値を算出した結果,Area Under the Curve(以下AUC)はそれぞれ,入棟時SIAS総点で0.82,SIAS-L/Eで0.77,SIAS-Trunkで0.75,SIAS-Sで0.83となった。算出されたカットオフ値は,SIAS総点で59点(感度0.833,特異度0.744),SIAS-L/Eで9点(感度0.917,特異度0.558),SIAS-Trunkで3点(感度0.972,特異度0.512),SIAS-Sで9点(感度0.722,特異度0.767)となった。
【考察】
結果より,回リハ病棟退院時の歩行自立・非自立を予測するためのカットオフ値は,初期評価時のSIAS総点で59点,SIAS-L/Eで9点,SIAS-Trunkで3点,SIAS-Sで9点であることが示唆された。SIAS総点やSIAS-Sで運動機能項目より高いAUCを得たことは,歩行能力には機能回復により変動する運動機能よりも,感覚機能やその他の諸因子が残存しているか否かに依拠していると考えられ,歩行予後を推察する際にはSIASのような多面的評価を用いて要因を検討していく必要性があると考えられる。今後は高次脳機能障害や嚥下障害なども考慮し,予測精度の向上に努めたい。
【理学療法学研究としての意義】
回復期脳卒中患者様の歩行予後予測の一助として,ゴール設定,自宅復帰の可否予測などの判断材料として活用し,早期から退院時の患者様の移動様式を予測した包括的なアプローチを実施することに寄与するものと考えられる。
脳卒中治療ガイドライン2009では,脳卒中のリハビリテーションにおいて患者の機能的予後等を予測すること,またStroke Impairment Assessment Set(以下,SIAS)は総合評価尺度として用いることが勧められている。回復期リハビリテーション(以下,回リハ)病棟において理学療法士は,患者の機能・能力的予後,特に退院時歩行能力を予測し,退院へ向けて早期からのマネジメントが要求される。そこで,SIASを用いてカットオフ値を算出し,回リハ病棟へ入棟された患者様の歩行自立度の予測に活用することを目的とする。
【方法】
対象は,2012年8月から2014年10月まで当院回リハ病棟に入院されていた脳卒中患者(くも膜下出血を除く)79名(年齢:77.1±10.1歳,男性42名,女性37名,脳出血15名,脳梗塞64名)。除外項目は,病前の歩行能力が自立及び修正自立でない者,発症から2週間以内に退院した者,SIASが評価不能だった者とした。評価はSIASを用い,SIAS総点,SIAS-L/E(運動機能-下肢),SIAS-Trunk(体幹機能),SIAS-S(感覚機能)の項目に分類し,回リハ病棟入棟後1週間以内に評価した。歩行自立度は退院時歩行能力が完全自立もしくは補装具を用いた修正自立者を「自立群」,その他の見守りや身体的介助を要する者を「非自立群」として分類した。統計は,有意差の判定のためSIAS各項目の自立・非自立各群に対してWilcoxon符号付順位和検定を実施した後,歩行自立度とSIAS各項目のカットオフ値の算定を,Receiver Operating Characteristic曲線(以下ROC曲線)にて実施した。統計ソフトは,EZR(Saitama Medical Center,Jichi Medical University)を使用した。
【結果】
SIAS各項目の自立・非自立各群の間に有意差を認めた(P<0.01)。さらにROC曲線によるSIASカットオフ値を算出した結果,Area Under the Curve(以下AUC)はそれぞれ,入棟時SIAS総点で0.82,SIAS-L/Eで0.77,SIAS-Trunkで0.75,SIAS-Sで0.83となった。算出されたカットオフ値は,SIAS総点で59点(感度0.833,特異度0.744),SIAS-L/Eで9点(感度0.917,特異度0.558),SIAS-Trunkで3点(感度0.972,特異度0.512),SIAS-Sで9点(感度0.722,特異度0.767)となった。
【考察】
結果より,回リハ病棟退院時の歩行自立・非自立を予測するためのカットオフ値は,初期評価時のSIAS総点で59点,SIAS-L/Eで9点,SIAS-Trunkで3点,SIAS-Sで9点であることが示唆された。SIAS総点やSIAS-Sで運動機能項目より高いAUCを得たことは,歩行能力には機能回復により変動する運動機能よりも,感覚機能やその他の諸因子が残存しているか否かに依拠していると考えられ,歩行予後を推察する際にはSIASのような多面的評価を用いて要因を検討していく必要性があると考えられる。今後は高次脳機能障害や嚥下障害なども考慮し,予測精度の向上に努めたい。
【理学療法学研究としての意義】
回復期脳卒中患者様の歩行予後予測の一助として,ゴール設定,自宅復帰の可否予測などの判断材料として活用し,早期から退院時の患者様の移動様式を予測した包括的なアプローチを実施することに寄与するものと考えられる。