[P3-B-1065] 地域在住高齢者の活動習慣や食品摂食習慣と認知機能との関連性
Keywords:認知機能, 活動習慣, 食習慣
【はじめに,目的】
加齢に伴う認知機能の低下は,高齢者の生活の質を低下させる重大な要因であるだけでなく,介護負担の増加や医療費の増大を招くなどの社会的な問題となっている。認知機能低下の要因には運動をはじめとした活動習慣や食品摂取に関わる食習慣が関与していることが報告されている。運動習慣としては,有酸素運動が認知機能低下に効果的であるとされている。また,栄養については,抗酸化作用のあるβ-カロチンやポリフェノールを含む食品摂取やドコサヘキサエン酸など含む魚介類の摂取が認知機能低下予防に効果があると考えられている。しかしながら,具体的にどのような活動習慣や食品摂取習慣が認知機能と関連しているかは十分に明らかにされていない。そこで本研究では,65歳以上の地域在住高齢者に対して,活動習慣や食品摂取習慣と認知機能との関連性を明らかにすることとした。
【方法】
対象者は65歳以上の地域在住高齢者263名(男性91名,女性172名,平均年齢:70.0±3.7歳)とした。対象者の基本情報,活動習慣および食品摂取習慣については質問紙にて聴取した。なお対象者の除外基準については,Mini mental State Examination(以下,MMSE)の得点が24点未満の者とした。活動習慣は,運動行動変容ステージの質問を用いた運動習慣ステージ,外出頻度について聴取した。食品摂取習慣は,食品摂取多様性スコアを用い,魚介類,肉類,卵,牛乳,乳製品,大豆製品,緑黄色野菜,海藻,いも類,果物,油脂類の一週間当たりの摂取頻度について4段階(1.ほとんど毎日 2.二日に一回 3.一週間に一,二回 4.ほとんど食べない)で評価した。認知機能については,タブレット型PC上でNational Center for Geriatrics and Gerontology functional assessment tool(NCGG-FAT)を用い,MMSE,単語と物語記憶の遅延再生,Trail Making Test AおよびB(以下TMT-A,TMT-B)を実施した。統計解析には,活動習慣の質問紙項目と食品摂取習慣の質問紙項目についてそれぞれの認知機能との関連性をSpearmanの相関分析によって検討した。また認知機能の得点を従属変数として,相関関係が認められた活動習慣,食品摂取習慣を独立変数とした重回帰分析をステップワイズ法にて実施した。
【結果】
Spearmanの相関分析の結果,MMSEと乳製品の摂取頻度(ρ=-0.149,p=0.016),大豆製品の摂取頻度(ρ=-0.141,p=0.022),緑黄色野菜の摂取頻度(ρ=-0.140,p=0.024)に有意な相関関係が認められた。またTMT-Aと年齢(ρ=0.257,p<0.005)に有意な相関が認められた。さらにTMT-Bでは肉類の摂取頻度(ρ=-0.122,p=0.047)と年齢(ρ=0.317,p<0.005)に有意な相関が認められた。しかしながら認知機能の項目については有意な相関は認められなかった。重回帰分析の結果,MMSEでは,乳製品の摂取頻度(β=-0.148,p=0.016)が有意な変数として抽出された。またTMT-Aについては年齢(β=0.218,p<0.005)が有意な変数として抽出され,TMT-Bに関しても年齢(β=0.178,p<0.005)が有意な変数として抽出された。
【考察】
相関分析の結果より,乳製品や大豆などといった食品摂取の頻度が認知機能に関連を示した。しかし重回帰分析の結果では,抽出された項目は乳製品の摂取頻度のみで,先行研究で認知機能予防として効果的であると報告されている魚介類や緑黄色野菜の摂取が抽出されなかった。このことから,食品の摂取習慣だけが直接的に認知機能と関連しない可能性が示唆される。また乳製品の摂取頻度は,先行研究では関係性が認められていない項目であり今後その効果についてさらに検討する必要があると考える。またTMT-A及びTMT-Bの重回帰分析では年齢が有意な変数して抽出されており,注意や遂行機能といった認知機能に対しては,生活習慣よりも加齢による身体変化などとった影響が大きい可能性が考えられる。さらに今回の研究結果では,運動習慣ステージと外出頻度を活動習慣として用いたが,どの認知機能についても相関が認められなかった。このことから認知機能と活動習慣との関係をさらに詳しく検討するためにも今後は歩数や身体活動量といった量的な指標を用いて検討する必要性があると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究から,活動習慣や食習慣といった生活習慣が直接的に認知機能に与える影響が少ない可能性が考えられる。そのため加齢による身体変化についても認知機能との関連性について合わせて評価する必要性が示され,認知機能が低下している者に対しての評価や介入を考案するための一助となると考えられる。
加齢に伴う認知機能の低下は,高齢者の生活の質を低下させる重大な要因であるだけでなく,介護負担の増加や医療費の増大を招くなどの社会的な問題となっている。認知機能低下の要因には運動をはじめとした活動習慣や食品摂取に関わる食習慣が関与していることが報告されている。運動習慣としては,有酸素運動が認知機能低下に効果的であるとされている。また,栄養については,抗酸化作用のあるβ-カロチンやポリフェノールを含む食品摂取やドコサヘキサエン酸など含む魚介類の摂取が認知機能低下予防に効果があると考えられている。しかしながら,具体的にどのような活動習慣や食品摂取習慣が認知機能と関連しているかは十分に明らかにされていない。そこで本研究では,65歳以上の地域在住高齢者に対して,活動習慣や食品摂取習慣と認知機能との関連性を明らかにすることとした。
【方法】
対象者は65歳以上の地域在住高齢者263名(男性91名,女性172名,平均年齢:70.0±3.7歳)とした。対象者の基本情報,活動習慣および食品摂取習慣については質問紙にて聴取した。なお対象者の除外基準については,Mini mental State Examination(以下,MMSE)の得点が24点未満の者とした。活動習慣は,運動行動変容ステージの質問を用いた運動習慣ステージ,外出頻度について聴取した。食品摂取習慣は,食品摂取多様性スコアを用い,魚介類,肉類,卵,牛乳,乳製品,大豆製品,緑黄色野菜,海藻,いも類,果物,油脂類の一週間当たりの摂取頻度について4段階(1.ほとんど毎日 2.二日に一回 3.一週間に一,二回 4.ほとんど食べない)で評価した。認知機能については,タブレット型PC上でNational Center for Geriatrics and Gerontology functional assessment tool(NCGG-FAT)を用い,MMSE,単語と物語記憶の遅延再生,Trail Making Test AおよびB(以下TMT-A,TMT-B)を実施した。統計解析には,活動習慣の質問紙項目と食品摂取習慣の質問紙項目についてそれぞれの認知機能との関連性をSpearmanの相関分析によって検討した。また認知機能の得点を従属変数として,相関関係が認められた活動習慣,食品摂取習慣を独立変数とした重回帰分析をステップワイズ法にて実施した。
【結果】
Spearmanの相関分析の結果,MMSEと乳製品の摂取頻度(ρ=-0.149,p=0.016),大豆製品の摂取頻度(ρ=-0.141,p=0.022),緑黄色野菜の摂取頻度(ρ=-0.140,p=0.024)に有意な相関関係が認められた。またTMT-Aと年齢(ρ=0.257,p<0.005)に有意な相関が認められた。さらにTMT-Bでは肉類の摂取頻度(ρ=-0.122,p=0.047)と年齢(ρ=0.317,p<0.005)に有意な相関が認められた。しかしながら認知機能の項目については有意な相関は認められなかった。重回帰分析の結果,MMSEでは,乳製品の摂取頻度(β=-0.148,p=0.016)が有意な変数として抽出された。またTMT-Aについては年齢(β=0.218,p<0.005)が有意な変数として抽出され,TMT-Bに関しても年齢(β=0.178,p<0.005)が有意な変数として抽出された。
【考察】
相関分析の結果より,乳製品や大豆などといった食品摂取の頻度が認知機能に関連を示した。しかし重回帰分析の結果では,抽出された項目は乳製品の摂取頻度のみで,先行研究で認知機能予防として効果的であると報告されている魚介類や緑黄色野菜の摂取が抽出されなかった。このことから,食品の摂取習慣だけが直接的に認知機能と関連しない可能性が示唆される。また乳製品の摂取頻度は,先行研究では関係性が認められていない項目であり今後その効果についてさらに検討する必要があると考える。またTMT-A及びTMT-Bの重回帰分析では年齢が有意な変数して抽出されており,注意や遂行機能といった認知機能に対しては,生活習慣よりも加齢による身体変化などとった影響が大きい可能性が考えられる。さらに今回の研究結果では,運動習慣ステージと外出頻度を活動習慣として用いたが,どの認知機能についても相関が認められなかった。このことから認知機能と活動習慣との関係をさらに詳しく検討するためにも今後は歩数や身体活動量といった量的な指標を用いて検討する必要性があると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究から,活動習慣や食習慣といった生活習慣が直接的に認知機能に与える影響が少ない可能性が考えられる。そのため加齢による身体変化についても認知機能との関連性について合わせて評価する必要性が示され,認知機能が低下している者に対しての評価や介入を考案するための一助となると考えられる。